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□Boss & Junior -after story-
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「みょうじー」



『はい』



「この資料なんやけど…」




『あぁ、これならもう作ってあります。あとで持ってきますね』




「おん、ありがとう」




あたしがデスクに戻る前に笑顔でお礼を言ってくれた山村さん。



今のあたしはきっと顔が赤いかもしれない。




笑顔でお礼言われたぐらいで全くあたしは…。




「お疲れ、右腕ちゃん!」




デスクに戻ると隣に座ってる同期の美沙がニヤニヤしてた。





『もう、その名前で呼ばないでよー』



「いいじゃん、“右腕ちゃん”って!」







山村さんと残業したあの日以来、山村さんはあたしに色んな仕事を頼んでくれてる。
今では仕事の半分をあたしに任せてくれらぐらい。それを見た周りの人は“所長の右腕”と呼び始め、今は“右腕さん”とか“右腕ちゃん”と呼んでくる。(彼のファンである女子社員たちからは睨まれてるけど)




「まさかあの日、所長と抜け出すとはねぇ」



『その言い方止めてよね』




「で、ご飯とか行ってるの?」




『…ちょくちょく行ってる』




「名無しさんが所長のことをねぇ(ニヤニヤ)」




『その顔気持ち悪いよ、美沙』




「失礼な!笑」







あの日以来あたしは山村さんに惹かれてる。つまりは想いを寄せている。まさか自分がモテモテな所長を好きになってしまうなんて思わなかった。




ご飯は一緒に行くけどそこから進歩はなく山村さんがあたしのことをどう思ってるなんて分からない。





『何だかなぁ…』



「お、珍しく悩んどるね。みょうじ」




『杉くん!』






後ろからひょこっと顔を出したのは同期の杉くん。





杉くんはよく美沙と3人で同期会とかする。
話やすくて杉くんも同じ関西人(出身は兵庫なんだって)だから何でも話してしまう。
仲が良い同期の1人。







『悩んでないよ〜』



「杉くん聞いてよ、この子ったらさぁ」



「おん、なになに?」




『だー!!美沙!』




「みょうじ、そこまで言われたら気になるやんか笑」



『今回は言えない!』




「えー?言ったら楽になるで?」




『うっ…』





つい喋りそうになる。




必死に口を開けないように耐えてたら杉くんの頭にパーンっと何かで叩かれた音がした。




「おい、杉」



「あ!先輩」




杉くんの頭を叩いたのは山村さんだった。(ちなみに叩いた物は資料を丸めたもの)




「こんなとこで油打ってへんで仕事しろや。ほら、これ資料」



「はーい、ありがとうございます」




杉くんが素直に去る際に山村さんに何かを呟けば赤くなってまた叩いてた。




「(なんて言ったんだろうね?)」




『(うーん、分かんない)』




「みょうじ」



『は、はい』



美沙とコソコソ話してたら突然呼ばれた。




「さっき言ってた資料もらってええ?」




『あ、はい。どうぞ』




「ありがと。あとちょっと今ええ?」




『はい、大丈夫です』




そう返事をすればちょいちょいと手で呼んでた。
















『で、どうしました?』





着いた場所は誰も使ってない会議室。




「いや、あのさ」



『はい』



「杉とは仲ええの?」




『え?』




歯切れが悪い先輩が放った言葉は杉くんのことだった。




『えぇ、まぁ。仲良い方ですかね。良く飲み行ったりしますし』



「え!?」




驚いた表情をする山村さん。今日はどうしたんだろうか。




「…杉と付き合ってるん?」




『へ!?』




とんでもない爆弾を落とされた。




あたしが杉くんと付き合うなんて…





『ないです!!付き合ってません!』




思いっきり否定したらまた笑われてしまった。



「そんな否定せんでも笑」



『だって!あたしが好きなのは…!』




やってしまった。
思わず口を滑らせてしまった。





「…好きなのは?」





山村さんが真っ直ぐな瞳であたしを見つめてくる。きっと言い逃げができない。




『……山村さん、です』



恥ずかしくて目を合わすことができなかった。




「みょうじ、こっち向いてくれへん?」




『いやです。きっと酷い顔してますから…』




「ええから」





ぐいっとあたしの頬に両手で挟んで山村さんの方に向いた。




距離が近くなる。



「それ…ほんま?」



『…ほんまです』




あたしがそう言えばはぁーっとため息ついて頬を包んでた両手が今度はあたしの体を包んだ。




「…良かったぁ。杉と仲よさそうやったし付き合ってたらどうしようとか変なこと考えてまうし…そしたらいてもたってもいられんくて…」




それって…




『嫉妬、してくれたんですか…?』




あたしが聞けばぎゅっと強く握って小さく「おん」っと呟いた。




「嫉妬した。みょうじが好きやから。」





『ふふっ』



「なんで笑うねん笑」




『山村さんの気持ちが知れて、同じ気持ちで嬉しいんです』





その言葉を聞けて嬉しいのと安心したので思わず笑ってしまった。




好きな人と同じ気持ちでいられるなんてこんなに嬉しかったんだなぁ。




「名無しさんって呼んでええ?」



『どうぞ?笑』



「名無しさん」



『はい笑』



「好きや」



『あたしも好きです。…隆太さん』







それを聞いた隆太さんは顔を赤くして「それ反則や」って呟いてあたしにそっと触れるだけのキスをした。













あなたこそ反則です。
(…ずるい。もっと好きになるじゃないですか)
(それはお互い様。俺かてもっと好きになる)
(ふふ、そーですね)





End。。。
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