It's impossible!!√A

□防禦
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「え……何でこいつが……」
『直接本人に訊くといい』
來は窓を開いた。
『窓に、術を、施しておいた……お前を、拘束する』
「あんた、オビトに何してんのよ!」
『何となく、騒がしい呼吸が聴こえたからな。気配やチャクラは、消しきれても、音は消せなかった』
來は拘束した女の前にしゃがみこんだ。
『やはり、ストーカーだ。……君が離れれば、私を殺そうとしたのは……こいつ、だ』
「何……!?」
『悪い、が……私に殆どの毒は、効かない……よほど新しく、作られた、ものでない限りは、殆ど、試して耐性を、つけてある』
「それも初耳だぞ、來!?」
「ちっ、違うわ!そんなの、誤解!オビト、ほんとよ?わたし、オビトのことが大好きで……!」
『……。』
「いや、だがあの時も言ったように、オレはお前のことは何とも思っていない。むしろお前がオレから離れなかったがためにオレは……」
「!まさか、オビトを傷つけたの!?許さない……今、オビトを解放してあげるね!」
『……。』
「來、拘束を増やせ!」
「なんで、こいつの肩を持つの……?騙されてるんだよ!目を覚まして!」
『……。』
「……?來?」
『……。』
來は壁に凭れかかり、腕を組んで女を見つめていた。
ようやく來の視線に気づいた女は敵意を剥き出しにした。
「なっ、何よ!オビトは渡さないんだからね!?」
しかし來は女のことなどどうでもいいようにオビトに話を振った。
『……オビトは、どう、思う』
「どうとは?」
『こいつが、好きか……嫌いか……』
「そんなのもちろん好きに決まってるでしょ!」
「え、迷惑なんだが」
「……あんたオビトに何吹き込んでるのよ……!」
『……。』
不機嫌そうに細められた視線と瞳孔の開ききった視線が激しくぶつかる。
來は相変わらず無表情の奥に狂気を追いやりながらも女を見張っていた。
「オビトは優しい女の子が好きなんだよね。知ってるよ、全部」
女の声が幼くなった。
「……お前……!」
姿も少女のそれになった。
『……。』
來はグッ、と目を細めた。
「リン……」
「ねえ、オビト……オビトのこと、ちゃんと見てたの……覚えてないかもしれないけど、わたし、ずっと……」
オビトは目を見張った。
「お前……まさか……」
オビトはアカデミー時代の同期を思い出した。
「ふふふ、思い出してくれた……?大戦の時に生きているって知って……ずっと、探した。ようやく見つけたのに、その女が邪魔ばっかりして……」
『……木の葉の、忍か』
「元、ね。今は違う……"暁"の忍、でしょ……?」
「お前なんか入れた覚えはない。それにオレはもう昔のオレじゃない」
「ええ、ええ、知ってるわ!すごく男らしくなった!とってもかっこいい!それでも優しくって、わたしを見てはくれない、それでもわたしはあなたを見てる……!!!ねえ、わたしが"リン"になってあげる……ずっと一緒にいよう??」
「オレはもう、リンが好きな訳じゃない。今となってはもう、随分と昔の、初恋の相手だ」
「……そう……わたしのこと、もう嫌いなのね、オビト」
「っ、」
リンの姿で、声で、口調で、女は続ける。
「酷いわ……こんなに、ずっと見ていたのに……そんな女を好きになってしまったというの……?わたしと全然違うのに。わたしと違って優しくないし、あなたを傷つけるのに。わたしはオビトを傷つけたりなんかしないよ……??」
「……やめろ……」
「ねえ、何で……?何で、わたしを捨てるの……?ずっと、好きだって、言ってくれたよね……??わたし、忘れないよ???」
『……それ以上』
來は"リン"の首に短剣を押し当てた。
『その声で、何も喋るな。その顔で、その目で、オビトを、見るな。汚れる、だろう』
「……なんですって?」
『オビトを傷つける者を、私は、許さない……他を、当たれ』
「あら、嫌に決まってるでしょ?」
クスクスと笑いながら女は元に戻った。
オビトは少し震えながら女を睨み付けていた。
「おま、え……!」
「可哀想に……そんなにリンが好きだったのね。わたしも報われなかったけど、オビトも報われなかったのね。可哀想に」
『オビトを傷つけて、何が楽しい』
オビトを庇うように來はオビトの前に立つと険しい表情のまま呟く。
「だって、こんなにわたしは思ってるのよ?それなのに、何で、みんなわたしを見てくれないの?オビトも見てくれないのなら、わたし……傷つけてでも振り向かせてあげる」
『……オビトの幸せを想えないなら、お前も、幸せになんかなるべきじゃない……だろう』
「は……?何言ってんのよ」
『好きな人の、幸せを、祝えないなら……そいつを、好きだなんて言う権利、あってたまるか』
「……何それ……わたしはオビトが好きなの!どんなに汚れてもリンを好きなオビト……可哀想なオビト……わたしなら幸せにしてあげられる!」
『そんなの、無理だ』
「なんでっ!?」
『そんな、偽りの幸せなんか、誰も、救えない……オビトを傷つける、だけだ……時間の無駄、何もかもが、腐りきって、崩れ堕ちた……そんなものを、理想と掲げるか……おぞましいにも、程がある、だろう』
來はオビトに手を触れるとオビトを神夜赭空間へと転送した。
『私は……お前となんら、変わりはない、だろうな……私欲で、彼を、求めている……だが……オビトが幸せになれる、なら、私の命を投げ捨てることぐらいは、厭わない……つもりだ……その覚悟は、お前には無いだろうし、そうやって何度も繰り返して、ようやく掴んだ、この可能性は、誰にも……邪魔など、させない』
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