小説

□鏡写しのそのカタチ
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 棺の前では悲しむ人の声で埋まっている。今日も空は澄んで青く染まっている。物足りない。僕の横にもう君はいない。…そんなわけ無い。あの棺に入ってるのはニセモノ。――彼が死ぬなんてあり得ないじゃないか。

 今日の朝四時十二分頃。
 突如メタナイツ達がメタナイトを襲撃し、メタナイトを殺した。
 遺体は片腕と両足が切断され、顔の部分を何度も切りつけられたのかグチャグチャで顔面から赤い血肉が飛び出している。眼球がぼとりと地面に落ち、烏が啄み、腸や心臓等の臓器が飛び出した状態で血が切開部分から溢れんばかりにこぼれ落ち、皮膚が跡形も無くして、…その遺体は何とも残酷な姿形をしていた。
 僕は彼のその姿を見るなり、ゲロを吐きながら涙を流していた。
 僕自身にとって愛しい彼は死んだ。名前を呼ばれることもなければ頭を撫でてくれることもない。
 いつもはたくさん食べる晩御飯も残し、あらかさまに気落ちしてなかなか立ち直れない状態にあった。

 ――草原の上で棺が土中に埋められる様子を遠くから見、風が頬を微かに撫でる。

 依然、メタナイツ達の行方は眩ましたままで、メタナイトを討ってどこに消えたのかはわからない。
 別に仇を討とうなんて事はちっとも思いやしない。それに、メタナイトは僕のことが嫌いだから。
 何故かって、僕を討とうといつも剣を取らせ、戦う。これで分かったでしょ?…大抵、そんなもんだよ。

「カービィ」

 背後から誰かに呼ばれ、後ろを振り返っるとそこにはシャドーがいた。僕はつい蚊のようにか細くシャドーと名前を呼び返した。

「あ〜…何てか、その…何だ。死んだんだってな。メタナイト」

 僕は無言で棒立ちし、頭を縦にも横にも振らなかった。シャドーはどうも予想以上にしんみりした空気に言葉を詰まらせながらあちこちを見回している。

「…スッゲェ死に方で…何か…グロかったって聞いたんだけど…どうしよ…」
「………」
「…、お前には悪いとは思ってるけど、今日はどうしても来たいって言う奴が居てさ」
「…?」

 シャドーは何か決心したような素振りを見せ、良いよ。と一言いう。
 すると身形が一緒で、ただ違うとすればあの仮面の傷が着いているのと色を黒を中心にした人物。ダークメタナイト。――この時に何故かメタナイトとダークメタナイトの陰が重なり、僕は見分けがつかなくなってダークとは思わなかった。――

「…?…メタナイト?」
「…久しいな、カービィ。…ふ、私が生き返ったのがそんなにイヤか?」
「ぅっ…わぁああぁあぁああぁあぁぁあぁん!めたぁ…めたぁ、よかった、死んでなかったんだね!!?」
「のわっ?!」

 僕は『メタナイト』に抱きつき、泣き喚いた。
 『メタナイト』とシャドーはキョトンとした表情で顔を見合わせた。


*


「…これは…、どう言うことだ?」
「うくっ…めたぁ、う……ぇえぇ…」
「…ダークは死んだメタナイトにソックリだからな。…暫くここに滞在して替わりをやってやったら?僕も遊びに行くし」
「なっ…!?私は許可してない!第一こんな面倒をするというのはだな…」
「メタナイト?…怒ってるの?僕のせいで…」

 敵であるカービィは私をどうもあの男と間違えている。甘すぎる、星の勇者には相応しくない。私がここで剣を振りかざし、コイツを殺せば世界中に魔獣は溢れかえり、世界は闇と化し住みやすい世界となるだろう。
 しかし戸惑いもある。コイツに対して何にも興味がないはずなのに剣を振るうのを腕が拒否する。
 ――しかし、腹が立つ

「…好きにしろ」

 私は抱きつくカービィを突き放し、カービィに対して背を向け呟いた。シャドーの何とも満足気な顔が頭に浮かぶ。

「よかったな、カービィ」
「うん、シャドー」

 シャドーは分かるのに私とあの男の区別がつかないとは…。変装していたあの頃が懐かしい。

 翌朝、私は何となく奴の埋められた墓の前まで行った。花が一輪だけ、そこに添えられていた。誰が置いていったのかは分からないが、多分あまり派手なことをしようとは思わなかったのだろう。――何故かというとその花は白いマーガレットで、花言葉も「心に秘めた愛」「真実の友情」とそっと小さく押し込められたイメージだったから、と言う勝手な解釈だが…――少しの民はたまに彼の墓の前に立ち、頭を下げたりとあまり関心がなかったのか、それだけ済ませて何処かに行くような様子が度々見られた。

「アイツは嫌われていたのか?」

 不思議に思いつつ、私はマーガレットを見つめながらそう呟いた。

「…あっ、メタナイトだっ!」

 勢いよく駆ける足音に気づき、そちらに向いた時はすでに遅し、走ってくるピンク玉が体当たりの如く吹っ飛んで来て全身で受け止めた。
 後ろにコロコロ転がり、暫くして止まった。このガキは…と思い、斬り殺そうかと剣に手をそっと伸ばしかけた瞬間、

「僕ね、あの………実は前から言いたいことがあったんだ」
「っ!…何だ」

 すぐさま手を引っ込めた。突然顔を真っ赤にさせウジウジし出した。…何だ?コイツ…。

「はっ…ハッキリ言うね!僕、前からメタナイトが大好きだったんだ!」

 ズキリ

 痛い。

「その…何時からって聞かれると答えづらいんだけど…、最近分かったんだ。うん、ごく最近」

 このまま殺したくなった。
 何故かはわからない。ただ殺したくなる。恨みの念が強くなる。
 その意味も分からないまま私はじっとカービィを睨みつけた。

「…?め…っ!!」

 自らの仮面を少しずらし、私を呼ばないその口をふさいだ。自分でも何をしているのかさえ理解できてはいない。だが、どうしてもコレがしたくなった。苛立ちに蝕まられた結果。とでも言おう。
 何時誰に見られても文句が言えないような場所で私の行為は徐々にエスカレートし、その小さい口の中に舌を絡ませた。中は暖かく、とても心地よい。カービィは嫌がりつつも流れにのり、私の行為を受け入れようと微かにしている。
 ――と、そこに

「ぅおっ、ダー…メタナイト!おおおまっ、カービィにななな何してんだ?!」

 シャドーの存在に気付き、即座に口を離す。さっきまでの状況を物語るかのようにつっと二人の間に透明な粘液がのびた。と同時に、もの凄い羞恥心に襲われた。

「いや…あの…だな」
「ぅっ…えぐっ…違っ…」

 カービィが突然泣きじゃくり始めた。何が違うのか私には全く分からなかった。

「メタナイトはこんなこと絶対しない…!」

 イラッとくる。お前の口からメタナイトと口にするのが悪い。何故私を呼ばない、理解しない。
 シャドーは呟いた。

「カービィ、メタナイトは死んだんだって、理解していたんだろ?」
「…、………」

 カービィはそのまま何も言わず、私を睨みつけて何処かへと行ってしまった。

 シャドーは何もかも理解していたが、私には到底…




オチ?なにそれおいしいの?

 解説をMemoに書いてます。

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