It's impossible!!√A

□想起
3ページ/7ページ


【オビトside】


オレは、変な夢を時々見た。
状況は違うし、説明はできないが何かが違う。
それでも同じ夢だと思った。
ーーー対して面白くもない、ただ、女が出てくる夢。
顔は覚えていないが、それでも同じ女だとわかる。
大体は殺す夢だ。たまに平和に話していることもあるが、大体オレはその女を殺す。
何でか、素手で首を絞めたり、心臓を貫いたりして。
夢の中だから、酷く生々しい感触が虚ろだが朧げに残る。
ーーーしかし、それでいて、何故か女は笑うのだ。
とても、優しく、晴々とした、暖かい笑みを浮かべる。
オレに殺されているのに、オレにそれを向けるのだ。
そして必ずオレの頬に手を伸ばし、
『ーーー、』
困ったように笑いながら息絶えるその女の笑顔や、オレに触れた手の感触を忘れられず、オレは目を覚ます。
たまに逆に殺されてしまうこともある。
だがそれはそれで構わないのだと思っている自分に驚いた。
それは、目の前の女が泣いていたからなのか?
オレの人間的な感情はあの日死んだはずではなかったのか。
……いいや。オレは知っていたのだろう。
あの女の言う言葉は間違ってなどいなかったこと。
それでもやはり立ち止まる訳にはいかなかった。
手にかけたのを後悔して、手にかけた後にそれを思い出して。
オレはあの女のことなんて、きっととうの昔に許していた。
むしろ、許してほしいのは、オレだ。





「……まさかここまでチャクラコントロールが不器用な奴だとはな」
『黙れ。……あと少しで感覚は掴めそうなんだ』
オビトは控えめにため息をついた。
「周りに忍はいなかったのか?少しは見ていそうなものだが」
『……元々チャクラのない世界にいた』
「チャクラのない世界?」
『……私は大蛇丸によって連れて来られた。チャクラなんてもの、知らなかった』
「それなら大蛇丸は初めからお前だけを狙ったということだろうな。……違う空間、ということは時空間忍術の類かもしれんな」
『……時空間忍術、か』
「帰りたくはないのか?」
『別に』
「そうか。……時空間忍術といえばお前は分身とすり替わった時のあれはどうやってやったんだ?」
『あれは……あれも時空間忍術というのか?』
「それができるならばチャクラのコントロールもできるはずなんだが」
『……。』
「どうした?」
『いや……何でも知ってるんだな』
「まあな」
謙遜する様子もなく、そう言い切ったオビトは片頬に笑みを浮かべたが仮面に阻まれ、それを來が知る術はない。
「お前にも教えてやろうか?」
『難しいことは嫌いだ。生憎、頭は良くない。それにそんなに教えて私が裏切ったら、なんて考えたりはしないのか?』
呆れたように訊けばオビトは鼻で笑った。
『……なんだ』
「いや……お前はそんな奴じゃない」
『黙れ。知ったような口をきくな』
「オレにはわかるし、何より確信してるからな」
『……何故そんなことが言える』
ただの脳内ハッピー野郎なんだろうか。
素性を隠すほど慎重なのに。
そう思って來はオビトから身を少し遠ざけようとした。
「お前はあれだけ言っておいて大蛇丸の奴を殺そうとはしないじゃないか」
『、』
「お前は自分の実力に一応自信はあるし、あいつの実力を把握しておいて実力を隠していた。大蛇丸を殺そうと思えば殺しはできなくとも傷つけて逃げることは可能だっただろう。それをしなかったのはお前が律儀な奴だからだ」
『ばっ、馬鹿なことを言うな!別に律儀って訳じゃ……』
「逃亡の手助けをし、さらにパワーアップの手助けをしているオレにわざわざ歯向かうとは思わない。もしオレから学ぶことが無くなったとしても同じだろう」
『はあ……ずいぶん自信満々なんだな』
「単純なだけだ」
悪かったな、馬鹿で。
そう呟けばまた笑われた。
「その分、感覚を覚えさえすればあとは早い。元々素質があるからこそ自力で何とかできたんだからな」
『……言っておくが』
なんだか偉そうにしているのがえらく気に入らなくて、來はオビトに言った。
『別にお前の優秀な部下になるためについてきてる訳じゃないからな。私は強くなるために教えてもらっているだけで、お前に恩とか、そういうのほんと、ないから。いいな』
「はいはい」
『……真面目に言っている』
「わかったわかった。……そろそろアンタ、お前呼びも嫌だな」
『そんなこと言ったって名乗りたくないんだったら仕方ないだろう』
「何か、他の呼び方にしてくれ」
『……では師匠はどうだ』
「師匠か。……まああながち間違いではないな」
『じゃあそうする』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ