It's impossible!!√A

□不屈
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『まず、今回もこうして……世界を繰り返す、初めの場面にやって来た。オビトがマダラによって強制的に輪廻転生の術を使わされないように、オビトの心臓を取り替えた』
「(あの記憶……オレだったのか)」
『別にそこからは何もしていない。小遣い稼ぎをしていたのは知っているだろう?その程度のことだ』
「この大戦で、初めから実行しようとして、成功したことだってあったんだろう?」
『……まあな。小南を私が一方的に匿ったのは長門を小南に安全なところで看取らせる為だった。オビトが万が一死んだら右目を使ってイザナギを使おうと思っていたし、ナルトを死にかけさせたのは力を得させて、黒ゼツを捕らえるため。これに関してはタイミングを計っただけにすぎない』
「……何でそこまでするんだ……」
『……、そうだな、私を存在させるため、とでも言おうか』
「?」
『結局、今までの世界を繰り返していた私は全て存在しない。1度はどうでもよくなった自分の存在も、こうなってしまった以上は否定せざるを得ない。私の中にしか存在しないのだから。人の存在は、他人に認められて初めて成立すると思っている』
「……話が違う」
『この際だから言っておく。だから、もし、これでまた守れなかったのなら、……今、あなたと話しているこの私すらも、……存在していないんだ』
來は一瞬黙ってから言った。
『あなたを守れない、守れなかったような私は、私が存在を許さない。そんな私や世界は、私にとって紛い物なのだから』
「來!」
今までの自分の心情を來が思っていたのだと突き付けられ、思わず声を上げたオビトを來はゆっくりと見た。
その顔は今にも泣き出しそうに、涙を浮かべていた。
來はそれでも呟いた。
『私なんて存在は、……この世界に元々無かった。あるべき世界に戻ろうと、世界が私を拒んでいるのかもしれない、それでも、私は……幸せを願った。幸せを、今でも願っている。どんなに、醜い願いだとしても、歪な願いだとしても……それでようやく、私は私を許すことができる。存在を許される』
「(ーーーあぁ、やっぱり)」
オビトは言い終わって俯く來を見て思う。
「(こいつは……オレと、よく似ている……オレの辿ろうとした道を……)……なら、何で……絶望しない。何で、そんなにしてまで、……望むんだ」
『……絶望できるならそうしている。望みを捨てられたらとっくの昔にそうしている。……そうする他に道がないという結論に達した。オビトを大戦後の幸せな空間に届けるまで、この呪いは、解けないんだろう』
『もはや、自分自身のことなど関係ない。あるべき真実を作り上げるまで……そんなものを気にする必要がないんだ。だから私は怨霊のつもりでいた。悪鬼のつもりでいた』
『全てをすり抜け、痛みも感じず、目的のためなら、何人殺しても構わない。そうあるべきだった。目的さえ達成できたのなら、いくらでもあなたを傷つけてもいい、非情に徹するべきだった。……それなのに。……そうするつもりだったのに。……"彼女"が、泣いていた』
「"彼女"……?」
『届かぬ理想を叫ぶだけの、愚かな"わたし"……何もできない、無力な"わたし"など、淘汰したはずだった。それなのに、あなたに手を上げようとすると、"彼女"が、居ないはずなのに、消したはずなのに、"彼女"の亡霊が泣き叫ぶんだ』
『私は、"彼女"よりも現実的で、非情で、……そのはずなのに、あなたに対する想いが消えない。だから苦しいんだ。痛覚は消えたはずなのに、どこかが軋んでいる気さえする』
『こんな一方的な感情などわがままにすぎない。ただのわがままなら他人のことなど気にせずそのまま実行できた。……でもあなたが絡むとよく分からない。そんなことをしてはいけない気がする。心なんてもの、感情などという飾りは"彼女"のものだった。邪魔だった。だから消したはずだったんだ』
『あなたのせいで、私は……私ではなくなりかけているんだ。あなたのせいなんだ。どうしてくれる。これで、あなたを守れなかったら、……私はあなたを許さないぞ』
「……お前が自分にそう言い聞かせているだけだ」
オビトの言葉に來はキョトン、とした。
「結局、一つには絞ったとしても理想を求めていることに変わりはない。そして、……お前は困っている人間を放っておけない」
『……あなたは何を言っているんだ』
「例えそれが偽善にすぎなくても、それをわかっていても、手を伸ばしている。……お前の記憶を覗いてから、オレにも知らない記憶が流れ込んでいる」
『何だと』
「そう言ったって、結局何一つ役立ちなどしてはいないが。……來」
『……信じられない。そんなこと、あるのか』
「オレは、何度も來を殺している。……だが、お前はその後を知らない」
『……だろうな』
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