It's impossible!!√O

□You don't have to cry any more.
5ページ/5ページ

木の葉を見てからアジトに戻るとすぐに昔のわたしはうとうととし始めた。
『……きょうは、いちにち……ありがとう、ございました』
『気にしないの。……ゆっくり休んで、明日も元気にがんばってね』
何となく、明日、わたしが目を覚ましたら元の世界に戻ってるんじゃないか。
そう思ってわたしは昔のわたしの頭を撫でながら言った。
『……これから辛いこともたくさんあるかもしれないけど……乗り越えたらいつか、そうでも無かったって笑えるようになるからさ。少しでいい。踏ん張れよ』
『……はい……わたし、つよく……』
『……。』
寝息を立て始めた小さいわたしを見ていたわたしの顔は本当に、醜かっただろう。
あぁ、こんなこと、馬鹿げている。
「……大丈夫か」
頭に手が乗った。
『あ……ありが、とう……』
やっぱり君はわたしのことをよく見てくれている。
「急に泣きながら礼なんて言われたってな」
『はは……そうだね。……わたしは過去を憎んでいる』
「……」
『過去のわたしを今までずっと殺してきた……だから、この子も殺してしまいそうになった』
「來……」
『あぁ……オビトが来てくれなければ、わたし、きっと殺してた……止めてくれて、ありがとう……』
「……お前の憎悪は消えないんだな」
『これまでの罪とこれから受ける罰だよ。……わたしはきっと、これから逃げることはできない。逃げないようにするよ』
「……。」







≪次の日≫
伸びをして辺りを見渡す。
『(やっぱり……)』
昔のわたしは居なくなっていた。
ふと自分の記憶に何かが引っ掛かった。
『(これの裏……?)』
クローゼットの扉の裏のポケットを見ると
かさっ
『!これ……』
小さなそのメモには

≪ありがとう≫

『……そういや、』
昔から、置き手紙すんのが好きだったっけな。
そう苦笑いしながらわたしは元の位置にメモを戻した。
まあ、正直なとこ、下手に夜中に母親を心配させたくなかった。優しいわー、お姉ちゃん泣いちゃう。
居間に行って鬼鮫に話せば少し安堵しながら、やはり淋しそうにそうですか、と呟いた。
ガチャ
「おはよう」
『おはよー』
「……やっぱりロリ來いないか」
『チビトもいないか』
「まあな」
「大変でしたねえ」
『にしてもチビト可愛すぎかよ』
「チビ來も可愛かった」
「チビ來な、オレに何て言ったと思う?」
『いつ?』
「お前に蹴られまくっていじけたオレにチビ來が寄ってきてな、"わたしもいっしょなので、なかまはずれじゃありませんよ"、って!」
「あぁ、そういえば私が晩ご飯用意してたら傍に来てましたねえ……"ひとりはいやです"と言っていましたっけ」
『まだ純粋だった頃だからなあ……あれがこうなる』
「……お前が前に言ってた、"誰にでも分け隔てなく優しい聖人"に憧れていた頃ってことか」
『バレたか』
「どういうことだ?」
『あー……誰にでも分け隔てなく優しい聖人なんて結局存在しないって前にトビに言い放ったことがあってね。他でもないわたし自身がそれに憧れてなろうとしていた、ってこと。まあ皮肉にも、今のわたしはそれを否定する立場だけれども』
「來……」
「夢を壊さないであげてくださいよ」
『だからまだ、あの頃のわたしには夢を見させてあげたよ。束の間でも夢を見られれば幸せだろう。……あの子がわたしになるのは、もう、時間の問題だし、それは避けられない』
目の前でガラガラと音を立てて崩れ去ったのは、他でもない自分自身の理想。
理想の自分、理想の家族、理想の友達、理想の……そんなことに心を奪われ続けてはいけないと最悪の未来を想像し、対峙し始めたのがいつかなどとうに忘れたが。
そう、結局のところ。
『最悪のケースを想定して、最善を尽くせばいい。たった一人だろうと、対峙することに意味があるんだから』
そういうことだ。
結局、一人なのだから、自分が強くならなくちゃ意味がない。
そのためにも、見返りを持たない、誰かに期待しない自分に、感情に空虚なヒーローになろうとした。
「……來は元々異世界の人間なのに万華鏡まで開眼しているのが不思議だったが」
ポツリ、とマダラが呟いた。
「お前、色々あったんだなあ」
『なんだそれ……わたしなんか全然でしょ。もっと辛い目にあった人ならいくらでもいる。……だからあんまりこんなこと言うのは好きじゃないんだ。そもそもみんなとは感性がズレているだろうしね』
「だからこそ聞くのが楽しいんじゃないか」
『……あっそ』
「にしても來のルーツ的なものを垣間見た気がするな」
サソリがニヤニヤと笑いながら言う。
『……元々わたしは優しいよ』
「平気で暴力をするくせにな?」
『……さっきから何、ケンカ売ってんの?』
「別に。ただ普段リアリスト越えてネガティブなこと言う根暗なお前らにもそんな時代があったんだなあと」
「さらっとオレを巻き込むな」
『はあ……むしろ元のわたしが人を信じやすくて、無駄にポジティブな脳内花畑でキャッキャウフフな奴だから色々経てこうなったんだよ。まあ、その部分も完全には消しきれてない』
「というか最初ママ、って言いながら泣いてたんだけど」
「衝撃だよな」
『母親大好きっ子だったからね』
「え」
『だから色々あったんだって』
「しかしやはり根本的には変わっていないところもあるだろう」
『オビトもそうだよね』
「オレがか」
『優しいところ、全然変わってないよ。天使なところも』
「お前相手三十路のおっさんだぞ」
「それこの場にいるほとんどの奴に当てはまるしお前もだろが」
「見た目10代だからオレはいいんだよ!」
「そうだそうだ!」
『マダラ多分見た目三十路でしょ』
「がはっ」
「どうせ私は色物ですよ」
『鬼鮫はけっこう好きだけどな、わたし』
「お前やっぱり変な趣味あるんじゃ……」
『何でそう馬鹿にするのかね……本当に敵だと思っていたら口も利いてない』
「あー……徹底的にやりそうだよな、お前」
『当たり前でしょ?何で敵相手に情けかけなきゃいけないの?わざわざ執行猶予やら何やら理由つけてやってんのに調子乗るのが悪いでしょ?』
「うわあ」
『それは人数が増えても同じ。相手がわたしを嫌うんならわたしだって嫌いになる。わたしが不快に思うなら、敵に回るならば手加減をする必要がない。わたしは弱いから本気で挑まないと相手を倒すことはできない。……そもそも物理的にはどうにかできるとは思えないし……ほんとに、周りの人の同情買うぐらいしかできないよ』
「わーお」
「同情を買うて」
『まあそれも限られるしね。この世界なら、物理的に何とか……だからわたしはこの傭兵って立場、すごく楽』
「傭兵ねえ……まあ確かにオレたちは今特別なんかしようって訳じゃねえしな」
「けっこう來が何かやってるよな」
『そう?』
「何か喫茶店の短期とか賞金稼ぎ」
「けっこう助かってるぞ」
「いつの間にいたんだ角都」
「最初から居たわ馬鹿もん」
『やりたくてやってるだけなんだけどな。むざむざと殺られる筋合いもないし』
「メイド喫茶?」
『誰得?なあ誰得なの?……まあ喫茶店の制服って似たり寄ったりだし別に構わないんだけどさ』
「じゃあこれを」
「どっから持ってきた」
『言っておくけどワンピースやスカートは膝下無ければ穿かないし黒タイツ無かったら絶対に着たりしない』
「生足!來の生足!」
『今裸足だけど』
「ズボン穿いてるじゃねえか」
『何ふざけたこと言ってんの?嫌だよ、絶対。大体マダラ、ショートヘアーのアナザー來ちゃんに"幼少期の柱間みたいだ!"なんて言ったんだって?』
「誰だチクったの、おじいちゃん怒らないから出てきなさい」
「そう言ってオレを見るなくそジジイ。ご名答だが」
「オビト貴様あああああ!」
『お後がよろしいようで。何でもかんでも柱間柱間って!わたしは柱間じゃないし憧れてもいないからそんなこと言われても何の感動もしない』
「柱間の強さがわかるのは角都お前ぐらいなもんだなあ!」
「おい、ひっつくな」
『ホモォ……┌(┌^o^)┐てか。ほら喜んでやるよ』
「オレまで巻き込むな」
『角都は除外するけど肝心のマダラが何故かハアハアしてるよなんでだろ』
「天然鬼畜來ぷまい」
『出でよ鬼畜眼鏡』
「俺関係ねえだろ姉さあああああん!」
『※真に手を出したら流石に容赦しない』
「じゃあこの場にそもそも引き摺り出すな!」
『部屋にお帰り』
「言われなくても帰りたいのにご飯の時間だから!俺腹減ってんの!」
『鬼鮫ご飯まだー?』
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ