Song

□気付かれないように
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街の中一人で歩きながら帰路を歩く



いつもは電車で帰るのに




今日は歩きたい気分だった





何かあるのかな?



















「なまえ?」






突然背後であたしの名前を呼ばれた



『え?』





この声を忘れたことはない













『誠司?』



「他に誰がいんねん笑」




くしゃとあたしの頭を撫でた




『ふふ、そうだけど一段と大人っぽくなったよね』

「そかな?」








久しぶりに逢った誠司は照れ隠しに髪を触った




あの時と変わらない仕草




よみがえってくる思い出が




溢れぬ様に大人ぶって














誠司とは高校の時から付き合って



すごい好きでずっと傍にいれることが嬉しくて





誠司だって言葉には出さなかったけど態度から大切にしてくれてるって分かってた




でもね




毎日スタジオでドラムの練習してたり





メジャーデビューが近づくたびに



会えなくなって寂しさが限界を超えて




今の誠司にはあたしは必要ないって考えて




東京に上京する時にあたしから別れを告げた



















「なまえ?」

『ん?』

「ぼーとして大丈夫?」

『ううん、昔の事思い出してた』

「あぁ」





ちょっと歩かん?と誠司が言うから二人で歩き出した




声をきいて泣きそうになるけど



何故だか解らない



もうあの頃の関係に戻れない悲しみなのか



出逢えた喜びなのか




あたしはあの時自分から別れた事を後悔して




何度も想い焦がしてたの…





ふと誠司の左手を見た




『…っ』





左手の薬指に輝く物




きっと知らないことばかりだと




誠司の指輪に戸惑った




別にこのまま誠司と並んで歩ける、それだけで充分じゃない




そう言い聞かせる手に爪の跡




色んな事聞きたかった


今の事



『最近どう?忙しいんじゃない?』

「まぁ雑誌の撮影とか慣れないこともしてる笑」

『今でもスタジオこもってたり?』

「おん笑、休みの日でもスタジオこもってんねん」

『あははは!変わってないね』






今もこうして笑い合って話す事が嬉しい






けどまだ聞きたい事はある








『ねぇ誠司?』

「ん?」







『彼女、できたの?』





勇気を出して笑って問いかけた




「おん」




聞きたくなかった返事




『…そっか




今の彼女の事どう思ってるの?』




「ん、すごい好きやで」




そう言って照れて髪を触る





昔の誠司を今見た





昔もあたしに「好き」だと言った時と一緒だった




『っごめん、あたしそろそろ帰らなきゃ…』

「ほんまに?」

『うん、残ってる仕事あるの』

「そっか…、送るで?家どこなん?」

『ううん、大丈夫
また会えたらいいね』

「そやな、今度ライブ来てや」

『うんっ、じゃぁ、また』









誠司と別れて走ってたら涙が溢れた





『…っう………』




あの時胸に刺さる程味わった



消えぬ誠司と別れた後悔




ちゃんと飲み込んできたはずよ





なのに辛くて涙が溢れてくる



出逢って別れた分


あたしだって前を向いてゆける




気付かないように


気付かれないように…

















気付かれないように





End。。。

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