小説

□さよなら!
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※5000hitキリリク メタカビの病み系のもの、暗い話





「例えば」

 息を吸い込む音が聞こえた瞬間隣から歌声が聞こえた。

「僕がさ」

 野外なものだから星空がやけに奇麗でちかちか煩いくらいに光って見えた。

「超能力を手に入れて」

 でも月は見えなかった。どこを見回しても白い絵の具が飛び散ったような青ざめた風景しか移らない。

「ずっと先の未来の」

 星が流れていった。まるであのときの赤い絵の具が飛び散ったような残像が
 もう見えない。

「出来事がわかるなら…
 どうする?」

 そこで歌は途切れた。

「そんなもの手にはいるわけないだろう?」

 苦笑しながら言うと酷く苦しそうに笑って歌うのをやめた。

「…なんてさ
 冗談さ」

 作り笑いにしてはバレバレで、口を紡いで闇夜の中何処かに向かう途中。

「君がさ
 僕がさ
 …いや、何でもないんだ」

 二人の距離は不明、ただ一言、彼の呟いた声が聞こえた。



 ***


 ――X0年後、あの平和だった頃と打って変わって世界は"僕の手"で破壊されようとしていた。

 重々しい音を地面に叩きつけ、刃先を君に向ける。

 二つ前の戦で右目は潰れてなくなった。だから僕は代わりに真っ黒なガラス玉をはめ込んだ。その二つの目はとても不釣り合いで、左目ならいつもみたいに開くのに右目は半分くらいで精一杯。
 僕は血に染まるただの獣でしかいなくなった。愛なんて忘れた。仲間なんて忘れた、故郷も帰る場所も何もかも…

 元銀河戦士団は世界を乱す僕を殺そうと刃を幾度も向ける。そのたびに殺した。殺して殺して殺して殺して…、いつしか信じるモノがなくなったことに気づいた。

「カービィ、何故こんなことを…!!」

 仮面被りの世間を恐れたアンタが僕に問いかける。

「何故?君には分からないか。ンなわけないよね?世界革命さ。君はよく言ってたよね、この堕落したプププランドをどーだこーだって
 僕は手を貸したまでだよ。見なよ、この赤い世界を。今までの色とは比べものにならないくらい綺麗に染まったでしょ?喜びな、君はこれを望んだんだろ?」

 大剣を片手で持ち上げ、僕は君に刃先を向けて体についた色ンな奴の赤い汁を舐めた。
 僕は自らの手でこの星を破壊した。
 感情だけで殺しただけだ。

「今までこの星を変える説教を腐るほどしておいて…今更怖くなった?
 自傷もロクに出来ないヘタレな奴だもん、君がいつ寝返って僕の敵になろうったって僕は笑うだけ」
「何故、平和を好んだお前が自ら剣を手に取り戦争に参加した…」
「口先だけのどうしようもない平和主義者に呆れた結果こーなった。僕はあの頃とは違うんだ。考え方だって変わったっておかしくない。言い出しっぺは何をそんなこの世界に魅了されることがあったのだね?」

 問いかけても答える返事はない。呼吸音だけしか聞こえやしない。

「…教えられないならその口はもういらないね?こいつでお前の体、真っ二つに切り裂いてやる!」

 隙をついて僕は大剣を振り上げ、君に刃を振り下ろす。勢いよく降り落ち、地面に刃がめり込んで砂煙が巻き起こる。威力はバツグン。さぁ、どうなった?
 砂煙が風に流されて見えなかった場所が露わになる。そこには彼はいなく、代わりに仮面まるまる一枚がちょうど真ん中で割れて二つに割れている。
 重い剣を引きずりながら横ばらいし、また砂埃をたたせる。辺りをきょろきょろと見回すが気配がない。

「ちぃっ…、どこ行ったぁ?!」
「上だ」
「っ?!」

 剣を両手で持ち上げ、タイミング良く刃が十字にぶつかり合い、何とかガードする。金属と鉄刃の滑稽な音が二人の舞台に耳障りなくらい響く。

「…わざわざ上だと教えてくるたぁ、相変わらず詰めが甘い奴だね。いいのかい?お顔が見えちゃってるよ。
 …にしても残念だったね、僕を殺す最大のチャンスだったというのに…。今の僕と昔の僕は違うんだ。…わかったんならさっさとくたばれぇぇ!」

 片手で持ち直し、振り払うように剣で押し返し、攻撃を仕掛ける。が、なかなかしぶとい。こんな大きくて重い剣の一回一回の重力的攻撃に耐えるとは…。

「…ふっ、まだまだ剣の扱いが下手だな。それも大剣なんか…相当腕を鍛えていないと思うように扱えないだろう」
「…っ、ぼ、僕に説教するな!くそっ、くそくそぉ…!!」

 二歩後ろに下がり、乱れた呼吸を整える。剣を構え、その冷たい表情の君を睨む。
 ふと、先程彼に言われた言葉を脳裏にリプレイさせた。――瞬間、構えていた剣が手から滑るように落ち、ゴトリと音をたてた。

(…え、何?何で落ちた?)

 僕は片手で大剣の柄を掴み、持ち上げ

 ……重い。それもスゴく、先程まで軽々しく持ってたのが嘘みたいに。

「なっ…???!」

 両腕に力を入れてやっと少し持ち上がった。でも振り回すだけの力はそっちに全部もってかれて動かない…。

 僕の前で見据えたように君は剣を納めた。

「くっ…まだ終わっちゃいないっ…剣を出せ!切りたければ切ればいい!」

 再び剣を取り出した。来るか?と思い支えているのでやっとの腕に力を入れる。…すると、取り出した剣を奴は投げ捨ててしまった。僕の言葉を無視し徒歩で近づいてくる。いや、聞いてはいる。

「っ?!くっ…来るなっ!寄るな!」

 刃先の真ん前で立ち止まった。

――手を放せば切り殺せる。

 そのくらい近い位置に奴は居た。

「わかっているだろう」

 何を?

「おまえは私を殺せない。私の言葉で剣を落としたのだから、…もう良いだろう。私は抵抗しない。殺せ。
 それとも…どうする?」

 喧しい。僕は歯を食いしばって手に力を入れた。嫌って程心臓が早く脈打つ。僕は多分………いや、わからない。

 どうすればいいんだろうか。
 選択肢は二つに一つ…。

 僕は…
 僕は…!


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