小説

□どうやら生まれ堕ちたその時に僕らの運命は決められていたらしい
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 俺たちは何処かでつながっている。今からも、これからも――
 なぁ。一体俺は何がしたかったんだろう?



 俺は今日、死ぬことを決めた。

 でも俺は死なない。
 俺がこのステージから足を踏み外し落ちても、いつの間にか誰かにここに運ばれている。さっき踏んだクリボーも、叩き壊したブロックも、取ったはずのコインも、次に起きた瞬間全て元に戻っている。

 ――死ぬことを許されない、袋小路。

 そう思うと急に怖くなる。
 取り敢えず俺はこのステージから抜け出そうと進み続ける。

 度々の困難に立ち向かい、槍のようなモノに刺され死んだり、溶岩に落ちて溶けて死んだり、魚に食われて死んだりした。
 なのに生き返った自分を見て。他に術はないのかと体をさする。
 タイムアップになったとたん、目の前が急に暗くなって息ができなくなり苦しみながら死ぬ事になる。

 ――もういやだ。

 毎日譫言のようにそう嘆き、呟いた。
 何がいけないのだろう?俺はフラグをとり、 次のステージへと向かう。
 きっとこのゲームが終われば、答えが分かるハズ。ドッスンに押し潰され肉や内蔵が辺り一帯に散りばめられても、炎の海に突き飛ばされ、全身に火傷を負い周りに焦げた肉の臭いを漂わせても。俺は最後まで走る。
 何時だってそう。

 ――何回も繰り返していたんだ。

 最後のステージ、クッパ城。ここを越えたら答えがでる。俺は自分にそう言い聞かせる。

 沢山の溶岩を跨ぎ、土管を何度もくぐり抜け、たどり着いたそこには城の主が忽然と立っていた。

「…また会ったな。マリオ」
「繰り返して何十年。何時この袋小路から抜け出せるだろうって毎日ここにくるまで悩んでいたんだ」

 今日のクッパは寒気がするくらいおとなしい。何か物欲しそうな顔で俺をじっと見る。

「俺、やっと気づいたんだ。これの終わらせ方」
「………」
「クッパ、最後の戦い、受けてもらっても良いか?」





「…うむ」

 間違えている、マリオ。それをしたからと言って、お前の袋小路からは脱出できない。なぜ分かるのか?と言ったらワガハイはそれを見ていたから。
 ワガハイは貴様にしてやられ溶岩に最後は落ち、死ぬ。
 そしてマリオはピーチを助けてハッピーエンド?何をバカなことがあるか。

 ワガハイは奴に足元の場所を切られ、暑くて苦しい溶岩に落とされる。もう助けてくれなんて一言も言いたくはない。
 マリオ、お前は振り返れば沢山のワガハイの手下たちを殺した。そしてワガハイも惜しみなく殺した。
 そこからがこの袋小路の始まりだろう。逃れる?それはただ一つ、貴様がピーチを助けに来なかったらよかっただけのこと。

 多分、それさえしなければワガハイも貴様もこんなことにはならなかったハズ…。




「うーん、朝か?」
「に、兄さん!大変だよ!ピーチ姫がさらわれたって!」
「なんだと。よし、行ってくる!」
「うん。早く帰ってきてね」






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