It's impossible!!√A

□庇護
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何も見えない。
暗闇には何もない。
『(ーーーあぁ……)』
また、何も守れなかったのか……。
絶望などできていればとっくの昔にしていた。非生産的だが。
自ら命を絶つことも馬鹿馬鹿しくて出来ない。非効率的だ。
暗闇では音がよく栄える。
銃弾の飛び交う音。
倒れ臥した者の呻き声。
砲弾の落下する音。
身体からもげた一部が落ちる音。
死の蔓延する世界で必死に生を謳歌しようとする者の最期の咆哮。
それらを私は、はっきりと聴いていた。
だからこそ、いつの間にか紛れ込んでいたこの世界の彼を自分が護るのはある種、当然のように感じたのかもしれない。
もしくは、それが自分に与えられた贖罪の機会なのかもしれないとすがったのかもしれない。
……だがそれが自分の記憶であるという確信はない。
別の自分の記憶であるような気がする、というのが正確な表現だろう。
それでも、今までに何度となく自分の力不足を思い知らされた。
オビトをこうして、近くに居たのに、何度も……。







『う、ぅぅぅ……』
來が眉間に皺を寄せゴロゴロとベッドの上で寝返りを打つ。
また、魘されているようだ。
オビトが手を握るが効果はない。
「……仕方がないな」
『……う、……?』
オビトが幻術を解くと來はゆっくりと目を開いた。
混乱しているのか、魘されるほど怖い夢を見たせいなのか、左眼は万華鏡写輪眼になっている。
『……オビト……』
「大丈夫か?」
『……あぁ……良かった……夢か……』
言うと大きく息を吐いた。
まだ心臓が早鐘を打っているのだろう。
『(……くそ……)』
泣きそうになるのを堪えているように見えたので隣に座り頭を撫でた。
「何か、怖い夢を見たんだな」
『……』
「悪い夢は言えば楽になる。お前の見た悪い夢なんか、オレが壊してやろう」
『……思い出したくない』
「そうか。なら言わなくていい」
『……なあ』
「ん?」
『……いつまで頭撫でてるんだ』
「お前がオレを突き飛ばすまで」
『オビト、絶対に突き飛ばされるつもりないだろ』
「わかるか」
『わかるわ。ガッチリベッド下掴んでるじゃねえか』
「バレてたか」
『……いい加減恥ずかしいぞ』
「なら少しは赤面ぐらいしろよ」
『そういうのは恋人に求めてくれ、頼むから』
「折角の機会だぞ?オレの恋人になりたいとか言えんのか?」
『言えるか』
「(ちっ)」
『(恥ずかしすぎんだろ。高度すぎんだろ……)どうせ可愛くないよ。悪かったな』
「誰も可愛くないとは言っていないだろう?」
『あーあー聞こえなーい』
「お前な……!(割とこいつ本気で言っても伝わらないからなあ……もっと積極的にいってもいいのか?)」←半ギレ
『大体何だこの状況。何考えてるんだ』
「ナニって……お前そんなこと期待してるのか……?病室なのに……」
『何ソワソワしてるんだ?あのなあ……顔は悪くないのに何でそう……』
「まあうちは一族だからな」
『あー腹立つ!……まあともかくこんなところさっさと出て任務に……』
「行かせない」
『……もう治った』
「じゃあ両足へし折って監禁」
『何があなたをそこまでさせるんだ』
「治りきってないだろう。これ以上傷を押して来たところで迷惑になるだけだろう?素直に休め」
『!……そうか、迷惑、か……。あなたはいつからここに?』
「大蛇丸のような輩がいるかもしれんからな。ずっといる」
『……デリカシーもプライバシーもへったくれもないな……』
「大丈夫……來は……はあっ、オレが守ってやる……なあ、來……」
『こんなところでヤンデレ発言されてもな』
「ほら……オレの眼を見ろ……また眠れ」
『いやだ』
ギュッと眼を瞑った來の瞼は強く閉じられ開けられない。
ぐぐぐぐぐっ
『おいおいおいおい!馬鹿、抉じ開けようとすんな!』
「大人しくオレの眼を見ないお前が悪い」
『ほら開いた!』
「右目じゃない、左眼を開け!」
『いやだ!』
「……じゃあオレも勝手にする」
オビトは來が眼を開こうとしないのを好都合に、來の手を触り始めた。
「柔らかいな。しかも小さい」
『……ちょっと待て何してるんだ!』
「何って?」
『待て待て待て待て』
オビトは來の手を自分の胸に押しつけたりしたところで開いた來の眼に幻術をかけた。
「……流石にドキドキしてしまったではないか」
一人ごちるオビトだがやってることは完全に変態だ。おまわりさんここです。
「(……そういえば)」
おや、また何か余計なことを思いついちゃったらしい。
「(女性の胸と二の腕は同じ柔らかさだと聞いたことがある……!)」
何良いこと思いついちゃってるんだこのジャリ……んんっ、失礼、何でもない。
「(ま、まあ?別に胸を触る訳じゃないし?ちょっと怪我の様子見るだけだし?)」
何かやっぱりキャラ崩壊しすぎたオビトは口調も素に戻りつつあった。
そろそろと來の左の二の腕を両手で包み込む。
コンコン
「失礼します」
オビトはさも來の左腕を布団に戻す途中でした、と言わんばかりに戻した。
「……大変そうですね。大丈夫ですか?」
「いや……オレは心配ない」
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