It's impossible!!√A

□終熄
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パチパチ、と火が爆ぜる音が耳に心地よい。
『……。』
來はシュラフの用意をしながらオビトを見ていた。
オビトは食事の後片付けを終え、水仕事で悴んだ指先を火に向けて暖をとっている。
綺麗な横顔だ、と率直に思った。
たしかに生々しい傷跡があるものの、それで元の端正な顔つきが変わることはなく、忍特有のどこか隙のない目つきだ。
ふと、その視線が火から來に移る。
「どうした、そんなに見て」
『いや、寝袋の準備ができた。早く寝よう』
「おう、ありがとう」
オビトが視線を下げると仲良く並んだシュラフ。小さく笑ったオビトに來が小首を傾げる。何かしてしまったのだろうか。
「オレのことすごい好きなのな。隣で寝たいアピールがすごい」
『なんだ、そんなことか……悪いのか?』
「(いや可愛いことこの上ないんだが?)悪くないぞ、そう不貞腐れるな」
頭を撫でたオビトに続くように、來もシュラフに潜り込む。
毛布も敷き込んでいるのでじきに暖かくなるだろう、と思いながら何とは無しにオビトの顔を見上げる。
「……あ、やっとこっち見た」
いつから見ていたのか、こちらを同じように見つめる夜色の瞳がそこにはあった。柔らかく口角を上げた表情にどうしようもなく胸が高鳴ったのを気づかれないようにとシュラフの中に無言で頭ごと勢いよく潜り込む。
「(人間と目が合った小動物みてえ)おーい、出ておいでー♪」
野生動物にするように優しい声音で促すオビトの声にキュッ……とシュラフの口を固く握る來の小さな身体の内で心臓がドッドッドッ、と暴れている。
『(待て、待て待て待て、落ち着け。何故こんなに動悸がしている?好きなのはだいぶ前からだったぞ?だというに、なんだ、これは……!……まさか、まだ、これ以上に好きになるっていうこと、なのか?)』
これ以上好きになったら、なんて考えている間にも身体の熱は上がり続ける。
一方、オビトは身体を起こして小さく丸まったシュラフを見下ろし満足げに笑っていた。
「おーい、出て来ないのか?」
シュラフを軽く指で突くが突くな、噛みつくぞ、と言わんばかりの唸り声しか返ってこない。
仕方ないな、とため息を小さくついたオビトは徐に小さなシュラフを腕に抱えた。
びくうっ!と中身が動く。
「お、あったかい」
『お、おい、何、してるんだ』
抗議の声を小さくあげながらもぞもぞとシュラフの中でもがく來を鼻歌でもしそうなぐらい愉しそうに抱え込みながらオビトは無言で寝る体勢に入った。
『……。』
ぴょこ……と動物が巣穴から周囲を警戒するように頭だけをシュラフから出してオビトの顔を見る來にオビトは微笑んだ。
「やっと出てきたな」
『……暑かったから顔だけ出しただけだ』
「たしかにあったかいな」
『いででで、お、折れる……!』
ぎゅむむ、と抱きしめるオビトに來が暴れるのを笑いながら平然と抱き続ける。
「なんだ、今さら恥ずかしがるようなことでもないだろう?」
『……あなたはもう少し自分の顔の良さを自覚するべきだ。……私の心臓が、保たない。……これ以上、私を、狂わせないでくれ……!』
「なんだ、いつもの余裕はどうした?」
『余裕なんて、あんなもの虚勢張ってるだけだ……君の指の動き一つで、こんなにも翻弄される……こんなの、柄じゃない……私ばかり、みっともないことになっている気がするぞ』
「おおう、可愛い」
『可愛い可愛い言うな!そしていい加減離れろ!』
「やなこった。大人しくしてろ」
すん、とオビトが來の頭に鼻先を埋めようとすると來の足がゴッ、とオビトを蹴る。
「ってえな」
『風呂入ってないからそういうの今日はやめろって言ってるだろ!』
「お前がそんなこと気にする必要ないって言ってんのに」
『嫌に決まってんだろばーか!!』
「なんだこいつ、可愛いことばっかり言いすぎだろう」
『だから!可愛いって言うな!』
「何故だ?可愛いのに対して可愛いって、事実しか言ってねえのに?」
なんで?と無垢な瞳で問いかけられ怯んだ來にオビトはそっと口づける。
「……一つ一つ、お前の可愛いところ、挙げていこうか?」
『い、要らない!』
「意外と初心だよなあ……可愛がってやろうな」
『さ、最近のオビトは、すぐからかってくる……何故だ……?私をいじめて、楽しいのか……?』
「楽しくないと言えば嘘になるな?」
『否定ぐらいしろ!!』
しゅぽっ!!と再度勢いよくシュラフに潜り込んでいよいよ籠城に乗り出した來にオビトが笑いながら謝る。
「ごめんて」
『やだ。いじめ、かっこ悪い』
「悪かった」
『だって、前もそんなこと言ってた。意地悪ばっか言うの、やだ。……私が言ったら不貞腐れて面倒くさいくせに、狡い』
「面倒くさい言うな」
くぐもった声で意地悪、バカ、と呟く來を抱きしめながらオビトは目を閉じた。
『……?』
寝息が聞こえ始めたことに気がつき、來がそろそろと顔を出すと眠っているオビト。
『……ほんとに、マイペースな奴だな』
怒ったように、困ったように笑うと一度だけ首元に頭を控えめに擦りつけてから目を閉じた。
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