It's impossible!!√A

□一転
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「くっ……!」
「あの小娘を己よりも優先させて逃がしたまでは良かったがなあ……」
ニヤリ、と嗤いながら攻撃してくるマダラにオビトは防戦一方だ。
『オビト!』
「!來下がってろ!」
「相手はオレだぞ?こちらを向け」
「!(しまっ……!)」
グサッ、という音に時が止まった。
「が、はっ……!」
噎せかえる鉄の臭い。
咳き込むオビト。
「ん?どうだ、痛かろう」
マダラは嗤いながら傷を抉った。
「や、めっ……!」
こうなってしまうと次に來がするであろう行動は、とオビトは小さく制止をかけるが來には届かない。
『ガ、あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!
一気に理性が吹き飛んだ來は距離を縮めると飛び上がって槍を振り下ろす。
驚いて物理的な攻撃を避けようとマダラが腕を抜こうとするも抜けない。
見ればオビトが腕を掴んでいた。
そのままマダラの腕を切り落とす。
「くっ……!」
苦悶の表情を浮かべるとマダラは神威空間から消えた。
すぐにマダラの腕を抜き、オビトの肩に手を置くと神夜赭空間に連れ戻す。
『う、いや、だ……!死ぬな……!』
胸に空いた大きな穴を一瞬見るとオビトは來を見つめる。
「あいつの眼は……」
『持ってる』
「そうか……絶対に渡すなよ……」
『わかってる』
「当たり前、か……ーーー」
口の端を少し吊り上げると一言、声もなく何かを言ってから全ての力を抜いた。
『……オビト?……起きろ……起きろってば……!』
その瞬間、遂に堪えていた來の感情がとうとう爆発した。
ボロボロと泣き出したのだ。
『なにっ……!なにが……!何が、"頼んだ"、だ!頼まれていない!』
來は泣きながら続ける。
『ふざけるな……!戻ってこい……!何のために私が……今まで……!今までどれだけのものを犠牲に……』
オビトを一度だけ強く抱き寄せた。
『……そうだ……(何を犠牲にしてでも……)』
來は自分の頬を叩いてグッと眉間に皺を寄せた。
『(もうやり直すのは御免だ……絶対に今回だけで何とかする)』
ーーー贄として、私の持つ……最善を選び直す権利を手放そう。
未来を擲ってでも、未来を掴みとるが今の……!
左眼を瞑り、右眼に現実を刻みつけて印を結ぶ。
じゅくりっ、と嫌な感触を遺して右の眼球の奥が蠢き始めるが構ってなどいられない。
『大丈夫……まだ間に合う……!だから、来い……帰ってこい……!』






≪オビトside≫




「ん……」
どこだ、ここは……。
「オビト!大丈夫?」
「!」
約十数年ぶりのその声に目を見張る。
「リ、リン……!?」
「やっぱり!オビトなのね?」
「ここは……?」
周りは霧のようなものばかりで見渡せない。
リンは悲しそうな顔をしてから、ハッと何かを聞いたような顔で上を見上げた。
「リン?」
「……、オビト」
真剣な表情でオレの方に向き直ると手を握られた。
「どうした?」
「ここは、まだ境目。まさかとは思ったから来たの」
「……まあ、オレは死んだからな」
「ううん!」
「え?」
「オビトはまだ、死んでないよ!」
「え、いや、しかし、オレはマダラに胸を貫かれてだな……」
「もう!死んでないったら死んでないの!」
「お、おう……?」
「詳しくはあっちで聞いてね」
「?あぁ……」
「きっと次会う時まではしばらく空いちゃうから今のうちに言っとかなきゃ」
「?」
リンはにこっ、と記憶の中の笑顔と同じように笑った。
「わたし、今までずっと見てたんだから!これからもずっと見てるからね。幸せにならなかったら許さないから!」
「え、あ、うん……?」
「もう!何よその反応!幸せになってよ?」
「あ、あぁ……わかった」
ほんと、優しいな、リンは。
「……って、オレの方こそ謝らないとな」
「え?」
「オレが、……オレがあの時、もっと早く着いていれば……リンはここには居なかったのに」
「……オビト」
「ん……?」
「大丈夫。オビトは悪くないよ。だって、わたしが選んだんだもの。逆にわたしこそ……悲しませてしまって、傷つけてしまって、ごめんなさい。……でも、もう後悔したってしょうがないわ。だからわたし、オビトに"幸せにならなかったら許さない"、って言ってるの」
「!リン……」
「ほら、聞こえる?あなたを呼んでる声」
「オレを?」
耳を澄ませると確かに聞こえる。
誰だろうか。
「しばらくこっちに来ちゃダメだからねー!」
リンの声をきっかけに急速に意識が浮上した。
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