小説

□壊れテいく
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 アリを踏みつぶした。

 なのにたいして世界はざわめかない。
 不思議だネ。僕はアリを殺したんだよ?尊い命ってやつを、にじにじと。
 殺人罪にかけられることもなく、裁判をおこされることだってない。もちろん死刑なんて絶対にない。警察にだって捕まらない。

 だけど僕らはどうだろう。

 死んだらきちんとお線香をあげて、南無阿弥陀仏と唱える。殺してしまえば殺人罪を問われ、裁判に負けて死刑にかけられる。アリも同じ命を持ってんのに。犬は…同じやりくちかな。ワカンナいけど…。
 デモさ、あんまりじゃない?
 アリが可哀相じゃない?……え?「可哀相じゃない」?

 なんなら君は、犬を試しなよ?


「僕は君を虐待する、そうだ、飼い主。君の飼い主様だ。君に何しようが、飼い主様に刃向かったり、拒否したりしたらダメェエ。分かったんならワンって、返事しなよ?クズだなぁ、トロいなぁ…!
 ………ォラアッ!返事ぃ!返事しないと蹴っちゃうよ?痛いのイヤだろぉお?!さっさと、返事ぃいいぃい!!」
「…っひぃ…!…わ……わ、ん…」

 君はびくびくしながら僕に返事をする。ああ、いいねぇ、上目遣いで僕にやめてほしいと、そう願う苦しみに喘いでいる目、僕ぁ新しい何かに目覚めちゃいそうだよ。
 首輪なんて用意せず、この星の戦士にあった専用の足輪を用意させてもらったよ。引っ張ると格好が不格好になるから、ちゃんと行くとこ行くとこ僕について来ないとだめだよ?ヒャハ☆

 まずはペットと言ったら餌だね?餌か…。

「ま、マルク…どうしちゃったの?おかしいよ…変だよ、マ」

 喋ったから蹴った。イケナイダロ?お前は犬なんだから。これは"躾"だ。"躾"。言葉は喋ることできないの。そうダロ?
 ガスガスと血を嘔吐するまで何十回も蹴り、プルプルと体を震わせているところで蹴るのをやめた。

「もう一度言うよ?…君は、人の言葉を喋ったらだぁめぇ。犬なんだからワンだけで十分。分かったなら返事!」
「…ぁ゙……ぁ…、…わ……ん……」

 ああ、愉快だ。こりゃ傑作だ。これは僕にとってかなりの快感の肥やしになっちゃうぅ。

 まだまだ足りない。僕は欲張って自分が欲すがままの想像図を頭に描いた。
 羽を広げ、至って普通の犬の餌をとりだし、皿にザララと盛りつけた。

「……………っ…」
「ああ、カービィ、まだ食べちゃだめだよ。今からドレッシングをかけるから、そのあと残さずお召し上がりよ?」

 僕の気の利いた優しい言葉に少しほっとした様子のカービィ、ああ、僕はなんて優しいんだろう。君の喜ぶ顔が何よりも僕の生き甲斐なのサ。

 僕は餌の入った皿を持ち、カービィにかけた鎖をそのあたりの柱に巻き付け、鍵をし、壁の隔てた向こうの部屋に行き、扉を閉めた。
 爪を使い自分の自身を器用に掴み、そのまま自慰に行動を移した。

「……っ、いひ……っ♪」

 徐々に熱と芯を持ち始めるのがわかる。先走りが少しだけ垂れて僕の爪の動きを早くする。エヘエヘエヘ☆
 何で僕は気づかなかったのかなぁ?カービィを思いながらこれをするのがこんなに楽しいなんて、今までこんな楽しいことを知らなかった僕はかなり損をしちゃったよ。

「んん…はっ…アハ…」

 あああ!やばいやばいって。なんかキてるキてる!!無理ぃいっ!!我慢できないよぉ!イク!イくイくイくイくっっ!!!
 僕は餌に向けて自分の白濁の熱い液をぶっかけてやった。…かなりの量だねぇ。
 そしてこれをカービィが食べるのかと想像すると余計笑いがこみ上げてきた。でもここはぐっと堪え、体力を取り戻すためしばらくそこで待機し、餌を片手に部屋を後にした。

 カービィは眠っている。あんまりにも僕の帰りが遅いから退屈になって寝たのだろう。
 ひゃははは♪寝顔がとてもかわいいのサ…。

「…カービィ、起きるのサ…」
「……ン…、……………いぅっ!!」

 目を覚ました君は僕の顔を見るなり驚いた表情で後退りした。
 その反応が気に入らなかったから"躾"をしようかと思った。けど…頭に描いた"躾"をやったりして死んだら楽しくないから退屈で非常につまらないけど止めて、餌を床に何もせず置いた。

「ご飯の時間なのサ。…残さず食べるんだヨ?」

 カービィは怯えながら餌の近くに寄った。カービィは「ドレッシング」のかかっていない部分を手に取り食べた…。

「くおらぁっ!!かぁああびぃ!!!!テメェまた犬らしからぬことをしたなぁあ!何度も言わせんなこのカスがぁあぁあぁああ!!!!」

 違う。こんなことに僕は怒ったんじゃない。
 君が素直に「ドレッシング」のかかった部分を食べなかったから、自分の欲求が満たされなかったんだ。
 僕は羽を鞭のようにカービィの体を叩き、"躾"し直す。

「ヒィイイッ…!!!?マッマルクやめてっ!やめてよぉおぉおおぉおぉおっ!」
「ほぉおらまただあぁあぁああ!お前は犬だっつってんだろぉがぁ!!喋るなって!素直に僕の言うこと聞けぇ!このグズ!ノロマ!
 そうかよ…、僕がちゃんと餌の食わせ方教えてなかったからいけないんだ。な?なら教えてやるよ!」

 僕はカービィの頭を掴み餌に顔をつっこませた。べっちょり白濁の液が顔にまみれ、その姿がよけいに僕を興奮させた。

「ほらほらぁ、ちゃんと手を使わずに食べな?顔に沢山ついちゃったねぇ、舐めなよ。そのままだとイヤなんだろ?」

 爪を離し今にも泣き出しそうなカービィを横目に指導をする。カービィは白濁のそれを舐め、味わったことのない不快感な味に拒絶の声を小さく上げた。

「………………っ…」
「…そうかい、僕の出した飯が食えないっていうのかい?」
「……ぃっ…!……(ガリッ…ぐちぃ)……ぅっ…ひくっ…(カリッ……にちっ…くちぃっ)……」

 カービィは"躾"を恐れてか餌を食べだした。たまに、水を含んで柔くなったような餌の音がした。
 顔の周りも手で撫でるように掬いしゃぶり、ガリガリと音を鳴らしながら餌を喰らい、それは犬そのものの姿そっくりだった。

「…………………、………」
「アハはっ、やっぱりお前はいい子だね?ちゃんと皿を舐めきってるのサ」

 頭をよしよししながらカービィを褒める。
 ご主人様には絶対服従。こりゃあいいもんだ。そう躾りゃなんだって意図のまま。
 あはははははははひは!!!!

「カービィ、大丈夫…。お前はアリみたく悲しい運命は絶対辿りはしない。僕がいればいいのサ。…安心ダロ?」
「…あ……、…ぅ……」
「君を大事にしまっておくよ。この部屋の中にね。僕は常に君のそばにいるから、泣かないで。犬だもん、何もできないよね」

 ほころびかけた笑顔が消え、下を向いてしまった。

 アリがちまちま歩いてる。どこから入ってきたのだろう。アリは我が物顔で道を行く。

 ――あんたにも生る権利はあるのかい?

 ああ、あるさ。












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