ピエロと電脳世界
□10 昔ばなしをしよう
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『ただいま〜』
「あ、兄さん!!おかえりなさい!!」
兄さんが仕事から帰ってきた。兄さんはお昼ご飯を食べたあと、おじいさんに呼ばれたから、科学省ってところに行っちゃったんだ。
『カンナ、ただいま。あの子はおきたか?』
「うんっ!!エシェロス〜!!」
『あ、はい!!』
『エシェロス?』
「この子の名前だよ!わたしがつけたの!!」
『名前が無かったのか?』
『え?!あ、あの・・・・・・その・・・・・・』
「わたしのナビだって印だよ!!」
『!!』
『・・・・・・・・・・・・・そうか!お前、カンナのナビになったんだな!俺はフォルテ。よろしくな、エシェロス!!』
『!!・・・・・・・・よろしくお願いします!!フォルテさん!!』
「エシェロス、フォルテ兄さんはわたしのお兄さんだよ?だからエシェロスのお兄さんでもあるの!!だから“さん”なんてつけなくったって、兄さんって呼べばいいんだよ!!」
『え?で、でも・・・・・』
『エシェロスはカンナのナビなんだろ?だったら俺の妹だ!“さん”なんて他人行儀なこと言うなよ』
「ね?」
『・・・・・・・・・・フォルテ、兄さん・・・・・?』
『なんだ?』
『・・・・・・・・・兄さん!!カンナちゃん、兄さん!!よろしくお願いします!!!』
「うん!!」
『あぁ!!』
エシェロスがわたしのナビになってから1年が経った。
最初はわたわたしてたエシェロスも大分慣れたようで、今では敬語もとれた。
兄さんとエシェロスと、時々お爺さんと。4人で過ごした1年はとても楽しかった。
エシェロスや兄さんとお買い物に行ったり、インターネットを徘徊したり。
今日もわたしと兄さんとエシェロスで遊ぶ約束をした。
「兄さ〜ん、エシェロス〜。あっそぼ〜!!」
『うん!!』
『あぁ』
実体化した兄さんとエシェロスがわたしのところへ来る。
と、そのとき
―――――――――ピピピピ、ピピピピッ
「ん?」
『メールか?』
兄さんがパソコンのメールを開く。
メールを読む兄さんの顔がだんだん険しくなる。どうしたのかな?
「兄さん、誰から?」
『・・・・・・・・・・科学省だ。すまない、カンナ。呼ばれたから行ってくる。遊ぶのは帰ってきてからな』
「え?あ・・・・・・うん」
兄さんは実体化を解いてパソコンに戻る。
「兄さん!」
『ん?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・いや、なんでもないよ。いってらっしゃい・・・・・」
『?あぁ』
兄さんは科学省へ出かけた。
兄さんのいなくなったパソコンの画面を見つめる。
『カンナちゃん?・・・・・どうしたの?』
「・・・・・・・うん、ちょっとね」
悪い予感がするんだ。
ただの勘なんだけど。
わたしの勘は、よくあたるから。
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