どんなに世界に期待しようと世界はきっといつか終わっちゃう。でも、その"いつか"を知ってるのヒトは誰もいない。もしかしたらあたしが空気をうんと吸った瞬間に隕石がどかーん。とか、暑いから海に行こう!としたらあっついマグマがどろどろ〜。とか、寒いからこたつに入って蜜柑を頬張る瞬間大津波がどぱーん。どこにいく目的もなく歩いていたら落雷が! …なんて、ね。あり得ないことが起こる可能性ってのは全否定できない。 だからそうなっていつ死んでも構わないためにも あたしは君に言うことにするよ。 あたしは ずっと 前から 君の ことが * 僕には変わったものが付いていた。 一つは目という映像を映す機能。これは僕にはいらないだろう。 続いて鼻、これも回りの臭いを感知したり空気を吸ったりするあまり必要のない器官。これも要らない。 次に耳。音を聞くだけの何処からどう見ても要らないもの。 そして口。酸素を取り込み、二酸化炭素として排出する絶対的に要らないもの。しかしこれには喋るという機能も付いている。が、話す相手も聞いてくれる相手もいないから要らない。何もかにも要らない。 いっそ削ぎ取っちゃえばいいんだろうけど、そのために使う手なんて要らないと等の昔に捨てちゃった。足も捨てちゃった。 心臓も捨てちゃおうかと悩んでたとき、君は僕の捨てたもの全てを拾って僕に繋ぎ合わせたんだ。 せっかく捨てたのに。って言うと、彼は笑った。 「さっき捨てたもの、もう使ってるじゃない」 騙された! 僕はこれがないとやっぱりだめみたいだ。目がないと君を見られないし耳がないと君の声も聞こえない。鼻がないと君の香りを嗅ぐことができない。口がないと君と喋れない。 腕がないと君を触れない。足がないと君を追いかけられない。 心臓がないと、僕は 「そろそろ帰ろうか」 君が手を伸ばしたのを確認した僕は手を繋ぐことを許された。らしい。 君も僕に言いたいことがあったんでしょ? そうだよ 僕も 君の ことが… 〜世界で一番るるるなお話?〜 「ごめんね」 僕は目の前の少女、アドにそう言った。 明後日、僕とアドはピクニックの予定だった。だけど、その直前で僕は別の子とつい軽はずみで別の予定も立ててしまった。 「僕、アドとの約束をつい忘れてて…だから、あの…大事な友達と遊ぶんだ。あ、でも、アドも一緒に遊びに行けば問題ない…よね?ネ、なら一緒に行こうよ!」 「…ううん、あたしはいいよ。楽しんでおいでよ」 「本当にいいの?」 「うん。いいんだよ」 アドはとっても優しい。僕にその笑顔を向けて頭を撫でてくれた。 でも、決まっていつも怖いセリフがそっとアドの口から発せられるんだ。それは… 「でもさ…、"来ない"かもよ…?」 最初聞いたときは冗談かと思ったんだけど、どうもそれは違うみたいで…。 でも僕はたまたまだと、信じているんだ。 そういえば、最初って何か…全く分からないよね?…教えてあげるよ。 ――これは一ヶ月くらい前のお話。 僕はその日、アドと遊ぶ約束をしていた。…でも…今日みたくそれ以前に他の子と遊ぶ約束もしてしまっていた。 「ごめんね。アドの前に別の子と約束しちゃってたみたいなんだ。だからまた今度遊ぼう?」 「そっかぁ…うん、分かった」 アドはあどけない表情でそう言ってくれてほっとした。でも… 「でもさぁ…"来ない"かもしれないよ?」 「そんなワケないよぉ!ワドルドゥはちゃんと約束は守る子だし。」 「………ふふっ、それもそうだね。じゃあ、あたしは行くね」 そう言ってアドはすぐさま去っていった。 今思えば、なぜあの言葉を不思議に思わなかったのだろう…。 『あたしは行くね』 …どこへ? 本来立場的には僕がそのセリフを言わないとダメなのに…。 そして僕は待ち合わせの場所に行った。…でも、約束の時間をこえても、ワドルドゥが表れることはなかった。 「カーくん」 声がした方を振り向くとアドがいた。 「あれぇ…?まだお友達、着てないんだ?」 「そうみたい。でももうちょっと待つことにするよ」 僕はアドにそう言うと、再びアドはその無垢な笑顔で僕に言った。 「来ないよ。ワドルドゥは」 「…ぇ?」 アドは笑顔だけど、何か…寒気だつような悪寒を感じた。 「だってね、あたし行く途中にワドルドゥにばったり会っちゃって〜。あ、これ伝言なんだけど、今日行けなくなっちゃったんだって。 だけどね…これからもずっと、ずっとカーくんと遊べないんだって」 笑顔で言うアドに僕は不安を幾度も感じた。 「変な冗談はやめなよ。だったらなんでワドルドゥは僕と遊びたくないの?」 「あのね、ワドルドゥね…。 バイバイするんだって だからもうワドルドゥとは会えないの」 深刻そうな顔なんて見せることなくアドはそう僕に言った。何なの?バイバイって。…それって、家に帰ったとは…意味が違うの? そう問いただしたくてもよく分からない圧迫感に押さえつけられ聞くことが出来ない。 「だから…カーくんはあたしと遊ぶの。いいよね?だってワドルドゥは…来ないもん」 何か、確信したセリフだったせいで僕はアドに反抗する暇もなく手を引かれて遊びに行った。 その翌日、僕はお城に行って皆にワドルドゥのことを尋ねた。 でも返ってくる返答はすべて一緒。 「昨日から忽然と姿を消して、どこにもいないんだ」 みんなが嘘を言ってるようにはどうも聞こえなかった。 (アドの言うことは正しかった?でも、偶然かもしれない。…でも、本当に何処に行っちゃったんだろう…) 疑問の固まりがもやもやと心臓の部分に引っかかってるが、もうワドルドゥの事は忘れることにした。 その翌日、ワドルドゥは死体となって僕の前に現れた。警察が言うには殺人らしく、まだ犯人は捕まってないという。刃物で深く刺されて死んだらしい。 「ほらね」 ケラケラと僕の後ろで笑う少女がいた。 「まさか…君が殺したの?」 「何で?あたしは何もしてないよ。 ただ、来ないかも。って言っただけ。」 死体を前にしてクツクツと笑う少女は正気の沙汰じゃないと僕は思った。 でも僕は信じた。アドがこんなバカなことするはずないって。 「僕は信じているからね」 「やだなぁ。あたしは何もしてないって」 その数日後、僕はワドルディと遊ぶ約束をした。比較的ワドルディはワドルドゥに比べて人数も多いし、個別に見分けるにはかなり難しい。 だから僕はアドに言っても良い自信があった。(?) 「僕、今日ワドルディと遊ぶから、アドとは今日遊べないんだ」 「へぇ〜、そうなんだ。…うん。わかった。じゃあね!」 思いっきり行動が怪しかったが、僕は自信に満ち溢れていた。 これなら殺されまい――と。 でも僕は何か間違ったことを考えていたような気がした。…僕は何故彼女が殺してしまうと…決めつけているのだろうか、…と。 何も自信を張ることはない。何かの偶然だと、何故信じようとしないのか。当たり前のように僕のそれは消えかけてしまっていた。 一歩踏み違えば僕は彼女を殺したことにもなってしまうことを…。 (何をバカなことを考えているんだろう) ふるふると体を横に振って疑うような真似をすることをやめた。 (兎に角、待ち合わせ場所に行こう…) 僕と彼の待ち合わせとなる場所、公園に向かって行った。 氷をひやりとくっつけられたような寒気が全身に行き渡った。 「なん…で…?」 「あ」 「僕…言ってなかったよね?ここに来ること…」 「少し遅かったね」 「なぜ…何故君がここにいるの…?」 「カーくん」「アド…」 「やっぱり来なかったね。ワドルディ…☆」 彼女はどうやって何千といるワドルディから僕と遊ぶ約束をしたワドルディを“来ないように”させたんだろう?そもそもどうやってここを…? 「ねぇ、カーくん。あたしと遊ぼうよ」 ナイフ片手にアドは笑いながら僕にそう誘ってくる。 嫌だ。 「あたしと遊ぼうよ。あたし、カーくんと遊びたいな。これからもずっとずっと。何ならあたしとカーくんの間を引き裂く奴ら皆来ないようにさせちゃおうか!いいね、それ…! ねぇ、カーくん。そんなに黙ってたらあたし、つまんないよ。ネ、お願い…?」 「ぅ、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 徐々に僕に近寄ってきていたアドを押しのけて僕は逃げ出した。 嘘だと信じたかった。でもそれは叶わなかった。彼女が自白さえしなければ、僕はもう少し、彼女のしたことに目を瞑っていたかもしれない。 僕がどんなに走ってもうっすら笑みを浮かべて僕を小走りで追う少女に恐怖を感じた。 「カーくん。何処へ行くの?一緒に遊ばないの?」 それでもずっと何かの赤い粘液が付いた刃物を握ったままの姿で付いてくるものだから余計に恐ろしくて…。 まさか、次は僕を殺す気なのだろうか? そんな被害妄想を抱き、余計に走るのを止める気はなくなった。 「ねぇ、もしかしてまた誰かと遊ぶ約束、してるの?あたしはそんなの許さないから!今度こそカーくんとあたしが遊ぶって…、なんでカーくん、あたしと遊ぶのは断ってばっかりで、皆の方を優先するの?ずるいよそんなの、不公平だよ!なんか言ってよ!じゃないとその次の子もカーくんの所に来られないようにしてあげるよ?」 そんな約束誰ともしてない!執拗に追いかけてくるな! …言いたいことも言えない僕の弱い所に唇を噛み僕はその日何とかアドを撒いて逃げることが出来た。 そして話は冒頭の方へ戻る。 今回は来ないはずがない。名前も口にしてないし、場所だって言ってない。 「いいや、来るよ」 「来ないよ」 「来る!」 「…カーくん、そろそろ現実から目を背くのをやめなよ?」 やけにニヤニヤと口角を上げた少女は言った。 「何のこと…?」 「あたしね、カーくんをずっと見てたんだよ。家に帰るところも、遊びに行くところも、…メタくんの所へ行くところも…ね☆」 まるでそこだけ強調させるようにアドは言った。僕は逃げ出したい衝動を抑え、両手を後ろに隠したままのアドを見た。 「うん。もうメタ君は来ないって、分かったみたいだね」 「嘘だ…」 「大丈夫。あたしがカーくんとずっと遊んであげる」 徐々に迫る少女と同時に僕は後退りしながら、傍ら少女は左腕を動かし、べっとり赤く染まった刃物を顔の近くに持ってきてべろりと刃先を舐めた。 「嘘に決まってる…」 「これからも、ずぅっと…ずぅっと…」 右手のそれは紛れもない、あのヒトの仮面で…―― 「一緒に遊ぼうよ?」 了 グロくはないがホラーっぽくなってしまった。後悔。していますとも…。 謝るしかない。对不起 |