It's impossible!!√A

□衝突
1ページ/6ページ

『"人を呪わば穴二つ"と聞いたことはないか』
來は廃神社の裏に名前を書き込んでいる男を冷たく見下ろした。
「だっ、誰だ!ここは誰もいないはず……!」
『私の質問に答えろ。"人を呪わば穴二つ"と聞いたことはないか』
「あ、あるが」
『……貴様がそこに書き込んだのは何だ。見たところ男の名前だが』
「へへっ……こいつはな、俺の女を取りやがった最悪な野郎なんだ!おかげで俺はこんなザマだ!」
『(何もこんな日に書き込むとはな……)』
「なあアンタ忍だろ?鬼なんか最初からあてにしちゃいねえけどよ、アンタなら殺ってくれるだろ?な?なっ?」
『構わん。代わりに報酬が先だ。その前に聞きたい』
「ん?」
『……貴様の女を連れ戻してやった方がいいかどうかだけだ』
「もちろん、連れ戻してくれ!いや、ありがてえな」
男は嬉々として代金を払った。
『さて……では家ででも休んでいろ』
「家ならあそこの……」
『いや、知っている』
「何でだ?」
『こちらの都合上な』
「へえ、忍ってすげえなあ」
一時間もしないうちに男は家屋に人がいるのに気がついた。
「お、おかえ……」
『……。』
來は鬼の面をした顔を斜めにグルリと回し、傾けて男を見た。
その怠慢な仕草だけでも不気味だというのに男は來の血塗れの姿と、手から床へとごとり、と転げ落ちた女の頭に目が行ってしまい凍り付いた。
「なっ、なに、……なにしてんだよぉ!?」
『なにとは?連れ戻してやっただけだ』
「こ、こんな……!男だけだったじゃないか!俺が殺して欲しかったのは!」
『だから忠告しただろう?"人を呪わば穴二つ"と……それに』
來は男に近寄った。
床板が軋んだ音を立てた。
『この女は最初から死んでいた。どこで死んでいたと思う?そこの水瓶だ、板長さん』
「えっ……?」
『私がわざわざ死体から首を取ったのは水瓶から死後硬直した身体が抜けなかったからだ。死後硬直している以上、死んだのは24時間以内だ……そして面白いことに』
來は水瓶を倒した。
「ひいっ……!?」
『一つの水瓶に一つの死体が出てくる……どれも女だ。一番奥にあるのに至っては……振ればカラカラと音がする』
「そんな……俺は知らない!俺は知らない!そうだ、きっとあの男が!」
『そんな男はこの近辺に実在などしない。貴様はいわゆる多重人格だ。貴様の中のその人格はかなり高い額だが代わりに帰って来ないことで有名な買春の常連だ』
「じゃ、じゃあ俺が殺しっ……!?」
『そうだ。そして貴様はそいつを殺せと言った』
「ま、待て!嫌だ、死にたくない!」
『悪いが前払いでもらってしまった以上は無理だ』
來は男の前から姿を消した。
「どっ、どこから来る……卑怯者!姿を現せ!」
『……。』
來は哀れな者を見るように目の前でへたれこみブツブツとうわ言を繰り返す男を見下ろしていた。
『……最初から幻術のなかだ』
來は男の瞳を覗き込むとさらに幻術をかけた。
『"快楽刑"だ……精々楽しむといい』
來は廃神社の屋根に飛び移ると見下ろす。
実在する拷問染みたマフィアの実刑方法の一つだが余りの悲惨さと非人道染みた方法である、といった事情によりあまり知られていない。
『……。"人間"、だな(村に降りて強姦始めないように結界張っとくか)』
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ