It's impossible!!√O

□dubious investigation
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【オビトside】

最近、めでたくキスができるようになった。
先輩♡なんて以前にも増して可愛く、しかしそれでもまだ控えめに甘え始めたその様子に頑張ったなと思う。
來の抱える闇はやはり深く、正直全てを取り除くことはできないだろう。
それでも、來はオレのために一歩歩み寄った。
だからオレも応えたいと思った。
それに、その暗い部分も含めて來が好きになったのだから、正直な話、來から闇の全てが消えてもきっとオレは正直に喜べないだろう。
かつて來は"過去なんて人を判断する材料に過ぎない"なんて言っていたが、オレは來自身が醜いと思っているであろう過去もひっくるめて來のことが好きなのだと言いたい。
……さて。
「……。」
オレは自分の唇を親指でつついてみた。
やはり、あまり柔らかくない。
オレの親指に残るあの感触に比べれば全然。
鏡に映った己の唇は薄くて、あまり色づきも良くない。
オレの"眼"に残るあの色に比べれば少し不健康に見える。
目を瞑ってオレを待つその姿。
小さく息をついて、耳まで赤くして、オレの顔を映した、うっすらと涙で濡れた深い黒。
あの時。
來本人は知らなかっただろうが、恐らくあのまま鬼鮫が来なかったらオレはかなり危うかっただろう。
だってあまりに扇情的だった。
あいつを甘く見ていた。
普段見ている來とは少し違うだけなのに、なんであんなに。
「はー……」
これあれか。
オレかなりあいつのこと好きか。
大事だから、ゆっくり時間をかけて食べっ……ごほんごほん。
でも、オレは好きなものは時間をかけて長く味わっていたいしな。飴とか好き。
という訳で。
「ねえ來さん」
『だからいきなり入ってこないで下さいってば!?』
「だって暇そうだったんだもん」
『暇するのに忙しいんですー』
「やだー!かまってー!!」
のしっ
『ひぎゃぁぁぁあ!?』
オレは仮面の中で静かに息を乱しながら來の背中や首もとに頭をグリグリと押しつける。
『まっ、ちょ、待って!ストップストップストップ!』
「何スか?」
『いやいやいや』
「だーってかまってくれないんだもーん」
『だからってそんなことしないで下さい。……かまうと言ったってわたしは何をすれば……』
「んー……ぎゅーってするとか?」
『……い、いちゃいちゃしたい、ってことですか?』
「そういうことー♡」
『(好きっ!)わ、わかりました。じゃあちょっと大人しくしてて下さいね』
は、はい、ぎゅーっ、なんて言いながら屈んだオレに抱きついてきた來。
「良い匂いするなー」
『シャンプーの匂いでしょうかね』
來を抱き上げる。
『ふえっ!?お、重いからやめて下さい!?』
「え?重い?どこがッスか」
『体全体が!』
「うっそだあ」
『嘘じゃねえわ!と、とにかく下ろして下さいって!恥ずかしい!』
「だって來さんちっちゃすぎて普通に立ってたらちゅーできないでしょ?」
『そうだけども!ていうか左手の位置!』
「ん?あぁ、ラッキースケベ♡」
『嘘こけ!完璧に狙っとったやら!?』
完全に焦っている。方言出てるし。
「ねーねーちゅーしましょ?」
『へっ!?こ、心の準備が……』
「じゃあこのまま尻揉んでよー」
『なにさらっとセクハラかましてくれてんですか!まっ、ちょ、タンマぁぁぁぁあ!!』
「耳元で叫ばないの」
『耳元でやたらイケボで変態発言しないで下さい!耳孕む!』
ぽい、と仮面を床に放り捨てる。
「なに、子供か?何人欲しいって?」
『言ってねえ!?』
「だって可愛かったんだもん」
『この三十路……あざとい……ッ!!』
「三十路言うな。キスしたい」
『え、え、マジすか』
「だからなんでお前そんな男子高校生みたいな反応すんの」
『いやこれは大丈夫でしょ!ていうかほんと下ろして!せめて座った時の膝とかにして!』
「それでも嫌がるくせに」
『恥ずかしいだけやわ!』
ベッドに腰かけ、自分の膝に來を乗せる。
「腰捻ってキスしてたら大変だろう」
『わたしに膝に女の子座りしろと!?』
「できない訳じゃないだろう?」
『う、ぅ』
「……怖いのか?」
『違っ、……別に、そういうのじゃ、ない、けど』
オレの隣で女の子座りをしている來はまるで待てをかけられている犬が少し拗ねているみたいで、オレはにやけるのを我慢した。
じっ、と見て手を差し出せば押し黙ってからようやく両手をベッドについて身を乗り出しながら目を瞑った。
來の腰に手を沿えるとそれだけでも小さく眉をひそめる。決して嫌がってる訳ではない。
可愛い。あー押し倒したい。すぐ後ろベッドなんだけどなー。
「(……まあそうしたいのはやまやまだが)」
自分でも褒めてやりたいほど強く理性にものを言わせて踏み留まりながらも來の唇に自分の唇を乗せれば一瞬小さく跳ねてから、両手に少しずつ力が入っていった。
明らかに目の前の來がキスだけで手一杯なのがわかる。
何か閉じてる瞼が震えてるし。
ゆっくり、たまに角度を変えてキスをしているとふと來が目を開いた。
『……、!?な、なんで目ぇ開けてんの……!?』
「なんだ、悪いか」
『見んとってよ!』
ペチペチと弱くはたく來。可愛い。
「なんで」
『は、恥ずかしいから……』
可 愛 い の 暴 力
「(このやろう……このやろう……!)」
鼻血が出そうになるのを口元を両手で覆って堪えていると
『な、笑うなあ!笑うなよ!なに笑ってんだよ!』
「いや、笑ってないが」
『笑ってるじゃん!めっちゃぷるぷるしてんじゃんかぁ!』
「可愛いが過ぎると思ってな。鼻血出ると思った」
『は、鼻血?いや、現実的じゃないっていうか……』
「……(むすっ」
『……え、何か、ごめん……』
「いい、お前も鼻血出るって思うぐらい好きにさせてやるし」
『ふははは、残念だったな!もうこの時点で好きだ!』
「もっと好きにさせても、構わんのだろう?」
『やってみやあええやら』
「望むところだ」
『てかキスする時、目、瞑ったな、わたし』
「あぁ」
『いや、初めてなんだよなー』
「?」
『今までキスした時、いつも相手の顔見てた覚えあるからさ』
「どこの誰だそれ」
『別世界なんで諦めて下さい。……正直な話、ちゃんとした恋……恋?まあいいや、こんな気持ち、感情になったのが初めてというだけで。そんだけ』
「來の、初めて……」
『おうその言い方やめえや』
「來さん怖ーい」
『仮面被ればいいとかそういう問題じゃないですからねー先輩?』
「僕から提案なんスけど」
『は、はあ』
「一日に一回以上はキスしません?」
『ふぁっ!?』
「かなり好きというか、早い話、來さんとキスしたいです!」
『え、いや、いいけど、え、マジすか』
「本気と書いてマジと読ませます」
『わ、わー……やっばい、顔めっちゃにやける……絶対顔赤えわ……』
「……言うほど赤くないッスけど」
『嘘だッ!』
「お前がそれ言うとギャグになりきらないからやめような」
『あれ?』
「それとも……僕とキスするの、あまり、好きじゃない?」
『それ、……こっちの、台詞、です』
「好きじゃなかったらこんなこと言いませんよ」
『む、ぅ』
「ダメ?」
『身長高いのにきゅるんとかあざとすぎるやろが!なーんで首コテンとかしちゃうのかな!?可愛すぎかゴルァ!!』
「何のことッスか〜?」
『ちょっとお姉ちゃんって呼んでみようか(ハァハァ』
「さすがのオレでも反応に困るからやめような」
『そういう自分の意見が言える君が好き♡』
「お、おう……」
やっぱりよくわからない。
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