It's impossible!!√O

□destroy at village
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【オビトside】
「……。」
來の部屋に来て約一週間が経とうとしていた。
オレは本格的に頭を抱えたくなった。
待て、何でこいつこんなに無防備なんだ。
目の前でぐうぐうと呑気に眠り続ける來に顔をしかめる。
何なんだこいつ。そろそろオレも勘違いするぞ。
なんだ、なんなんだ。
何でこんなに、イライラするんだ。
「(……ん?)」
オレはそこまで考えて自分の思考に待ったをかけた。
イライラする?オレが?……こいつに?
何で。
脳裏に昼間見た光景がやけにくっきりと思い起こされた。
≪『ほんと、あなたといると楽しいです』≫
そう確かに言った。
來はターゲットの男と話している中でそんなことを、確かに言った。
いつもオレに向けるような心から楽しそうな時のあの笑顔で。
そう、あれを見てからだ。
こんなにも、……?
「……くそ」






「……ねえ、來ちゃん?」
『はい?』
來は隣で視線を忙しなく動かす男に団子を頬張りながら顔を向けた。団子うめえ。
「もし……もしも、だよ。僕が君のこと、好きだって言ったら、困るかな……?」
『好、き?』
きょとん、とおうむ返ししながら來は首を傾げた。
『(この男は、わたしを好きだと言ったのか)』
「や、やっぱり困る……よね……?」
『え?ん……っと……よく、わからない、です。困ることではないのでは?』
「ええ?ほ、ほんと!?ほんとに!?」
そっと小さく、はにかんだようにも困ったようにも見える笑顔を浮かべた來に忍び寄った影が來の体に腕を巻いた。
「來さんみーっけ」
『っ!?』
びっくう、と肩が大きく跳ねた。
『えっ、あ……先ぱ……?(な、何でトビがここに?)』
來が目を小さく見開いて驚いていればトビは來を抱いて立ち上がった。
「いやー、偶然っていうか?あー、運命とも言い変えられるかもしれませんねー♪」
『(え?……もしかして、ずっと、尾けられてた……?)』
「だ、誰なの?君……」
驚いた男にオレは來の体に腕を巻いたまま(声だけは)やたらにこやかに、
「ただの、先輩ッスよ」
と言った。
男は男でやたら納得がいったように、
「あ……彼が……」
とだけ呟くと小さく寂しそうに笑って席を立った。
『あ……』
追いかけようとした來だがオレは腕を離そうとしない。
ぐぐぐっ
『え、あの、先輩……?』
「……。」
『あ、あの、先輩?あの、……えっ、と、……その……あの……』
「……良いから行きますよ」
『え?どこに』
「アジトッスよ、当たり前でしょ」
『で、でも』
「何すか」
『(えっ、怒ってる?え、何で?)』
「別に、怒ってませんよ」
『え、いや、あの』
「そんなにあの男の傍に居たいんすか」
『何でですか?』
「オレが質問してるんスけど」
『別にそんなんじゃないです!……ですが、まだ、わたしの……仕事は……』
「いいッス。オレが殺っとくんで」
『えっ!?な、ちょっと待って下さい!』
「何すか」
『あの人は白です!殺す必要は……』
「あの男を庇うつもりッスか?」
『……先輩』
「何すか」
『なんか……おかしいですよ……』
「……え?」
『だって、その……何か、違います。……怒ってない、んですよね……?』
「当たり前でしょ。何でオレが……」
『じゃあ、何でなんですか?……何をそんなに……あの男にこだわって……、!まさか……』
「?」
『あっ……いえ……その……』
來はおろ、と視線をさ迷わせた。
「(……何だろう、この嫌な予感は)」
『う、馬に蹴られて死んできます!ごめんなさい!』
「!?」
じたばたともがく來だが抱える手の力を緩めたりはしない。
「まっ、ストップストップ!」
『ぁ、うぅ……!』
「な、何でそんな必死に……!」
『だ、だって……!』
様子がおかしい。
來の震える声で來の顔を見た。
「……え、ちょ、何でそんな耳真っ赤なんすか……?」
『は、離して下さい……!お願いなんで……!』
オロオロと視線をさ迷わせる來にますます首を傾げた。
「じゃあ落ち着いて僕とお話しして下さい」
『わかったんでとにかく離して下さい……!』
「な、なんで……?え、そんな嫌ッスか、オレのこと……」
『ちがっ!手……!手が……!』
ん?
「手……?」
そういえばやけに柔らかい。
「(……いや、まさか、な)」
そろそろと視線を下げれば思いっきり來の胸部を掴んでいる自分の左手。
ちゃんと見るとご丁寧に來の右胸を完全に鷲掴んじゃってしまっている。
「はわぁぁぁあっ!?!?」
思わず悲鳴を上げ手を戻すと頬を赤らめている來。
「その、わざとじゃなくて……!い、いいいいつから……!」
『一番初めからです!』
「ひえっ……」
『だっ、だから離してって言ったのにぃ……!』
「(かわっ……、?可愛、い……?)」
『はっ……!す、すみません……!今ならまだ間に合うかも……!』
「は?何がッスか?」
『へ?先輩、あの男の人(ターゲット)に一目惚れしたとかじゃ、「は?(低音)」ぴっ!?』
「んー?僕よく聞き取れなかったんすけどお?今、僕のことかなり誤解しませんでしたあ?」
『あだだだだだぁっ!?こめかみゴリゴリしないで下さいよぉぉぉぉお!?』
「まったく……どういうつもりなんスか?僕が居なかったら多分今ごろ來さん……」
きっと……、と言葉を濁したが來は痛むこめかみを抑えるばかりで聞いていない。
『ひいん……ひどい……こちとら嫁入り前のおなごですよ……よよよ……ぴえんです……』
「ちょっと、聞いてます!?オレ真剣に話してるんすけど!?」
『き、聞いてますよぉ……』
「大体僕に対してもそうッスけど全っっっ然警戒してない!なんでそんな無防備なんすか!」
『え、いや、その』
「ほんと!僕は自制できますよ!そりゃね!僕ですから!でもオレじゃなくてデイダラとか飛段とかだったら……!」
『(ん?呼び捨て……?)で、でも……』
「でもじゃない!」
『は、はいっ!』
姿勢を正した來にオレは仁王立ちのまま盛大にため息をついた。
「何回も言ってますよね?オレも男なんです。……來さん、別に体で言い聞かされたくないでしょ?」
『その時は蹴り上げるんで大丈夫ですー』
「ひえっ……じゃなくて!」
『あれ??』
「……もう知らないッス」
『えー?知らないとか言わないで教えて下さいよ、先輩!』
ふひひwwwと不気味な笑い声を上げて脇腹を突く來にそっぽを向く。
ツンツンするな、くすぐったい。そしてそんなキモい声どっから出してんだ。
「もう知らない!」
『やだやだやだぁ!先輩のいじわる!いけず!セクハラ!』
「それ洒落になんないでやめてもらっていいッスか」
『えー?どうしよっかなー?』
ニマニマと笑う來。完全にからかわれている。
「じゃあ僕に仕返しして下さい。そうすればチャラでしょ?」
『……ん!?』
「(いや、何言ってんだオレ……ただの変態かよ……來のしつけにはいいだろうがそれでも何言ってんだオレ)」
それもセクハラとかわかってないんだろうか、オレ。まあいっか。
『え、え、え』
めっさ挙動不審な來の手を掴む。
『あ、う』
「なに震えてるんすか?ほらほら」
『ちっが……!馬鹿なんですか!?そんなん無理に決まってるでしょうが!?』
「だってこうでもしないとまたセクハラセクハラ言うでしょー?触んないんスかー?貴重ですよー、僕の雄っぱい」
仮面の中は真顔で(むしろ目は死んでいたと思う)、オレは來の手を引く。
『も、もう言いません!てか事故だったし自分は気にしてません!だからもう先輩ももう忘れましょ?ねっ!?』
「えー?忘れられるかなー」
『……え?先輩?』
「はい」
『……もしかして……童貞?』
ゴンッ
『あっだぁっ!?』
「何か言いました?」
『まさか図ぼ、 「 何 か 言 い ま し た ? ^ ^ 」 やーん先輩怖ーい』
「女の子がそんな言葉言うんじゃありません!」
『女子同士とかもかなり下ネタ率高かったんですけどね。やっぱりダメです?』
「ダメです」
『なら先輩もそれ系の話しないで下さいね』
「はい、質問です」
『なんでしょう』
「來さんにセクハラされてもオレ何もしちゃいけませんか」
『そもそも自分もそんなことしないんで安心して下さい』
「それ十数秒前の自分見て言えます?」
『だ、だってそんな反応されるとか思ってなくて……つい』
「出来心って怖いッスね!?」
『女心と秋の空って奴ですかねー?』
「馬鹿なことは言わないの」
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