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□届かないくらいがちょうどいい。
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「ふぅ…」
もう日課みたいになっていた。この景色を見るのも、あなたを見るのも。
ここは青春学園校舎2階一番西側の教室。もう今は放課後で、クラスメートは部活にいったり帰ったりで1人もいない。じゃあ何故私はいるのかって?
それはもちろん勉強を…ってそんなのは建前で……………………………
実はテニスコートを見てたりする。
そう、私の思い人、越前リョーマを、
………見てたりする。
いつから好きになったかなんて覚えてない。気がついたら好きだった。それから数ヶ月、私は毎日ここからテニスコートを見てる。
テニスコートからは、毎日のように女生徒たちの黄色い声が聞こえてくるが気にはならない。だってあの人は私の彼じゃないし、嫉妬は嫌いだ。
それに……………
"恋は、届かないくらいがちょうどいい。"
今日もテニス部が終わるのを見届けてから教室を出た。
いつもと何も変わらない。
そう、思っていた…………
「 上原 ?」
体が硬直するのが分かった。
誰か、なんて考える必要はなかった。
だってあなたは、私の………
「っっ、ど、どうしてここにいるのっ…越前くん……………っ、」
リョ「どうしてって…ここ、俺のクラスだし。まぁ、忘れ物とりにきたんだけど。」
「…そう。」
いざ本人を目の前にすると何も言えなくなる自分が恨めしかった。
リョ「 上原 はさ、なんでいつも最後まで残ってんの?部活、入ってないでしょ」
「…う、うん。まぁ、勉強…かな」
リョ「ふぅん…」
私は気まずくなって、足早に教室を出ようとした。
リョ「 …待って。」
「…?!!/////」
突然 彼に腕を捕まれた。
当然私の頭では理解不能。
「えっ…え、え?! な、何?」
リョ「はぁ…驚きすぎ。部活終わってるし、一緒に帰らない?って言おうとしたんだけど…あぁ、もしかして友達と帰るの?」
「へ………?………あ、ううん!1人、1人だよっ!」
リョ「そ。じゃ、行こ」
階段を2人て降りる。
心臓の音が怖いくらいに五月蝿い。
もちろん、愛しの彼と一緒というのが理由なのだが、それを異常にかりたてているのが………これ。
「あの…えっと、越前くん…?」
リョ「何?」
「この手は…いつになったら離してくれるの?」
そう、先程教室で捕まれた腕は現在進行形で捕まれているのだ。
リョ「………嫌なわけ?」
階段の踊り場で彼は足を止める。
そして振り返り、真っ直ぐに私の目を見る。美しく整った顔で見つめられて赤面するな、というほうが無理だ。
「っっ////// そ、それは……っ」
リョ「クスッ ねぇ、嫌なの?」
意味ありげに笑う彼は、本当に意地悪だ。私の答えか決まっているのを知っている…
「嫌……じゃ…ない、でっ?!」
私が言い終わらないうちに、彼は私の腕を引っ張った。正確には引き寄せた。
彼の顔が目の前にある。
きっといま、私の顔は真っ赤なのだろう。
リョ「…じゃあさ、俺のこと、好き?」
「………!!!! っ/////」
また真っ直ぐな瞳でこっちを見る彼。
今すぐ顔を覆い隠してしまいたい、でも私は、彼から目が離せなかった…
「わっ、私、は………」
少し喋っただけで息が切れた。
それを楽しそうな微笑みで見つめる彼………
「……越前くんのことが…………
…好kッッ!///」
言い終わる前に、彼に唇を塞がれた。
ほんの数秒のものだったけど、息が上がっていた私が酸素を失うには充分な時間だった。
「ふっ…はぁ、はぁ…………」
リョ「俺も……」
「…?」
リョ「俺も、好きだよ、 えりか 」
恋は届かないくらいがちょうどいい…
そう言ったのは、私だ。
でも、届かない恋なんて、無いのかもしれない。
それがどんな形であれ。
→おまけ
「実はさ、俺知ってたんだよね。」
「え?」
「アンタがテニスコート毎日見てるの。」
「っ!そ、そうだったの?!」
「ボソッ(まぁ、最初は不二先輩を見てるんだと思ってたけど)…うん。」
「………えっと、聞いてもいい?越前くんは…いつから私を好きだったの?」
「……………秘密。」
「えぇっ!気になるよぉ…」
「…また今度…ね。」
《言えねーだろ……入学式で一目惚れだった、なんて。》
fin.●●●●