幼馴染み

□04
5ページ/6ページ

「待って、オンニ。人には似合うものと似合わないものがあって、こっちのふわふわなドレスのほうが絶対可愛いし、オンニには似合うと思うよ?」



「もう可愛いのは卒業したいの!」



う、羨ましい。
そんな事言ってみたい。



あたしだって女の子だから、オンニみたいにふわふわでレースの似合う女の子に生まれたかった!



全てはアッパの遺伝子を恨んでやる。


オンマ似だったら、オンニと同じように、可愛いく産まれただろうに。



「これは、名無しさんだよ。」



…は?



「わかってるけど・・・」


は?は?何?何があたしだって?



「わかってるけど、こういうのが着たいの!」




「ヌナは駄目。これは、名無しさんが一番似合う。」



・・チッチッチッ、チーン。



「はあっ?あたしっ?あたし?!」



何があたしなのか、自分でもよくわからない。



ただ、主語が欲しい。



こんな時ばかりは母国語を恨む。せめて英語だったら。



主語がなければ成り立たない言語だったら!



「このドレスは、名無しさんが一番似合う。」



ドンへは真顔でそう言った。


耳を疑ったのと同時に、キラキラと弾ける閃光が、目の奥まで貫いてきた。



たぶんあたしじゃなかったら、この台詞を言われたのがあたしじゃなかったら、確実に鼻血を噴くような台詞。



この天使のようなお顔をしているこの男に、衝動的にひれ伏して、一生を捧げてしまうような台詞だ。



「ま、着る機会があったらだけどね。」



こ、この男はああ!

なんでどうして一言多いの!



今天国にいたあたしを、容赦なく叩き落したよ?!



地上に突き落とされたあたしは、天上の甘い夢を見ながら、這い上がれずにこのまま朽ちていってしまいそうだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ