企画専用
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いつからだろう、キッドが居なくちゃダメになったのは、キッドの一番じゃなくちゃダメになったのは。
「キッド、そろそろ行かなくちゃなんじゃない?」
「あ゛ー…そうだな、また予定空いたら連絡する」
キッドにたくさんの彼女がいるのは知ってる。
自分もきっとその"たくさん"の中のひとりなんだろう。
あたしにもたくさんの彼氏が居たけど、最近は全部手を切った、理由は簡単、キッドがあたしの一番になったから。
「お前はいいよな」
「何で?」
「"一番にして"だの、"行かないで"だの、めんどくさくねぇから」
「…へえ、そっか!」
キッドは知らない。あたしがキッド以外の男の子と手を切ったのも、強そうにみえてあたしの心が脆いことも、本当は、他の女の子みたいに、わがまま言いたい事も。あたしの事、何も知らない。わかってない。
「…じゃ、俺行くわ」
「うん、ばいばい」
キッドは"またな"は言わない。だからあたしも"またね"って言わない。
キッドが出ていった部屋は何でかすごく広く感じた。
「今度はいつ、かな…」
あたしからは連絡しない、断られたりしたらかっこわるくて嫌だし、他の女の子と居た時とかだったら向こうに悪い。
いっその事、やめれたらいいのに。キッドはあたしを楽な女としか思ってない、こんな惨めな恋愛あたしには合わないのに、
「なーんて…終わりにできたら、こんなに悩んでないよね」
嘲るように呟いた独り言はひとりぼっちの部屋に消えた。
泡葬
全部、傷つくのがこわい、弱虫の言い訳。
20100309
「弱虫」様に提出!