小説

□"いかれた"キモチ
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 僕を見る目なんて大概は軽蔑の眼差しなのサ。




「まるくは"いかれてる"の?」

 昔、ある少女が僕にこう言った。その子はもう死んでしまってこの世にはいない。その子はこの星に迷い込んだ人間の子だったからね、百年もしないうち、いや、環境が合わなくてかもしれない。もしかしたら海に落ちて溺れて海の水雲となった。のかもしれない。百年も昔なんて、僕はあまり覚えちゃいない。けれど、その話だけははっきりとこの耳に残っているのサ。
 ああ、でもダメなのサ…。名前だけは全く思い出せない。思い出せないのサ…。

「…まあ、***はまだ九歳だからいかれてるって意味は全く分かんないけど…、きっと"幸せ"って意味だと***は思ってるんだ」

 名前も分からないその子は確かに無邪気な笑顔でそう笑って言っていたのサ。その二年後だったか、何かがあって死んだって風の噂で聞いた。その子の親は僕の所為にしてうなだれていたのを遠くから見たのを微かに覚えてるのサ。

 イかれてる…か。
 僕にはお似合いの言葉かもしれない。確かに僕はイかれてる。ああ、イかれているサ。でも…君の言っていた"いかれている"とは少々…否、大分違うみたいなのサ。
 今もこうして…僕は多分イかれたことをしているからなの。サ。





 片手にはナイフ。片手にはフォーク。生け造しなぁんて初めてなのサ。わざわざ皿の上に置くまでもなかったかもしれないけど…。嫌がるその顔もとても素敵☆
 早く食べたいね。くすくすくす(笑)。

「まっ、マルク…?冗談だよね?ねぇ?その物騒なナイフ、こっちに向けないでよ?」

 事前に結んでおいた両手両足。そうだね。人間で例えるなら大の字みたいな格好にして手首足首両方にロープを括り付けて引っ張った感じ。かな?
 さあさ、カービィ。君は何で僕を受け入れないの?嫌い?嫌い。ああ、愛情が足らなかったかな?ううん、僕はいつでも君を愛していたもの。足らないなんて贅沢、通じやしないよ?君より小さかった子、あの少女のように僕を受け入れて?受け入れて。受け入れてよ。受け入れろ!!
 そう思った瞬間何かがさくっと切れたような気がした。ごとりと落ちた何かを見ようと見下げた。面白いことに、そこに君の足と本体から真っ赤な血が流れているじゃないか。

「いぎゃああぁあぁぁあぁあぁああィあぁああぁあぁああぁああぁあぁあぁあぁぁあぁあ!!!!」

 カービィは状況把握した途端に目からぼろぼろと涙を流して叫んだ。喧しいと思いつつその落ちた足を僕は噛った。

「〜っ…?!!!」
「………ケケ、君の足はとても甘いね…」

 もう二口噛ると彼の片方の足はもうなくなっていた。唖然…?というより拍子抜けしたようで、体の一部がないことに不安そうな眼差しを僕に注いでいた。

「クセになっちゃうよ、君の味…、もう一本くらい。…いいよね?」
「ひっ………イ、イヤ、マるっ………ぃゃああぁあぁぁあぁあぁああ!!!!」

 ざっくりとナイフを足に突き立て、そのまま足を持っていく。ブチブチと皮膚が裂け、身からは血がトロトロと流れ出す。

「勿体無い…」

 引き裂いた部分に舌を這わせその真っ赤な蜜を舐め取る。
 甘い甘い。美味しいよ。痛い?痛いの?デモね、これは君が悪いんだヨ。言い訳できるモンならやってみるがいいサ。マ、そのかわりその口は縫っちゃうけどね。

 一口ごとに幸せが僕にやって来るみたい。いつしか僕は君の足も、手も二本とも平らげていた。

「だるまって…ヤツなのサ。似合ってるよ。カービィ」
「――っ、ぁ…マルク?僕、死んじゃう…の?」
「何言ってんの?死にはしないよ。だって君は星の戦士だよ?それに、普通の生き物だったらとっくの昔に死んでていい状態なのに、こうして生きてるじゃないか」

 全く、君なんて死んじゃえばいいのにね。

「さぁ、最後の晩餐だ。おおいに楽しむといいサ」
「いっ、やだ!やめっ…ぎゃ――――」





「ねぇ、まるく。まるくは今いかれてる?」

 ああ、とってもイかれてるサ…







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