小説

□釣りをしたある日のこと
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 今日はハイラル湖に来てのんびりと釣りをしている。幻影の砂漠以来、ちっとも楽しみがなくなり、退屈しているのだ。

「ナビィ〜…」
「どーしたの?リンク。そんな浮かない顔しちゃって」
「シークってさ、なんだと思う?」
「………え?さあ…」

 釣り竿が少し動いた。

「いっつも俺が近づく度にドロンって消えてさぁ…、何つーか…失礼だよな」
「ていうかリンク、神殿に行かなくていいの?賢者集まったんですけど…」
「ナビィ、そう急かすなって。(本当は只たんにリーデットに近寄るのが怖いだけだけど…)次かかったら行くからさ…ぉっ」

 釣り竿がすごい勢いで引かれる。とても重い。こりゃあ大物か!

「ナビィ!手、貸して。すんごく重っ…一人じゃとても持ち上げられないよ」
「あっあたし手無いよ?!妖精だし」
「くっそー!どうせならこんなずんべらぼんよりリボンちゃんがいた方が少しは手になってくれたのに…」
「だからそこで何で別の作品のキャラクターが出てくるわけ?!えっ?あたしが悪いの?!」

 俺はナビィをシカトして釣りに没頭した。暫くしてあることに気づいた。

「…暴れなくなった」
「あら、…ここは岩がイッパイあるもの。多分その魚、その辺りの岩に頭をぶつけて気絶でもしてるのよ」

 ふーんと呟き、ゆっくりとリールを巻いた。水飛沫を上げ釣り竿を天高く上げると、そこには大きなさか…

 頭にたんこぶが出来て瀕死状態のシークが釣れた。

「…あ、間違えた」
「ちょっとぉお?!間違えたじゃないわよ!何湖に戻そうとしてんの?!」
「だってこれ魚違うし…」
「あんたさっきまでシークに会いたがってたクセして何やって…。もう!」

 俺はしぶしぶシークを抱えて草原に寝かせ、再び魚釣りに戻った。
 何というか…、確かにナビィの言う通りさっきまでの感動がさっぱり消えてしまった。さっきまで会いたい会いたいと呟いてたクセして、いざ会ってしまうと何故かすっかり楽しみがなくなってしまう。例えば、ポケモンパンを買って…キュレムが当たればいいなーってそれまでずっと思ってて、いざ当たると喜ぶんだけど何か足りなくてやっぱり何か夢にたどり着いたっていうか、それに達成してしまったからそれ以上進もうにも進む道がゼロになるわけで…。
 やたら面倒くさいことを考えてたらいつの間にか釣り竿が微かに動いて、糸をぐんぐんと引っ張っていた。

「おっ、かかった」
「もう、リンク!魚釣りよりシークを一緒に起こしましょうよ」
「今それどころじゃ………おっ!うあっ!」

 後ろにひっくり返り、頭と背中を軽く打った。引きに引いた釣り糸の先にはなんと長靴がついていた。
 …今時あるんだ、本当にこんなことって…。どう森類ならあり得そうなのに…。

 暫くすると咳こむ声と草を触る音が聞こえ、何とはなしに後ろを振り返った。
 勿論そこにはシークがいて、ナビィがその周りをうろちょろうろちょろして、喜んでいた。

「シーク!ようやく起きたのね」
「…!よっ…寄るな!もう麻痺させようっていったってそうは…」

 グーでナビィを叩き、エポナの足下に蚊のようになって落ちた。するとハッと我に返り、現状を知ってか否かシークは不思議そうな顔をして辺りを見回していた。

「…?ここは…ハイラル湖?」

 俺は目の前の光景をポカンと見ていた。
 その間抜けた表情は彼には到底似合わなくて、いつもクールな面影は何一つ無かった。

「!…リンク、何故ここに…」

 空気と化しかけていた俺にようやく気づき、自分の今置ける立場に理解しかねていた。

「それはこっちのセリフだよ。シークこそ何やってんの」
「………ア…アルバト●オンに攻撃されて…川に落ちt「嘘おっしゃい!」

 なんかやたらと今回はゼル伝以外のキャラクターが出てくるな…。ふと俺はナビィの遺体(笑)を見て話す機会を試みた。

「じゃ、エポナの足下にいるナビィさんに対しては…、どう解釈つけるおつもりで?」
「ああ、ごめん。ブ●ハブラかと思った」

 さて、ここでモン●ンネタにも飽きたところで、話を線路の如く戻そうとしよう。

「…極端に言おう。僕は君に会いに来た。その虫抜きで…」

 シークはいつもの凛々しい目つきに戻り、すらりと立ったその姿はまるでモデルになる。俺は心の何処かでその姿にドキリとし、少し惹かれた。

「会いに来た…?何かまだ俺に教える楽譜でもあるのか?」
「いや、今回はプライベートで来た。…もう一つの…から抜け出して…」
「抜け出す…?」

 シークはそっと自分の胸に片手を乗せ、思いを馳せているように見える。その凛とした雰囲気に心奪われ、暫くその姿を見つめていた。

 手を胸から離し、すたすたと俺の方に近付き、躊躇いもなく力強く抱き締めた。俺は一瞬どうすればいいのか分からなくなり戸惑ったが、よくよくその体に触れたら少し震えていて今にも崩れそうなくらい腕以外の力が入っていない。なんだか逆にシークの体に触れるのが怖くなった。

 シークはゆっくり密着させていた体を離し、四歩ほど下がって呟いた。

「…僕は次に君に会ったが最後、お別れの時だよ。君にとってはフェアじゃないかも知れないが…許してくれ」
「シーク」
「君に触れることが出来てよかったよ。…もう一人の自分じゃなくて、シークと言う僕で…。
 勇者リンクよ、先に待っている…!」

 シークはいつもの煙玉のような物を叩きつけて消えてしまった。
 結局シークは何者だったんだろう。僕はガノン…いや、ハイラル城下町がある方に向いてそう呟いた。

 エポナはフルルと鳴き、気絶したままのナビィを起こす。ナビィは何があったのか理解できない状態で、朦朧としていた。

 ――こんなことをしてる場合じゃない。
 俺はシークに、ゼルダを助けるため一目散にエポナに乗り、ハイラル城まで走らせた。

「ちょっ…!置いていかないでよ!リンク〜!」

 ナビィが頭から打ったからか、今日会ったシークの記憶がないのは、また別のお話…♪













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