小説

□ジュウイチジ:ゼロゼロ
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 今日、メタが料理をご馳走してくれるんだとかでアジト(正しくは戦艦バルハートかな)に招待された。

(もしかしてメタの手作りなのかな?なら尚更楽しみだなぁ♪)

 招待された時間は今から3時間後、それまで何して過ごそうかな?
 僕は家から出てそのあたりを散歩していた。すると、そこにシャドーが出歩いていた。僕はシャドーに声をかけた。シャドーは僕の声に反応して、笑顔で返してくれた。

「どうしたの?シャドーがこんな昼間に散歩なんて珍しいねぇ」
「ああ、今日ちょっと野暮用があってな。ちょっと呼ばれたんだ」
「呼ばれた…。あ、もしかしてご馳走のでしょ?」

 僕が笑顔で尋ねてみると、シャドーは「いいや」簡単にスルーして別の用事だと話してくれた。

「今日の夕方…二時間後に、音楽会があってな、それに行く途中なんだ」
「お、音楽?!シャドーが?」
「悪かったなぁ、そういうのが好きそうなガラじゃなくて…」
「ごめんごめん!シャドーは僕の分身みたいなものだから音楽は君も好きだもんね」
「ああ!…おっと、ごめんな、カービィ。ちょっと他にもよ寄らなきゃダメなところあるからもう行かないと。じゃあな!」
「うん!楽しんでおいでよ〜!」

 シャドーは僕に手を振り、西の方へと向かって行った。

 再び歩いていると、楽しそうに道を行くワドルディに会った。

「ワドルディ、どうしたの?なんだか楽しそうだね」
「えへ、今から二時間後に観賞会があるんだ。カービィも行かない?すっごく楽しそうだよ!」
「そうなんだぁ、…でもごめんね。行きたいのはやまやまなんだけど、用事があって行けないんだ。…その観賞会ってやっぱ二時間くらいあるよね?」
「ぇ…っと。チラシには約1時半〜2時間って書いてあるよ。…行けそうにない?」
「うん。残念だけど…」
「そっかぁ。じゃあ、また次に何か面白いイベントがあったら一緒に行こうね」

 僕とワドルディは約束をして「じゃあね」と、別れた。ワドルディはシャドー同様、西に向かって行った。

(今日はやたらとイベント事が多いなぁ…)

 僕は西を見ながらそう思った。

 でもなんで西の方にあるのだろうか?

 別に何処で何があろうと勝手…だが、どうも気掛かりになって仕方がなかった。

(だって、確かあの方向には…)

 そう思いかけた矢先、また誰かが東の方からやってきた。
 次に来たのは何故かバル艦長だった。なんでこんなところにいるのだろうか?

「バル艦長さん…」
「カービィか。…何ヒトの顔をジロジロ見ている。そんなにわしが珍しいか?」
「いや、あの…普段はハルバード…メタナイトの所にいるのに外に出てるなんて珍しいって思っちゃって…」
「ん…まぁ確かに、わしが外を出るのは珍しいかもしれんな。しかし、今日はこれから二時間後にある何かの試写会に行けと命令されてな…。試写会というのだから恐らく映画だと思うんだが、なぜこんなものをわしに見に行けと言ったんだろうか…?」

 なんとなく嫌な予感がした。

「それってもしかして…西に行かなとダメ…?」
「ん、何で知ってるんだ?」

 やはり西…。
 今日だけで音楽会、観賞会、試写会…。しかも全部西で、それに全部二時間後にそれはあるという。

(何かがおかしい)

 僕の思いすごし?そんなわけない…。だって皆イベントの内容以外全て揃っているんだもの。
 もしも僕の思い過ごしだったらアレなので、僕はそのとき、バル艦長を引き留めることなくそのまま見送った。



 時間は飛んで二時間後、僕はそろそろ行った方がいいかな、と思い、アジトの方へ向かい始めた。

 …僕はその瞬間足を止めた。

(だってそっちは…)

 歩きたくはなかった。
 何せそっちは…西だったからだ。

(大丈夫だよ…ただの思い過ごしだ!きっと何もないよ)

 自問自答を幾度と繰り返し、やっと決意を固めて僕は急ぎ足で西へ進みだした。
 特に変わった風景もなく、何か悍ましい光景があるというわけでもない。

(やっぱりただの考えすぎだったんだ)

 もうマイナス思したことは考えないよう、歌を歌いながら歩くことにした。
 不思議と進むにつれ何かおいしそうな匂いが漂ってきた。立ち止まり、何度か嗅いでみる。
 クンクン…。これは…!カレーかな?

 僕は(食べ物に釣られ)走り出す。
 ここまで漂うってことは、案外もうそこにアジトがあるのかな?

 まさしくその通り、アジトはすぐそこにあった。僕は大騒ぎしながらアジトの中に入った。…。しかし、ちょっと気になることがあって僕は騒ぐのをピタリとやめた。

 …恐ろしいくらい静かすぎる。いつもならメタナイツの皆が出迎えて馬鹿騒ぎするなとツッコみを入れてくれるのに…。
 奥から扉の開く音がして僕はそちらに振り向く。

「…!カービィ、もう来ていたのか」
「うん!とっても良い匂いがしてつい急いで来ちゃった。…ダメだった?」
「いや…ダメなわけじゃないんだがその…。
 まだ出来ていないんだ。もう少しここで待っていてくれないか?」
「うん、分かったよ。…ねぇ、他の皆は?今日はいないの?」

 少しメタは黙った後、「ちゃんと皆いるから安心しなさい」と言ってほほ笑んだ。



 少しした後、タライくらいの横幅とポリバケツのように深い大きな入れ物にカレーとご飯がいっぱい入った鍋?をリヤカーで運んできてくれた。

「ぅぁぁあ!すっごい量だね!」
「なるべく具を大量に入れておいた。おかわりならいくらでもあるからいつでも言うんだぞ」
「とってもおいしそうだよぉ!いただきまーす!」

 僕はまず一口、お肉を食べた。
 これは…鶏肉かな…?豚?でも少しコリッとした感じがあるから牛肉かもしれないなぁ。
 よく噛んで飲み込んだあと、メタの方に向いて、美味しい!と言った。

「そうか、気に入ってもらえて何よりだ。
 …これはお前の好きな物を使って作ったんだ」

 僕は口に含んだスプーンを止めた。

「この人参やジャガイモは皆から御裾分けしてもらったんだ。今日貰ったばかりだからとても新鮮だぞ。
 …どうした?」
「ううん、別に!ねぇ、これ、全部メタが作ったの?」
「ああ、私が作った。…嫌か?」
「嫌なことないよ!寧ろ…嬉しい!」

 僕は勢いに任せてそのまま1分もしないうちに一皿平らげた。そして元気よくおかわりを要求すると、メタは優しく笑い、新しく注いで机に置いてくれた。

 バクバク食べる僕を横で眺めるメタは笑顔で僕に聞いてきた。

「旨いか?」
「当たり前だよ。だってメタが作ってくれたんだもん。…それにしても、このカレー…お肉がやたら多いね?」
「…“みんな”は旨いだろ?」

 口に含んだものを飲み込む手前で止めた。
 まさか…そんな…。口を開いて「ソレ」を見る。

「だから言ったろう?『ちゃんと皆いる』と…」

 スプーンを床に落とし、その場で這い蹲って嗚咽を吐いた。でも何も喉の奥からは出なかった。

「何故吐こうとする?お前の好きな友達や仲間、メタナイツの奴らをその身から除外しようというのか?」
「はぁ………っ、はっ……ヴぅっ………!!おげぇ…ゲッ…!」

 どぶっ。どちゅ、ぶく…ぷク、ドぷ、べしゃ………

 やっと出たものは溶けかけてる肉の塊。その酸のきいた臭いと例えようのない嘔吐の色で再び嘔吐した。

「ォぐぇ…!…はぁっ………!っぁ………。
 …メタ…何でこんなこと…」
「…だから言っただろう?このカレーはお前の好きな物で作ったと。その為には何を使えばいいか、何を使えば一番お前が気に入ってくれるか…。…そして導き出したのがこの土地にしかないもので、お前の何より愛する者たちの肉を使えばいいと…!
 どうだ?シャドーも…ワドルディもバルもその中にいたんだ。もうお前とは一心同体。…幸せか?皆、お前の中で生きるんだ」

 ああ、やっぱり…。あの三人はメタに騙されて…死んじゃったんだ。

「これからはお前は安心してこの星を守ることが出来る。それに皆も一緒なんだ。常に傍に居る…。だからほら、食べなさい。ある意味これは皆が一緒になって作った物なんだ」

 何を、どうして、いつ…?メタはこうなっちゃったんだろうか?
 邪気のない瞳で笑いながら僕にそう催促されたら…断れないじゃないか。

 僕はさっき吐いた物をもう一度食べた。吐きそうだったけどこれは皆なんだ。受け止めるしかないんだ…。

「じゃあ、メタ…おかわりくれる?」

 今の僕はきっと疲れ切った表情をしているだろうな。なんとなくわかる。

「どうぞ」

 その中には紛れもなく皆がたくさん詰まってた。僕は食べた。涙ながらに、頑張って必死に食べた。心の中で何度もごめんなさいを呟いた。…皆は僕になっちゃったからきっとこの言葉は届くよね?



 そしてどこかでひっそり…「これで永遠に一緒だ」聞こえたのは…

 誰が言ったのだろう…?







 その言葉を言ったのははたして“皆”なのかそれとも…?

最近調子いいぞ!自分!(撃沈3秒前)



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