ボクはマホロア。マルクのトモダチさ。 ボクらは仲がとってもいい。と、思うヨ。 ムカシから住む星は遠くても殆ど毎日遊んでたし。 今じゃ考えらんないケド、ボクがマルクの住む星に行ったワケじゃないんダ。マルクが僕の住む星に来てくれてたんだよォ! アリエナーイ! 思えば、昔のマルクは可愛かったな。ボクは自分で言うのもなんだけど憎たらしい餓鬼だったヨ。 * 『マルクぅ、ホラ、跪けヨ? ドブ啜れってぇ』 『ぅっ………う……! …ま、マホロア…やなのサぁ…! 汚いよォ…』 『ウルセぇナァ…。オマエ、気が弱いクセにボクのこと「足無しの化け物幽霊」って世間様に言い振り回したそうじゃナイノ? 知ってんだヨ? ボクの事をバカにするなんてよっぽどのバカなのか脳ミソとろとろのキチガイか相当のドМか。 ほらぁ、早く跪きなよ。あ、ソッカァ! 君腕ナイんだよねぇ〜? ゴッメェ〜ン! そりゃ跪くことできないよねぇ! 無様だね! アハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハ!! ゴメンネ! ゴメンネ! あ、そうだ! 詫びにボクが「腕無しの見世物」とでも呼んであげるヨ。…ゴロ悪いなァ…。ま、君の名前を呼ぶ価値すらもないような気がするんだけどネ! ありがたく受け取ってよ! …あ、だからといってドブを啜らないのはいけないヨ? 例え腕のない半ダルマ状態の君でも前に転べば啜れるんじゃないの? そうだ。ボクがこの手で押してあげるよ。キミにはないコレ。良いでしょ? あー、ボク優しい! それと、あのお名前はお詫びなんだからネ。ボクからキミへ! だからさ、ほら! そろそろ飲みなって! …あ、押してやるんだっけ! あハハハハハ。それ』 一方的にボクが喋った後に、文句を言う口がうざったらしいので、言わせないためマルクの帽子と頭を手で掴んでドブに向かって押し付けた。茶色いけど油が浮いててエグイ色になったドブの水。白っぽいけど灰色のドブはマルクの顔を全部べったりと化粧してた。 「グペッ………ッ?!!! はぶっぶぐぐっくぷっ…」 「ほら! 啜んないと! ボク怒るヨ? ハハは、アハハハ! アハハハハハハハッハハハハハハハ」 * マルクはそのあと泣きながらボクに許しを乞うていたよ。マー、チョットつまんなかったけど、ボクそれで許してやったんだ。暫くは口が効けないくらいボコボコにしてやったけどネー。 「マホロア、今日はどこに行くのサ?」 足を組んだマルクが椅子に座ったまま問いてきた。 もうボクラはガキじゃないし、それなりに仲良くしてるんダァ。ま、昔はボク達もバカだったしねぇ。マルクもすっかり忘れテルっぽいから気を使わないで済むのが楽だヨ。 「ンー、ボクカービィの所がいいなァ♪」 「ハァ? 寝ぼけてんのか? 昨日も一昨日もカービィの所に言ったじゃないのサ」 「いいノー。あの子、とっても楽しいカラ! 今日も行くヨ」 マルクはめんどくさそうにふてぶてしい顔をして、椅子から降りて扉を開け、村の方角に向かって歩き始めた。 ボクがマルクより先に進んで、村に入った。とある村人がボクを見た。 「やぁー!オッハヨォー!」 「ああ、おは」 村人はボクの顔を見て、そのあとに続くマルクを目にし、一瞬で顔を青ざめさせていた。 「あわ…ワ…ひぃやぁああああああああああああああああああああああああ」 村人は転げまわるようにそこから逃げ出した。一瞬見えたあの村人の絶望した目と開いた瞳孔。…アレはヨカッタなぁ…。 「…感じの悪い奴なのサ…」 マルクがボクの横に立って、悪人とは思えないほど切なそうな表情で、逃げる村人を見つめていた。マルクらしくない。いつもなら一発で仕留めちゃうっていうのにサ。 「………気ィにしないでよマルク! あんなゴロツキこの世にいっぱいいるジャーン? さ、カービィに会いにいこーヨォ」 「………………ケ」 まァ、仕方ないよネェ。こうなる原因はきっとマルク自身が作り出してんだモン。 で…、それを広げてるのは…。 もう暫く歩いてると、カービィの後ろ姿を見つけた。ビクビクオドオド。ああ、可愛いなァ。 「ヤッホォ! カービィ!」 カービィはビクッと体を跳ねさせ、そっと後ろを振り返った。 「ま…マホロア…、来 てくれたんだ…」 カービィはどこかホッとしたような顔をしてた。でも、その表情もすぐに崩れた。 「…マルク…!」 後から続いてきたマルクはむっとした表情でカービィを睨んでいた。 (マルクってみんなにビクビクされてんだなァ…。でも、マルクはさっきみたいなタイドの悪いゴロツキに手を出さなかったし、ましてやさっきのヤツみたいにカービィは逃げ出さなかったし、セイゼイ舌打ち程度で…) 考えた瞬間、マルクは"あの"醜い腕を生やしてカービィの足を掴んでいた。 「ひ……ッ」 「カービィ、何も怯えることないじゃないのサぁ。失礼なヤツなのサ」 マルクはカービィの足を掴んだまま地面に何度もたたきつけていた。ボクが止めに入ろうとすると、もう片方の醜い腕がボクを払いのけた。 「いタ〜い…チョ…マルク!」 小さい子が人形で遊ぶように、マルクは同じようにカービィを叩きつけ続けていた。 カービィの…声がシナイヨォ 「マルクぅうアアアアア!」 魔力球を放ち、マルクにぶつけた。マルクは衝撃により掴んでいた足を放し、地面に落とした。 「邪魔をするんじゃねェ!! マホロアはアッチへ行ってろなのサ!」 シューターカッターをマルクが放ち、ボクは少しだが体を刻まれタ。ボクは激しい痛みに瞬間声が出せなくなり、叫び声も上げられずに地面に転げ落ちた。 「ッ・・・ゥウ」 「カービィ、死んだフリしちゃいけないのサ。ホラ? 起きろって」 「ぅ・・・う・・・」 微かにカービィの声がする。ああ、カービィ…口から血が出てるヨ…。 マルクはカービィを掴み、また殴ったり踏み潰したり酷い事を始めた。カービィの嘔吐する声がする。声が途切れ途切れになってる。カセットテープみたいにブチッブチッと切れながら、流れ出る音声…。耐えられないのニ、耐えられないノニ…。体が動かない。 「オラァッ! ひゃはははははは、死んじゃえよォ。何で死なないのォ? つらいダロ? なんならその舌、僕が切ってあげようか? ヒャハ★ 誰かを地べたに這いつくばらせる事がコォォォンナに楽しかったなんて! ふふふふふふ。それを一人で楽しんでいたってワケなんだね? …まほろぁあ」 初めて…、マルクの目を見てビクッとしちゃったねネ。 ボク、何か凄く後悔したような気がしていたんだ。それが何なのかはわからなかったんだけど、スゴク、ゴメンナサイしたかった。 そこから記憶が飛んでてよく覚えてないけど、次に思い出せるのは、ボロボロで身を引き裂かれたカービィが目の前に倒れていたってコト…くらいかな。 「…………か…ビィ…」 「……………………………………………。 …………………まほ・・・」 返事がしてホッとした。ボクが地べたを這いながら、カービィの近くに寄った。切れた身から血が出てる。今清潔な布も持ってないし、僕もカービィと同じ状態だから何もできない。手当もしてあげられない。 「ゴメンネェ…。マルク、いつもはあんなにまで酷いことしないのに、カービィにこんな思いさせちゃっテ…」 「大丈夫だよ…。僕は平気。マルクは…どう?」 「アイツの心配なんてしなくてイイさ。殴ったヤツはピンピンしてるヨ」 「…いや、そうじゃないよ」 カービィは崩れかけた体でよろよろと起き上がり、血に染まった野原の上でニコッと微笑んだ。 「マルクは…まだ、遊んでくれるの・・?」 は どういうこと‥? 「カ、カービィ? 何を言ってるノ? マルクはキミを…グッチャグチャの体になるまでに虐めたんだヨ? そんなヤツを…怖くないノ? 逃げだ…逃げないの?」 「あは、は。マルクがネ。僕を叩いたり殴ったりするのは…僕を見てる証拠だって言ってたよ。何も手を出さないのは僕に興味がないってことなんだ、って…」 ま、マルク…? 何を考えてるの…?! 「カービィ。それは違うよォ! そんなのホントのスキとか…そんなんじゃないよォ! ゲンに…ホラ! ボクはキミの事が…」 血が溢れて…痛い。頭上に大きな影が通り、醜い翼がカービィを包んだ。ギチッと…音を鳴らして。 「やぁああああああああああああああっぱりぃ! あっひゃああああはやはyhyyはっやひゃはyyはっやhっやひゃ」 「…?! …マルク…?」 マルクは上機嫌だった。もうそれはもうハッピーな表情で…今にも目玉がえぐれてしまいそうなくらいに。ケラケラ笑って…なんて言うのかな。スゴク…愉快そうというか、嬉しそうだったんだ。 「知ってるかぁ、マホロア…。犬はな、エサをやるヤツよりも、厳しく殴ったり蹴るような奴の方になつくんだぁ。 お前さんの言う好きは薄っぺらくても…ほら、ミロ。カービィはこぉんなに僕のことを好きになってんだぁ」 カービィは洗脳されたかのようにマルクに絞められ、泡を吹いているのに喜んでいた。 「そんな…。カービィ、なんでボク…。 マルク…ボクがカービィを好きなの…知ってたの?」 「知ってた」 「じゃあなんで? トモダチの好きなヒトを取るんダヨ! 普通は実るように応援」 「ハァァァァぁアあア?! マホロアぁ。お前、いつからそんな乙女チックな脳ミソになったんだ? まぁいい。…僕はね、マホロア。オマエがムカシ僕を下僕扱いしていたじゃないか。覚えてないなんて言わせない。僕はずっと恨んでんだよ。 考えたよ。マホロアから大切なものを、奪ってやろうってサ。 ネェえ? マホロア、どうだ? 僕の恨みはこんなもんじゃないのサ。あはははははあはh!見ろよ、お前、昔腕無しの見世物ってぼくをののしったよな? 今はそんなこと言えるか? 腕、生えたんだぜぇ? 足だってある。お前みたいな化け物とは違うってことが証明されたんだよォぉ」 マルクは勝ち誇ったような顔で僕をばかにしていた。当の僕は…反論もできなかった。 「カービィは僕のモノ♪ カービィは僕のモノ♪ 足無しの幽霊にはあげない♪ カービィ、僕のカービィ。うふ・・・ふけっへへへへえへっへへへへへへへっへえh」 カービィは目をぐりんとしたままうごかなくなっていた。 ボクはマルクを、カービィを勘違いしていたんだ。 マルクは、ボクを、勘違いして 「マルク…キミは…サイコォのトモダチだよ」 かすれる視界の中で、マルクに言った。 カービィは既に死んでいた。 意味がなくなった。 了 死エンド。マルクは歪んでいる方が書きやすいし好き。 |