It's impossible!!√A

□喧嘩
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「……。」
今朝会ったが來は挨拶だけでさっさとバイトに行ってしまったのでこうして、オビトは見ている。
「赤い薔薇を11本下さい」
『おや、プロポーズですか?』
「えっ!?な、なんで分かるんですか?」
『赤い薔薇を11本。意味は"最愛"、"宝物"。家族に贈ることもあるので、"家族になろう"と言いながら渡すのもいいでしょう』
「は、恥ずかしいなあ」
『頑張って下さい』
來は男性を送り出すと次の男性客の会計に移った。
「(……あいつ……前も来てたような)」
『はい、では890円のお会計です』
「お願いします」
『では1000円お預かりします。お返しの110円とレシートです』
男は金を仕舞うが花を取ろうとしない。
「……。」
『?こちら、お買い上げの商品です』
「そっ、その……僕とお付き合いして下さい!」
『……えっ』
「!」
男は花束を抱えながら言った。
「僕!ずっと見てました!ずっと、笑顔が素敵だな、って思ってて!昨日、泣いてたじゃないですか。僕で良ければ……!」
オビトは思わず店の裏で固まった。
『……見てらしたんですか……』
來が泣いていた?
なんであの男は知っているんだ。
「僕、……貴女が何か抱えてるとしても、受け止めきれます!だから、僕と、ずっと一緒にいて下さい!」
『……お気持ちは嬉しいのですが、……』
「だ、ダメですか……?」
『ごめんなさい……』
「……僕、諦めませんから!振り向いてくれるまで!」
來はそっと微笑すると
『そんな心の埋め合わせの為に名前も知らないあなたをお付き合いさせてしまうのは申し訳ありませんので』
「一時的でも、貴女の心を埋められればいいんです!」
「……。(來があの男の前でだけ泣いた?オレの前では泣かなかったのに?)」
オビトはぎゅっと拳を握り締めると踵を返して神威空間へと消えていった。
『……では言葉を変えましょう。お言葉ですが。私(わたくし)はそんな言葉で靡くような安上がりな女ではございません。そして私の心が一時的にあなたで埋まるとも考えられません』
「そん、な……」
『申し訳ありません。しかしこれは覆ることのない事実です。お気持ちはとても嬉しかったですが、私はそれを返すことができません。辛い思いをなさるのはあなたです。私も、あなたを傷つけたくはありません』
「……わかり、ました……」
トボトボと肩を落として店を去る男を見送り、來は花にやる水を裏に汲みに行った。
『……?なんだろ……』
來は地面に光る物を見ると近寄った。
『(誰かの落とし物、か……?それにしては部品の欠損もないし、高価そうだが……)』
來が拾い上げたのはブレスレットだった。
金色の細いチェーンに紅いガラスが所々散りばめられている。
『(ここに来るのは店長と私ぐらいだ……だが店長が落としたとは少々考えにくい)』
おじいちゃん店長の顔を思い浮かべて首を横に振った。流石に無い。
『(流石に足跡とか残ってないしな……でも、前に水を汲みに来た時は気づかなかった。無かったのだと仮定すれば)』
來は涼しげな音を立てたブレスレットを眺めた。
『(……誰かが、この花屋の裏に居た、か)』
しかしこの炎天下じゃなあ、と來は呟いた。
日の燦々と照りつける真夏日にこんなところにいたとしても、それじゃ下手すれば熱中症だ。
『(……流石にそれはないか。一応、休憩室に置いておくか)』








がちゃっ
『只今帰った。……?鬼鮫?居ないのか……?』
鬼鮫どころかイタチも角都もいない。
『鬼鮫は霧隠れに呼び出し、イタチは新作団子の為に出奔、角都も賞金首狩りで出奔、か……』
來はため息をつくと残る一人であるオビトの確認に行った。
コンコン
『……。』
コンコン
『……?オビト?』
がちゃっ
「……う……?」
來はオビトに近寄った。
オビトは半裸でタオルケットにくるまって眠っていたようだった。
『(意識が朦朧としてる……服脱いでるし……熱中症……?)』
「ら、い?」
『……。』
來は黙って出ていくと氷枕とタオルを持ってきた。
「……來……」
『熱中症だろ。窓開けて服脱いでるのは流石の判断だが……体調はどうだ』
「大丈夫だ。心配してくれたのか?」
『……。』
ふい、と來はオビトから顔を反らした。
「……まあ何でもいい。それがお前の答えなら仕方ないよな。それで?あの男からの告白は受けたのか」
『は?』
思わず目を見開く來の腕をオビトは無表情で掴んだ。
『!』
「オレなんかより、よっぽど優しそうだったもんな。オレなんかより、よっぽど気が利きそうだもんな。オレなんかより、よっぽど……よっぽど……」
ギリ、ギリ、と來の腕に込める力を強くするオビトは万華鏡写輪眼になる。
「お前を大切そうに見てたもんな。なあ、來」
『……あなただった、のか』
「ほう……気配に気づいておきながらさっさと断ったりしなかったのか」
『待て。……何をそんなに怒っているんだ』
「怒ってなんかいるものか。お前は運がいいな」
オビトは來に万華鏡写輪眼で幻術をかけた。
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