なんだかやけに胸が騒がしい。 視界良好、いつの間にか仮面を外していたらしい。 脅えている。何かに脅えている。 なぜお前はそんなに赤く染まっているんだ? 「………っ、こ…ぁ……」 声が出てない。出したくても出せないでいるのか? 「…カービィ?」 「……っぁ…ぅ…な…」 私を指さして怯えている…。 イヤイヤといった様子でカービィは横に首を振り、私から遠のくように這い蹲りながら逃げている。 「…ぉ………あ…」 「カービィ、どうし…」 「…!! っが…」 ギュチュッ ブッ …。 何かが無理矢理千切れるような音がした。そんな音が終わったと同時にぼとりとカービィの前に何かが落ちた。 赤い塊が黒い汁に包まれて落ち、その千切れた部分からどくどく赤い血が滴って……… これは…舌? カービィの方に顔をすぐさま向けた。しかし彼は痛みを苦しむどころかざまぁないといった表情で私に向けて苦痛に我慢しながら口元を両端ににぃっと歪め、どたっと前に倒れた。 名前を呼んで近寄ったが息をしていない。口の中から血があふれている。 何があったんだ…? 何故カービィは私を見ておびえ、自殺したのか…判らない。 ガンガン自らの頭を殴ったが思い出せず、寧ろ気が遠くなるような感覚がした。 前に倒れて死んでしまっている姿はあまりにも無惨だ。私はカービィを仰向けに寝かせ、目を閉ざせ、口を閉ざした。 その際にカービィの足元を見た。すると股からどろっと何かがつたった。 (なんだ…?) 少し気味が悪かったが私はその粘着物を触った。見た目以上にどろっとしてイヤな触り心地、しかも誰かの精液なんて… 精液? 何でこんな物が…、 最終確認のように恐る恐る舌をちょろっと出して舐めた。苦い。 誰かに…犯されたのか? 私じゃない、誰かに? 私以外の知らない誰かと? 頭を巡らせる。カービィと会話したときの言葉を一文字ずつ思い出す。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ!!!! 『ドロッチェってね、優しいんだ。僕にケーキを』 言葉を思い出した瞬間私は飛び出した。あのネズミが、あのね、ズミが。が。が? が! 地面を見回してひっくり返った自分の仮面を見つけ、すぐに仮面を被った。 「ドロッチェえぁああアアァアアぁああァアァァアえぇあえぇあアアああ!!!!!!!!」 空を飛ぶ、風がどんどん糸を引くように弧を描く。私の手伝いをしているようだ。ああ、ゆるさない。さぁあない。 赤いシルクハット。 「ゴロジデヤルゥァアアアアアア」 「ん? ナッ…?!」 剣を構えて、それ、殺してやれ。 ネズミはすぐさまかわして、私は一瞬の間地面とにらめっこしていた。 勢い余って方向転換が出来ず、地面に突っ込むような恰好で地面を刺して地中に潜ってしまった。こんなもの気にしない。すぐに引き返せ、逃げられる前にだ。早く殺せ。殺せ!! 「ォ゛アアアアアアアアアア」 「おい、落ち着け! お前メタナイトだろ? どうしたんだよ。まず事情を言えよ!」 事情? お前がよく知っているだろう。汚い事をしやがって。あの子は優しくって、オヒトヨシで、騙されやすいから、お前みたいなケーキでカービィを釣って純粋なカービィの心を汚したような男に言われたくない。言われたくない! 「ジネェ! 死ね! しねしねしねしねしねしね」 「ッフ…?! クッ・・!」 ネズミが格好つけて逃げやがって去勢だ去勢。せめて殺せなくってもこいつの汚いイチモツだけでも切らないとストレスで腸から蛆虫が湧きそうだ。 「正気の沙汰じゃねェな…、何言っても聞こうともしねェ… …仕方ない」 ネズミは杖を振りかざし、私に先を向ける。先端が白い細かなガラス片のようなものが集まっている…まさか‥! 杖のエネルギーが解放され、アイスビームが発射される。間一髪…といったところか。私は攻撃をよけることが出来た。アイスビームの放たれた方向は木が、草原が凍っている。 「話をしろ! 何がどうしたかまずは説明しろ。…互いに武器を捨てようじゃねェか…」 …ドロッチェは杖を地面に投げ捨てた。…シラを切るつもりなのか? 性格が悪いにもほどがあるだろう…。 …確か護身のナイフを…マントの裏に隠していたな…。 私は剣を捨てた。ドロッチェはそこで胸を撫で下ろしたようで、ため息をついていた。 「…説明は…してくれるな? なんで俺に突然襲い掛かったんだ」 「…お前がカービィを誑かしたんだろ?」 「いつだ?」 「ケーキを貴様に食わせてもらった日」 「……? …最近なら…昨日かも、しれねェな」 最近? 最近ってどういうことなんだ。まさかその前も、その前もケーキを貰っていたのか? 私に隠れて…カービィが私に隠れてこいつとあっていたのか? いや…脅されたんだ。あの子は悪い生き物に捕まりやすいが故に、こんなネズミにつかまって………そうだ。きっとそうに違いない。高ぶる気持ちをグッと押さえて、なるべく冷静に、慎重に会話をする。 「そ、それで…?」 「は?」 声が震える、頭に血が上ったままでなかなか平常を装えない。 「どこまで…ヤッたんだ?」 「?! おい、何言ってんだ! お前今日どうしたんだ?!」 「お前の汚い精液をあの子のどこに刺して何度垂れ流し、犯したんだ!!? 殺してやる! 殺してやる!」 「まっ…?! ぅア゛…!」 マントの下からナイフを取り出し、刺しにかかった。ネズミは咄嗟に左手で防御の体制をとり、左手にナイフが刺さった。私は一歩引き、様子をうかがった。左手を震わせ、苦痛の表情をしていた。右手で、左手に刺さったナイフを抜いた。 「ッフーーー! うっ………ぐぅ…ッ!」 血がだらだら流れている。みっともない姿だ…。…私を睨みつけて…威嚇しているつもりか? 「卑怯者が…! お前みたいな狂人の傍にカービィは置いておいちゃいけねぇ…! カービィはどこだ!」 「…カービィは空っぽになっていた」 「………から?」 「魂が上に行ってしまった。姿はここにあってももう中身はいない。お前に殺されたんだ。お前があの子を血塗れ姿に殺してしまったんだ!!」 激情のままに、ネズミの手からナイフを奪い取り、刺しては抜いてを繰り返した。そのたびに血飛沫が飛び、ネズミのブサイクな苦痛の表情が私を快楽へ導いた。体中傷だらけになったネズミは、後ろにぐらりと倒れた。ゆっくり近づき、ナイフを振り上げる。 「ッ……お前に……非はなかったのかよ……」 「馬鹿な質問をするもんだな。もうすぐ死ぬんだ。なんでも言うがいいさ」 「…っはぁ………は………カービィが…俺のところに尋ねてきたんだ………お前が怖い………ってなぁ………お前………カービィの目の前で…………生き物を殺しまくって…た……って…その…生き物の死体の目の前で…犯したって……聞いた………古い友人から………最近出会って口をきいた……奴にも…………刃物を振り上げて………………ころした…………目の前で………その…度にカービィは………血に塗れた姿で…股から…どっかの誰かさんの液を垂らしながら……俺のところ…に…訪ね…ッに……来たんだ………メソメソ…泣いてて…………そのときいつも………ケーキを…………あげてた…………そしたら………笑顔になって………相談に乗ってやってた………………昨日も………そうだった………お前が………怖くて怖くて……仕方ない…………って………言ってた…………俺はケーキをあげた……………食べた後に……こう言った…………「もう明日から……こない……僕の事は……僕が解決する………いままでありがと」………悲しそうな眼をしてた…………お前が追いつめたんじゃないの……か…? ……………お前が………カービィの前で………いろんな奴を殺すから………お前に愛想を尽かして…………死んじまったんじゃねェのか…!! ………ッぐ………ぁ…はぁ…………はぁ………。 ……要約すりゃ…………お前がカービィを殺してしまったんだよ…………」 私が? 殺した? 「お前…………気付いてないのか? ……………その仮面が…………………どうしてそんなに血塗れなの………か…………真っ赤で……こびりついて………乾ききってる………」 私は恐る恐る仮面を外し、ひっくり返す。………あの白い仮面ではなく…茶色く…手で拭っても落ちない…血を吸った仮面になっている…。 本当に…私はいろんな奴を殺してきたのか? あ 生温かい感触にカービィの中を犯すような…? そんなかんじの気持ち、絶頂? そのあとの…生き物の…血の感触? 『カービィは私がいるから他の奴らは必要ないな?』 『やめて………メタナイト、お願い! 僕のお友達をいじめないで…もうやめて! ……うあぁ……ぁあーーーーーーーーーーーーっ!!!!!』 『大丈夫だ。死んだ奴らはみんな天国からお前を見てるから。なにも寂しいことはない。…カービィは・…私が傍にいてうれしくないのか?』 『おかしいよ! そんなことを言ってるんじゃないよ! 僕のお友達をみんないじめないで! 殺さないで! 死なないで!』 『大丈夫、大丈夫』 『やめて! やめてってば! やめてよ! うぁぁ・・・あああああああああっあああああああああああっっっ!!!!!!!!!!』 何だ、この記憶…え? 私は…本当に…? ナイフでネズミを刺す前に、ネズミは力尽きて死んでしまっていた。 そうか…。 あ、わかった 「カービィは私が天国で皆カービィを見守っているといったから、天国へ行ってしまったんだな。ああ、何としたことだ…うっかりしていた。 では、カービィの中身を探しに私も行こう。ネズミめ…それを察して自分も死んでカービィに会いに行ったんだな…。許さんぞ…。 中身を連れて、カービィをもとの入れ物に戻して私も戻って…これで幸せに…いつまでもいられるな」 ナイフを捨てて、私もカービィと同じ死に方で御霊の国へ向かう。口の中が鉄さびの味がする…痛くて仕方ない。 了 そしてかれらは |