It's impossible!!√A

□暗躍
8ページ/8ページ


【オビトside】

カンッ、ガキィンッ!
金属音と共に終わりを迎えたその戦いはどちらの勝ちだっただろうか。
もう、何度刃を交えたのかも、何度自分が勝ったのかも、何度相手が勝ったのかも覚えていない。
ただ、漠然と、納得がいかなかった。
オビトは來を白壁へと叩きつけた。
『ぐ、ぅ……』
地に叩きつけられ、骨をほぼ砕かれてもなお、來は意識を残していた。
そんな瀕死の來のことなどお構いなしにオビトは來の首を片手で掴むと吊り上げた。
『か、はっ……!』
來はオビトの腕を掴むと必死に名前を呼んだ。
『オビ、ト……ーーー!』
來の浮かべた苦しげな表情にようやく我に返って來の首から手を離した。
「……オレは、何、を……」
ドサッ、と倒れ込み、咳き込みながら血を吐き出した來は肩で息をしていた。
『操られて、いたんだ……恨む、まい……』
來は泣きそうな笑みを浮かべた。
その次の瞬間、視界が大きく揺らいだ。
『……ぇ……?』
下を見下ろせばオレの胸を貫いている腕が見えた。
後ろを振り返ればマダラ。
「貴様は用済みだ。その娘と共にここで果てるがいい」
『マダ、ラ……!貴様ぁぁぁあ!!!』
來は咆哮しながら槍を手に向かうが消耗した体力は補いようがなかった。
道端の小石と同じように蹴り飛ばされ、それでも短剣を投げてそれに自分を飛ばすがマダラは杭で來を縫いつけた。
『うっ、ぐう"ぅ"ぅ"ぅぅぁぁぁ"ぁ"あ"……!』
狂乱しながら暴れて杭から逃れようとするもマダラの杭で心臓を貫かれた。
その場に崩れ落ちた來を鼻で笑うとマダラは消えた。
『……オビ、ト……』
伸ばされた手を掴むこともできないまま、オレは意識を手放した。






『……これが1つ前の話だ。まだ見たいか?』
オレはその言葉で顔を上げた。
無表情の來がそこにはいた。
オレは椅子に縛りつけられていた状態で幻術にかけられていたのだ。
「ら、い……?」
『あなたは何度繰り返してでも、リンを救えた世界を夢見るだろう。……なあ、今の私はどう見える?発狂して、理性を失ってでも、それでも世界に執着し続けるこの有り様!何度繰り返しても結局何も変えられないこの無力さ!理想を追い求めてたった一人で在り続けるこの無様さ!なあ!?』
來は錯乱しながらオレを見た。
『変えられない!変えられないんだ!今のあなたは、こんなにも醜いものに成り果てようとしているんだぞ!何度、方法を変えてあなたを助けようとしても!何度、やっても救えない!は、はははははっ!こんなの、嗤うしかないではないか!滑稽だ、余りの駄作振りに失笑しかできない!ふざけるな!』
來は叫びながら神威空間の白壁を殴り付けた。
『こんなの、こんなの、認めてやるものか……!なあ、ふざけているだろう!こんな、何もかもが無意味に帰すような世界など、作り替えればいいのか!なあ、どうしたらあなたは幸せになってくれる!どうしたら、どうしたら、どうしたら!』
來は泣き叫んだ。
オレはその間ずっと拘束を解こうと必死だった。
『……そうか。そうかも、しれんな……』
來はおもむろにそう呟くと自分の短剣を取り出した。
黒い刃が妖しく光を反射して來の顔を照らした。
「まさ、か」
來は掠れた声で呟いたオレの後ろに回り込んだ。
『すまん……』
「やめろ……!」
オレを刺すとは思えなかった。
椅子に衝撃が伝わった。
同時に自由になる両手と聴こえた肉を切り裂く音。
「來!」
慌てて足の拘束も解くと椅子から立ち上がって來を抱き寄せた。
來は自分で投げた短剣を雷遁で引き寄せて胸を貫き、後ろで拘束していたオレの手を縛っていた縄を斬ったのだ。
椅子からオレの重さが無くなったせいで椅子を來を支えきれず來はそのまま仰向けに倒れた。
「うそ、だ……そんな……!」
『……オビ、ト……ごめん、ね……』
來は泣き続けた。
『わたしの、せい、で……わたし、オビトに、こんな、思い、させたく、ない……オビトが、壊れるのは、いやだ……見たく、ないよ……』
「そんなの……そんなの、オレも同じだ……!謝るな!」
『……オビト……』
少し笑うと來は続けた。
『オビトが、しようとしてるのは……こういうこと、なんだよ』
「!」
『覚えてなくていい……だけど……わたしと同じ、道だけは、歩まないで……オビトを、傷つけたくない……殺したくない……同じ想いを、させたくない……!』
「っ……!なら、お前も……!お前も、こんな……!」
『悪い……それは、できない……』
「何故だ……何故ここまでする!オレはお前を……!」
『オビトの、幸せを……願うしか、できない、わたしを……許して……無力な、わたし、を……』
「許す!許すから……!お前が、好きなんだ!だから、死なないでくれ……!」
來はオビトの手を弱々しく握ると小さく笑った。
『愛して、くれなくて……良かった、のに……本当に、酷い、なあ……また、ね……』
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ