小説

□赤と緑の日常
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今回、緩い楽しいお話を目指しますね。(あくまで目標)
※軽くネタバレ注意







「兄さ〜ん、晩ご飯できたよ〜。マリカしてないで早くおいでよ」
「待て待てっ、今ファイナル行ったから話しかけんな!」

 最近兄さん、仕事もせずゲームばかりしてるなぁ。まあ僕より仕事してるもんなぁ。
 収入だって僕の何倍もあるし…グスン。
 前だって…


 改装中 〜回想中〜


 ある日の昼。キノコ型の家にマネージャーがチャイムを鳴らし、兄が来た来た!と言い玄関の扉を開けた。僕も結果を見通したようにゆっくりと後を付いていった。

「マリオさん、今月のお給料です」
「いや〜、毎回悪いね」

 兄さんはお金が入ってる封筒を開けた。すると数え切れないくらいどっさりと福沢さんが写ったお札が敷き詰められていた。

「数えるのめんどいや」

 さり気なく自慢されたけど…、大丈夫!僕だってマリオカートに出たり…他は……とにかく、してるもん。兄さんくらいのお給料だってもらえる、絶対、いや多分、…少なくとも。
 僕は封筒を受け取り手のひらにお金を出した。

 五十円

「何でですか?!僕が主人公じゃないからですか!あの時の優しさは…ルイージマンションが売れたときのあの寒気がするくらい優しかったアレは何ですかーっ?!」
「おっ…落ち着いてください!ルイージさん!お給料が低いのは貴方だけじゃないんですから!ですからくび輪するのやめましょっ!」

 僕は落ち着き、玄関先では何なのでとりあえず居間に上げた。

 何で僕っていつもこう…何て言うか永遠の二番手だとか緑のヒゲとか影薄いのとかって変な肩書きつけられるのかなぁ…。
 僕的には頑張ってるつもりだし、それなりに自己主張しようとしてるし。

「えーと、私の友人から聞いた情報ですと…」
「ルイージ、お茶」
「え〜…、兄さん、もっと緊迫感持ってよ。タイミングが」
「誰のお陰で今日も平和に飯食っていられると思ってるのかな?」

 普段の顔より数倍悪者みたいな兄の顔を見ながら分かったよと呟きしぶしぶお茶をついだ。傍らマネージャーさんは僕がいないにも関わらず情報を報告した。

「ワルイージさんが15万円で、ワリオさんが12万円です」

 僕はそのまま滑り、頭を強打した。

「ちょっ…待ってよ!何でワリオとワルイージ僕よりお給料…ていうか、出てないでしょ?!」
「いえ、なんか…施設費をリーズナブルなお値段でなら貸すって本人達が言って…、計27万円支払ったんですよ」
「え〜…。何それ…
 あっ、なら僕のマンションも貸したでしょ?なのに五十円って…」
「え?あれはテレサさん達のだって本人が…無料で貸すって言ったんですけど…」

 どうせ僕なんてそんなもんだよ…。僕は床に突っ伏して指で円を延々と書く。兄さんは結局自分でいつまで経ってもお茶を出さない僕に呆れてお茶を入れて飲んでる。

「あ…でっですがルイージさん!あなたには優秀かつ、自分の兄のマリオさんがいるじゃないですか!家計に困る理由なんてないでしょう?」
「いや、そうですけど…」
「あっちゃあっ!もうこんな時間だ!次の人にお給料渡しに行かないと!ではルイージさん、マリオさん!さようなら!」

 人間業とは思えないくらいの早さで何処かに走っていく様はまるで逃げているようにも見えた。
 僕は深いため息をつき、手のひらの五十円を見つめる。
 横から兄さんが肩を組み、慰めるように楽しそうな笑い声を上げた。

「ルイージ、まあそう暗い顔すんなよ!別に困るようなことなんて一つもないだろ?」
「兄さんはいいよ…、高いお給料もらって、こんな沈んだ気持ち、なったことなんて…」
「いや、あるけど…十八円…(プリンセスピーチの時はひどかったナァ…)」
「へ?」

 衝撃的な一言に、僕はじんわりと涙が出た。

「わははぁ〜い!兄さん大好き!」
「え?動機が分からないんだけど…、まあいっか…」





 僕はあの瞬間がとても嬉しくて心にじんわりと残ってる。
 でも今思うと、アレなんか上手いこと言いくるめられたような気がする…。

「あ、一位。こりゃあ150cc全カップ☆☆☆だな。よ〜し、次は300ccを…」
「兄さん、もうゲームは後にして、今晩はキノコカレーだよ」
「あ、マジで?食う食う!」

 こんなに幸せでいいのかな?と思いつつお皿にご飯を装いながらほっこり笑顔になる僕だった。






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