It's impossible!!√A

□不変
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「來さん」
『どうした?』
鬼鮫は荷物を解くと來の部屋へとやって来た。
「いや、あの……水影に聞きました。私のことを擁護してくれたらしいですね。その、ありがとうございました」
『……擁護なんてしていないぞ、私は』
「そう……ですか……でも、あの……私、"間違って無かった"って言ってもらえて……安心しました。柄でもありませんけどね」
『私が鬼鮫でも同じことをした。……鬼鮫は何も初めから殺すつもりなど毛頭無かった。……最後の手段としての選択肢だからそれは正解だ。国を……いや、鬼鮫の場合は里を守る為にか……正解だった。……まあ私の上司達になら怒られてしまうだろうがな』
「それが普通です。……私は忍なので」
『そんなことを口走った時点でそんな上司など上司にしておく必要なんてないけどな。そもそもそいつの考えた編成やら経路やらが失敗の元になるんだからそれぐらいは覚悟しておけと釘だけ刺しておく』
「はは……確かに、そうですね」
『私は私のやりたいことをする。それだけだ。そしてそれを後悔しない。外道とか、そんなことを気にする必要はない』
「……來さんって、何か、元の世界でこんなお仕事されてたんですか?」
『……何?』
若干の殺気のような禍々しさを纏いながらこちらを振り向いた來に鬼鮫が慌てて言う。
「あ、いえ……前々から思ってはいたんですけど、割と戦場でも冷静だったので……この世界をあんな風に繰り返したからかもしれませんけど、ちょくちょく元の世界でもって言っている気がして……」
『あぁ……そういうことか。いや、戦場なんて知らない。知らないはずだが……知っている私も居るというか……』
「?」
『ほら……言っただろう。私は元の世界のことを覚えていない節があるのだと』
「はい」
『……今、私はここにいるが……どうやって世界を渡ったのかを覚えていない。それだけじゃなく、私の記憶は混乱している……戦場にいた私もいた。平和だった世界で車に撥ね飛ばされた私もいた。瓦礫に埋もれた私も、墜落する私も、溺れる私も、どれなのかわからんのだ。……私はその中の一つで、他は夢かもしれない。この私自身が、それら全ての私の纏まった私なのかもしれない。……だから、わからない』
「そう……だったんですか……」
『ただ一つ言えるのは、私だって何も初めからこんなのじゃなかった……ただ、少しばかり……夢を見すぎた。そして、現実を受け入れすぎた。……抗うということを……知らなかった。そんなこと、今さらどうだっていいがな』
「來さん……」
『私はな、護りたかったんだ。護って、私のした失敗を帳消しにしたかった。間違いを否定したかった。大切な者を……作ってみたかった。愛情を拒んだが、愛情を受け入れてみたかった。……だが』
「……?」
『そもそも、護りたいものが、無かった。護りたいとは思っても、大切な者だと心から思えなかった。初めから、心など無かったのだと思えたならそれはそれで良かっただろう。だが私には初め心があった。それはきっと確かだったからこそ、私は自分の中で対立し続けた。……あぁ、私は、何を、言っているんだろうな……?』
「大丈夫ですか……?」
『大丈夫だ……私は鬼鮫のしたことは間違って無かったんだと知っている……だから、鬼鮫はこれ以上悔やむ必要がない、と……それだけなんだ』
「……あなたにとってのオビトさんって、一体……」
『聞かんでも解るだろうに……あの人は主だ。命令さえあれば私は従う……私はただの従者ではないから、間違っていると思ったものには従わない。それだけだ』
「?従者……なのに、従わない、ですか……?」
『あのなあ』
來は鬼鮫を困ったように見上げながら腕を組んだ。
『誰にでも付き従う従者(いぬ)は誰にも従わないだろう。私の主はオビトだ。忠実なら、主が道を間違えそうになればいつもの散歩コースに導くのが犬の仕事なの。だから、主殿にはしっかりとリードを握ってもらわんと困るが……』
ため息をつくと後ろに声をかけた。
『一体いつからそこにいるんだ、私のご主人様は』
「……お前にしては鋭かったな」
『鬼鮫も鬼鮫だ。いつから気づいてた』
「いえ、つい先ほど……(今まであなたが気づいてなかっただけでいつもこんな感じなんですがねえ……)」
「で、オレはいつからお前の主になったんだったか」
『?私があなたを救いたいと思った時からだが?』
「……そうか(何それ可愛い)」
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