It's impossible!!√A

□不屈
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「お前を殺した後でようやく、オレは來の真意に気づく。たしかに、お前ほどではないにしても……それでも、何回かあったんだ」
『は?』
「だから、來を殺してからオレは慟哭する。年甲斐もなくな。そして願う。"來が救われる世界が欲しい"と」
『馬鹿、な……そんなこと……あってたまるか……』
來はただ愕然とした。
それなら、自分のしてきたことは、自分の言った言葉は。
「それも、存在しなかったことになるのか?」
來は視線を落として呟いた。
『……、夢の中で出会って、話をした人間が……夢から覚めた時、どうなったかなんて気にしないだろう。……ほんとに……そんなことが……』
來は顔をしかめた。
『……私の記憶を覗いたことでそんなことが誘発されたのだとしても……それならやはり今までのあなたは何も知らなかったんだ。……だとしたら何処で……』
來は頭を振った。
『……いや、いい。今気にすることじゃない……後にしよう。少し休まなければ。あなたも例外ではない』
「(話すり替えたな。……しかしたしかに)そうだな」
『あなたとの戦闘とか……色々疲れた』
「お前がもう少し弱ければ可愛いげがあるものを」
『悪いがあなたの弟子だからな』
「可愛いげのない弟子だ」
『それには同感する』
二人はそっと笑った。
トン、と肩に載った重みに來が見ればオビトが頭を寄りかけていて、思わず心臓が飛び出そうになった。
辛うじて声はあげなかったが居心地が悪い。
何処か遠くを見つめるような愁いを帯びた黒い瞳。
見た目に反して、意外と柔らかい黒い髪の毛。
戦闘の際に破れたインナーから筋肉のついた腕が見えている。
ーーーこの眼には、毒だ。
『……チッ』
「?どうした」
『うるさい、重たいぞ』
「……お前の肩低いから腰が痛いな」
『なら載せてんな』
「……あぁ、そうだ、膝枕なら、いいかもな?」
『誰がやるものか』
「ならこれで我慢してやる。感謝しろ」
『……勝手にしろ』
腕を組むと來は気まずそうにオビトから少し視線をずらして正面を向いた。
『(……何処に目を向ければいいのかわからん……くそ、……自覚あるのか?この人……)』
「(あー、美人だなあ)」
オビトはジッと來を見る。
全体的に筋肉質な小柄の体。
浅黒い肌に小さな鼻。
一重瞼の少し細めに開いた目から覗く、白銀の瞳の奥に隠れているのは一体どんな考えや感情なのだろうか。
「(……ずっと、見ていたいほど……考えさせられる、美しさ、とでも言おうか)」
『……おい』
「ん?」
『なにを、見ている』
「ん、あぁ……すまん」
『(……でもさっきのあれ)』
來はオビトとの戦闘中の出来事を思い出す。
≪「……何で、わからない」≫
悲しそうな、困ったような声音でオビトが呟きながらしたそれはいわゆる抱擁、ハグである。
『……っ……(て、手慣れていた……!)』
☆ーーー侮れない、うちは(イケメン)一族……!!ーーー
來は知らない。
オビトが等身大のマネキンを購入して抱き枕にしていることを……。
『……肩貸してやってるんだからさっさと休め』
「あー、気が向いたらな」
『はぁー……』
「なんだ、そのわざとらしいため息は(吸い込みたい)」
『……』
苛立たしげに……若干迷惑そうな視線が眉間に皺を寄せて送られた。
「……そんなに迷惑か?」
『……チッ!』
來は舌打ちをするとオビトの頭を自分の腿に乗せた。
「いたっ」
『さっさと休めって言ってんだろうが!……私が起こしてやるから少しでも休め』
「……素直じゃねえな」
『何か言ったか』
「わかったわかった、休んでやる」
『ふん、最初からそうしろ』
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