I'm phantom.

□すなおになんか
1ページ/3ページ

『じゃあ僕が囮引き受けるんで大名の方はよろしくお願いしますね』
鳶「あ…はい」
『どうしたんですか?先輩らしくないですねー…』
僕は、君が好きなのに。
それを隠して君のそばにいる今、意識してしまっている今、必死にこの気持ちを押し隠しているというのに。
何で、そんな元気なさそうなんだ。
『どうかしたんですか?あ、また悩みですか?』
鳶「いやー…、そんなんじゃないッスよ」
『…そうですか』
ズキッ、と胸が痛くなった。
僕なんか役に立つ訳ない、よな。
だって、相手は人間だから。
僕みたいな怪物には…人間のことなんてわかる訳がないんだから。
『…じゃあ、また後で』
鳶「気をつけて下さいねー」
『先輩もですよ』
ざっと大名の住む屋敷の門を飛び越えて領地に乗り込む。
『こんばんはー!大名さん、聞こえてますかー!あんたを殺しに来たぞー!』
シュシュシュシュ!
途端に飛んでくる手裏剣を刀で防ぎ、少しずつ中に入る。
「何者だ!」
『暁だ!』
「馬鹿な奴だ!」
『うるさい!』
「相手は一人だ!さっさと終わらせるぞ!」
刀を人に刺して、クナイを刺して、血を浴びたのは初めてだった。
『…終わった』
血の海に僕は佇んでいた。
慈悲?
そんなものなんてかけられる訳がない。
「死ねぇぇぇ!」
ザクッと喉笛を切る。
『可哀想に…新人の癖に戦場に駆り出されたか』
「…!!」
『冥土の土産だ。喉笛は切っても声が出なくなるだけなんだぜ?静かに相手を殺す時にしか使う手段でしかない』
いつもは嵌めている手袋をポケットにしまい、素手で相手のはらわたを引きずり出す。
『ちょうど今日…同じようなことを仲間にしようと思ったんだが…お前を代用にして許してやる』
「!!…」
事切れた相手を捨てる。
血まみれだ。
まあ、いいか。
どうせ僕は怪物で、血で汚れている訳だから。





ぴちゃり、ぴちゃり。
血濡れた暁マントから赤い雫を滴り落としながら大名の部屋に着いた。
ガラッ
既にトビが戦闘中だった。
鳶「夜霞…!?」
『遅くなっちゃってすみません』
僕に気づいたトビは一瞬油断した。
『!!』
トビの心臓に大名が刀を突き刺そうとしていた。
迷わず僕は
ザクッ…
鳶「え?」
トビは驚いていた。
さっきまでそこにいた僕の姿がなくなって、僕はトビを突き放して大名の刀を胸で受け止めていたんだから。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ