小説2

□死装束ト鬼人ノ門番
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※企画リク ワド主 (グロ、ほのぼの可)





 こんにちわ。ぼくはワドルディ。
 ぼく達はこれから死にます。
 怖い?いえ、そんなことはございませんよ。

 もともとはぼくらが悪いみたいなんです。
 どうやら仲間の誰かが大王様のツボにあたって割ってしまったみたいなんです。ぼくらワドルディにとってはみんな顔が違って見えますが、大王様にはすべて同じに見えるのでしょう。ツボを割ったぼくらの仲間は叱られるのを恐れてワドルディの集団に紛れて隠れているみたいなのです。
 大王様はさぞかし怒っていました。
 でも、叱りようにも全て同じ顔に見える大王様はそれはそれで困っていました。そこで下したのがこちらです。

「もういいぞい!お前たち纏めて処刑ぞい!」

 何百万といるワドルディを処刑することに決めた大王様。ぼくは自然と死の恐れは湧きませんでした。あ、別にぼくがツボを割った犯人というわけではないんですよ。
 ぼく達は今まで大王様に従いました。どんなことも。どんな命令だろうと。
 その習慣が100数年あったせいでしょうか。死という、大王様からの命令、意図にもはや従うことしかできないこの身になってしまったのかもしれません。

「だ、だだだだ大王様!そんなことをしたら城の兵が全ていなくなってしまうでゲスよ!」
「ふん、どうせいてもいなくてもひとつと力にならない出来損ないだぞい。げんに、こいつらよりもっと優秀な兵はいくらでもいるぞい」
「え、あ、でも、しかし…」
「つべこべ言わずに処刑の用意をするぞい!」

 エスカルゴン様はとても悲しい顔をしていました。なぜそんな悲しい表情をしていたのか。ぼくにはわかりません。他のワドルディは分かったヒトもいると思う。でも、その可能性はないと僕は思う。ぼく達は考えることもほとんど同じ。低知能な生き物なのです。

 ぼく達は5つの列に分けられました。ぼくはおそらく2754番目に死にます。なにせ数が多いものですから。このくらいに分けないとダメなのでしょう。後ろにも先が見えないほどワドルディが並んでいました。

「大王様、私は嫌でゲス。こんな物騒なものを使って今まで我々に従ってくれたワドルディをこの手で殺すなんて…」
「私も反対です。それに…何故執行人にカービィも入れているのですか!」
「カービィには極端に飯を食うように言った。ワドルディを殺すなどと教えたら奴は何もしないだろうからな。大量に処分するにはアイツの胃袋で一番処理しやすいぞい」
「ネー、なんでこのボクまでこんな面倒なことに参加しなきゃダメなのサ」
「大量殺人がタダで出来るのだから文句言うでないぞい」

 どうやらぼく達を殺すのはメタナイト様に大王様、エスカルゴン様にカービィとマルクさんみたいです。ぼくは大王様に殺される列のようです。



「ぽよ?」
「カービィ、これから貴様に旨い物をたんと食わしてやろうと思ってな。なに、わしから普段からのお詫びだぞい」

 カービィは目隠しをされているのに何の疑念も持たずただ料理(ぼくら)に気がいってるのか随分喜んでいました。これから血も肉も、カービィの支えとなることに仲間は嫌がることなくすぐに受け入れることだろう。

「おい、おっさん。こいつらはボクが殺していいんだろ?」
「わ、馬鹿!聞かれたらどうしてくれるんだ!処理しなくなるだろうが!」
「お前にバカ呼ばわりされるなんて、実に光栄だよ。クズ。コイツは今頭ん中ご馳走でいっぱいなのサ。話なんて聞かれやしないのサ」  

 カービィ、お口からよだれが出ています。目隠しされたことに余計想像に集中しているのでしょう、話の通りカービィは口を開けたまま微動だにしません。

「確かにそうだが、…どうしたんだ?」
「じゃ、ボクの好きなよーにさせてもらうからね。あ、別に殺さないわけじゃないのサ。ちゃんと虫の音ひとつ立てさせないようにのど元掻っ切ってやるから、安心するのサ」

 マルクさんの所のワドルディたちはちょっと大変なことになるのでしょうか。ぼくも想像したいところですが、その間を与えられることなくついに始まったようです。


「………」

 メタナイト様は剣を構えてはおられますが、何を戸惑っているのでしょう。剣を振り下ろしません。

「おい、メタナイト。最初に手を下す順番はお前が最初ぞい。さっさとやるぞい」
「…でき…ません」

 私の知るメタナイト様はこんなにうじうじしてないのですが…予想以上に酷いありさまでした。いつもの格好のいいメタナイト様はどこにもおらず、ただのへたれた剣士が、そこにたたずんでいたのです。
 大王様はそれを予測していたかのように、後ろに手をやり、カービィに近付きました。

「カービィ、動くな!」
「?」
「なっ…?!」

 大王様はハンマーとは逆の手にナイフを持ち、カービィの頬近くに構えていました。

「殺れ。殺らないと…わしが最初に殺ってしまうぞ?」
「…ぱゆ?」

 持っている刃物を光らせ、カービィの頬にトントンと付けていました。刃物のどこか冷たい温度に体を少し震えわせ少し不安気な表情になりかけてました。メタナイト様は俯き加減でわなわなと震えた後、その場から少し動き、ようやく先頭のワドルディの近くに立ちました。

「っク…ぅ…すまない…皆…」

 何故


 謝ったのでしょう…………?

 剣を振り下ろしてあっけもなくワドルディ00000001は二つに割れて双方ぐらくら揺れて倒れました。
 それを見た00000002のワドルディが震えているのが見えました。

「…ん?」

 そのワドルディは仲間の死を見てやっと恐怖が湧き出てきたのでしょう。そのワドルディはこけそうになりながら逃げ出したのです。

「(〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!)」
「逃げるな!カービィ、もう我慢せんでいい。食え!」
「ぱうやぁ♪」

 カービィは待ってましたと言わんばかりにその口を開けて辺り一面吸い込み始めました。00000023から00005253のワドルディ、全てがそのブラックホールめがけて飛び込んでいきました。カービィは一飲みしたのに満足したのかそこに座り込んで満足していました。あの逃亡に失敗したワドルディも、カービィが今先程吐き出した骨となり、カービィの活動の力となったでしょう。立派です。

「へ、よく食らうのサ。さて、どうやって殺そうかなぁ…?」

 マルクさんは帽子の中から何かを取り出し、空を飛びだしワドルディの上から降りかけました。胡椒のような粉末を辺り一面に。

「(…?)」
「(???)」

 暫くはそこに立ち尽くしていましたが、次第に異変が見られました。

「(…?!)」

 粉末をかけられたワドルディは顔色を悪くしていきバタバタと夏の終わりごろに見る蝉のような暴れ方をし始めました。

「(〜〜〜〜〜!!!!!!〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!)」

 辺りはセミの死体だらけでした。もの凄く高速に動いたかと思うと次第にぴくぴくと痙攣し、そのうち息をしなくなりました。ぼく達は口がありませんから。血は代わりに目から出ます。
 ぼくらは目から血が出るのって結構痛いらしいんです。涙を出すのは別に何ともないのに、不思議ですよね。
 目玉がくりぬかれるような…そんな痛みがどこからともなくきて、窒息したような感覚に襲われバタバタとその場をのた打ち回り、次第に体中麻痺して死ぬ。

 恐いですね。

「ヒャアアアアアアアあっはっハハハハハ!!!!!!!!!!苦しめ苦しめェ!ギャヘェあっハハハハハははははははは!!!!!!」
「一体…何を振りかけたんだぞい?」
「いや、…別に?何もしちゃいねぇよ?キッククク………」

 とても楽しそうで何よりです。

 エスカルゴン様は目を瞑ったままそこにいるワドルディをどんどん剣で切り殺していました。なんだかんだ言って、忠実なんですね。ですが、なぜ泣きながら切っているのでしょうか…。

「ふっ・・・ぅう・・・ごめんなさい・・・ごめんさ・・・ごめんなさい・・・ごめんなしゃ・・・ごべんなざ・・・ごめんなざ・・・・ごぇんなさ・・・ごめんなさ・・・」



 時がたつのは早いものです。ついに、ぼくの番がやってきました。

「(…大王様…)」

 ぼくは呼びかけました。大王様はぼくに見られていることに気付いたのか、何か言い残しでもあるのか?と言いました。

「(大王様は、ぼく達の事、好きでいてくれましたか?)」
「(道具としてみてましたか?)」

 大王様は何も言いませんでした。

 贅沢なぼく。初めて面と向かって話したのがこんな質問だなんて、笑えませんか?ぼくは少し周りを見た。
 マルクさんはワドルディの目玉をえぐって遊んでいるのが見えました。ぼく達は叫べません。普通に心で叫べても、口で叫ぶことはできません。
 エスカルゴン様は相変わらず涙を流し、謝りながら剣を振り回していました。どうしてずっと泣いてるのでしょうか。それはいまだにわかりません。
 カービィは先程マルクさんに命ぜられフォークとナイフで僕らを食していました。真上からフォークを刺され、脳汁がそこから吹きだして。それを美味しそうに食べていました。ナイフの使い方もご立派でした。ぼくらのお腹を引き裂き、ハンバーグのように切り分けて内臓と血が肉汁みたく溢れ出し、オイシそうにバクリと口に入れました。ぼく達は普段お肉を食べないので多分臭みはないはずです。内臓や性器もとってもおいしいみたいですよ。
 メタナイト様は半分以上気を失ったままそこにいるワドルディをっ切っていました。なんだか奇声をあげたり突然泣いたり、笑ったりしました。情緒不安定になっているのでしょうか?足元もなんだか覚束ないようですし。あ、また笑い出しました。

 みなさんの回りには無残な姿をしたワドルディがそこら中いました。数は減ってきてはいるものの、やはりまだまだまだいるみたいです。内臓がはみ出て苦しんだままのワドルディや足を両断されて嘆いている者、共食いまでに道を外している者もいました。

「わしは…」

 ぼくは大王様に向きなおしました。

 大王様はにんまり笑顔でハンマーを持ち、涙ひとつこぼさず、ぼくに言いました。

「何もできないお前らをただのゴミとしか見てなかったぞい?」

 ぼくはハンマーでぶっ潰されました。衝撃で血が360℃飛び散り、内臓も辺りに転がりました。痛い感覚は大王様のおかげで有りませんでした。ありがとうございます。でもどういうわけでしょうか、心がチクチクしちゃいます。痛いんです。心臓はもうないはずですから、心が痛いだけです。

 痛くないんです。
 でも、痛くてしょうがないんです。

 涙が出ません。声が出ません。

 ぼくが助けを求めようとした瞬間、ぺちゃんこになったぼくの体を足でけってそこからどけられました。









それでも僕は貴方の忠実な下僕です




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