It's impossible!!√A

□防禦
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「……なんで……なんで、なんでなんでなんでなんで!なんで、みんな、そうやってわたしの幸せを邪魔したがるのよ!?わたしのことをみんな見てよ!」
『……。』
來は何も答えないまま、紅い瞳で見つめた。
もはや女は逃げられないことを悟ると必死に自分の感情を吐き出した。
そうでもしないと自分のいた痕跡が無くなるのではないかと思ったのだ。
どこに行っても自分の居場所がないと必死に足掻いていた結果の現実を吐露する女に來は頭をこて、と傾げた。
「オビトのことが忘れられなくて……!だから生き返らせようと思ったのに……生きてたら、無理だったわ。ほんと、わたしの今まで何だったのかしら……」
『……。』
「早く、殺しなさいよ……もう、生きてても仕方ないの!早く殺して!」
『……。』
女は來に叫んだ。
來は何も喋らないまま、ただその狂気を拭い切れない紅い瞳で見つめた。
蒼白い月光に照らし出された來の顔には相変わらず感情は見当たらず、深紅の瞳だけが煌々と烈火のごとく燃え続けている。
その瞳がそっと伏せられた。
來はしゃがみこむと女の目を覗き込んだ。
「!」
幻術により女の脳内はかき混ぜられ、意識が朦朧としているのを確認すると來は静かに立ち上がった。
『ま、だ……戻れる……私に、できること、は……極力、して、やる……から……真っ当に……生きろ……悲嘆することなく……前、に……』
來の瞬きをした紅と白から涙が筋を作って流れた。
「……ぁ……」
『私、が……送る……眠れ……お前の……しあわ、せを……願って、いる……』
ガクリ、と力の抜けた女を抱えると來はすぐ近くの村へと彼女を横たえた。
記憶は消され、何も残らない。
かなり強力だからきっとこの先記憶が戻ることは二度とないだろう。
『(だが、これで……いい……)』
來は踵を返しながら神夜赭空間へと消えていった。
「來!」
飛んだすぐそばにオビトがいた。
心配そうに眼を動かしている。
「大丈夫か?怪我とかしてないか?」
『問題、ない』
「お前まだ本調子じゃないのにまたこんなことして……!」
『……主が、困っているのに、従者が、何もしない、のは、おかしい、だろう』
「またそういうことを……!……まあいい。ならそのご主人様が従者を褒めてやらないのもおかしいよな?」
『?』
「ちょっと貸せ」
オビトは來の首飾りについていたチャクラ石に容量ギリギリまで自分のチャクラを詰め込んだ。
『!これ、は……』
「お前のチャクラも借りるぞ」
來の手に自分のチャクラ石を握らせるとチャクラを込めさせた。
「よし、それぐらいでいい。ほら、これならオレがわかるだろう?」
『ん……あぁ……』
「お前は、オレを感じられない不安から発狂を抑えられなかった……ならオレとの繋がりを作らせればいい。これなら大丈夫だろ」
『……ありが、とう』
照れたように笑った來。
「はうんっ」
『!?』
生娘のような声に何事だと見上げるもオビトは相変わらずポーカーフェイスである。
釈然としない來だがオビトはそっと呟いた。
「というよりもだ……オレからも返さないと収まりが悪い」
『は?何の……』
オビトは來の言葉を遮るように來の唇に自分のそれを重ねた。
『っ』
ちろ、と出してみた舌を引いてみたり、やっぱり入れてみたりするオビトに來は驚きながらも肩を押して離れようとした。
が、離れることを許さないオビトは頭を両手で固定して來の瞳を見つめ続ける。
來はオビトの手を外そうと掴むが力が入らない。
震える瞼と視線をさ迷わせる瞳をオビトは見逃さない。
『んっ、ぅ』
「(あー、ダメ。可愛いすぎてもっと虐めたくなる)」
小さく洩れた呻きのような悲鳴に嗜虐心が煽られてしまったオビトはあっさりと舌を來の口内へと侵入させた。
『っ、!?』
びく、といっそ面白いぐらいに狼狽えた來の反応を見るとオビトは口の端で小さく笑った。
「は、……ん……」
元々体格差は大きい。
オビトは來の頭を抱え込むようにしながら何度も唇の角度を変えて來を攻める。
『(ダメ、だ……!このままだと、私……!)』
たまらず來はとりあえず鳩尾に一発入れた、が。
すかっ
「危ないな」
『っ、はあっ……殺す気か……!』
「そんなんじゃ死なんだろう?」
『黙れ!黙らんか!何してくれてるんだ!』
「キスだが」
『だから、何でキスなんか……!てかケツ触んな!』
涼しい顔で來の尻を触っていたオビトの手を払いのけるとオビトはちぇーっとか言っている。無表情で。
「キスなんかとか言うな!お前は慣れているかもしれんがオレにとっては……!」
『聞き捨てならん!何が慣れているかもしれん、だ!何でキスをしたんだと訊いているんだ、私は!』
「お前がキスしたからに決まっているだろう!」
『……いや、今関係ないだろうそれ!』
「お前に言わせてみれば主従なんだろう?ならば従者にやられたことを主が仕返してはいけないというのか?」
『では執事か秘書を雇ったらこんなことするのかあなたは!』
「するわけないだろう、何を言っている」
『それこっちの台詞だからな!?』
「ならお前こそオレが女でもしていたのか?ストーカーを炙り出すために!」
『……オビトなら』
「本気か」
『ううううううううるさい!ああするしかなかったんだから仕方ないだろう!』
「でも……!」
『それにだ!……キスなんて、慣れる訳、ない……だろう……オビトとの、キス……とか……』
「……っ!?」
俯いた來の両耳は真っ赤だ。
『オビトこそ、なんだよ……あんなの、ズルい……卑怯、だ……』
「……。」
オビトはしばらく目の前で小さく震えながら気まずそうに左腕を右手で掴む來を見ていたがやがて來の両肩を少し強めに掴むと大真面目な顔で
「……やはりここは1度犯しておくべきか」
『死ねっ』
ぼぐうっ
「んぐふうっ」
鳩尾を押さえてゼイゼイと呼吸するオビトを尻目に來は自室へと帰っていった。
「……どうするかな……」
最近、構われるだけでも嬉しくてこうして殴られてもちょっと興奮しかける自分がいる。
オビトは苦い笑みを浮かべて自室へと帰っていった。
「……いや、Mじゃないからな」
誰にともなく呟いた主張はやはり誰にも聞かれることなく宙を漂った。
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