My Diary Life

□6日目
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「ぅのええぇぇええッ!!!!??」

「田中君うるさいです」

「あ、ごめ……じゃなくて!え!?」



みなさんお久しぶりです、こちらは五月中旬になりました。
足の怪我も治ってクラスメイトとの中も授業も今のところ中学校生活良好な沢田日和です。



「やっや、山本とメアド交換!?」

「はい」

「しかもお嬢の友人フォルダの一番!?」

「…まあ」

「フツーオレが一番最初っしょ!」

「知らねーですよ」

「口悪ッ!」



ブツブツと文句を言い始める田中君はどうやら自分が一番にフォルダに入りたかったようで。
というか携帯を買ったという事実すら数週間たってやっと気づいたんだから無理に決まっているのに。



「あ、そうだ。笹川と黒川は!?まだだよな?」

「京子と花ですか?いえ、山本君と会った休み明けにすぐ交換しましたけど」

「え」

「そのときあなたもいましたよ?」



*****



「これでいつでも連絡取れるね!」

「はい」

「今度予定が合ったら遊びに行こうよ、私オススメのお店あるからさ」

「花のオススメですか?なんだか大人っぽそうですね」



最近では週二回の割合で一緒に食べていて、一回は私がA組に。
一回は京子と花がB組に、というのが暗黙の了解だった。

その日の昼休みは私がA組に行って花と京子とお昼を一緒にしていたのだ。



「今のトコ誰が登録されてんの?」

「え?母さんと綱吉君と……えと、」

「ん?」

「…や、山本君、です」

「山本!?って、ウチのクラスの山本のこと!?」

「ちょっシーッ!シーッ!声大きいですってば」



周りの人は誰も気づいていないようだ…ああ、一安心。

彼は確かに優しい人だけど見知らぬ女子にホイホイメアドを渡すほど能天気ではないらしい。
つまり、多少の警戒心を持っているためメアドを知らない女子の方が多いようなのだ。

だからもしも山本君のファンに聴かれでもして「メアドを教えて」なんて言われたらたまったものじゃない。


「え!?……そっかぁ、山本君が」

「へぇ意外。日和って山本みたいなヤツがタイプなんだ」

「違いますよ、あくまでお友達ですってば!恋愛とか、考えたことないですし」

「…もしかして家族以外の一番って山本だったり?」

「え?ええ、まあ。」

「そうなの?…残念。私たちが日和ちゃんのハジメテ貰えると思ったのになぁ」


「「…………。」」


「なんちゃって!でも私たくさんメールするからね!」

「あ、えと…はい」



思わず、動きを止めてしまった

いえ、その、そういう考えをしてしまうのはいけないと分かってはいるんですけど…私も一応健全な女子中学生ですし



「あ、あの花……京子のあの言い方は、その、他意はないんですよね?」

「た、たぶんね。あの子ってそーいう知識なさそうだから、ああいった意味はないはず、だけど」

「ですよね…なんだか京子の純粋さに申し訳なくなってきちゃいます…」

「わからなくはないわね」



どうか京子はそのまま純粋で居て欲しい

切なる願いを口にせず祈っているとその日のお昼休み終了の鐘が鳴ってしまった。


「あ…」

「次、日和は移動だっけ?」



正直二人とはなれるのが惜しい。

でも邪魔者というものはチャイム以外にもやってくるもので、



「おっじょぉーっ!!」



「…バカですかアイツは」

「ほら、自称相棒が迎えに来たわよ。行ってやんな」


そう、この時に田中君が来たのだ。

ご丁寧に私の教材全て持って…。

というか勝手に机漁ったのか。いや、ありがたいんですけど、ね。



「遅れたら大変だもんね」

「お弁当の包みは後で取りに来なよ、預かっておくから」

「名残惜しいですけど、すみません。じゃあまた」



田中君がさっきからお嬢、お嬢と連呼しているおかげでこの呼称に慣れていないA組の面々からかなりの注目を受けた。


ああ、恥ずかしい…!ちらりと視線をどっかにやると丁度綱吉君が。
苦笑いしている綱吉君を見て、同情されているんだなぁ…と少し心が痛くなった。

小さく手を振れば綱吉君も返してくれて、私はちょっとの満足感と目の前の男へ対する怒りを胸に右手をピンと伸ばした。




「お嬢、置いてっちゃうぞォイッタァッ!!?」

「すみません、手が滑りました」

「手刀体勢の手が!!?どうやって!?」

「田中死ね」

「ヒドッ!」




ギャイギャイとA組の教室から去っていった私たち。
そして、私は知らなかった。そんな私たちをじっと見つめながらクスリと笑って、


「ふふふっ、いーなぁ山本君も田中君も……羨ましくて、ヤキモチ妬いちゃう。

日和ちゃんのこと、ホントに奪られちゃったらどうしようかな」


とクラスで振りまく天使のような笑みとは打って変わって、まるで小悪魔のような笑みを浮かべていたことを。



「(そーいや京子、昔っから気に入ったものとか好きなものには結構執着してた気が…)」


そして花が苦笑いしながら私に手を合わせていたことも、勿論知るはずがなかった。
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