幼馴染み
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「待って、オンニ。人には似合うものと似合わないものがあって、こっちのふわふわなドレスのほうが絶対可愛いし、オンニには似合うと思うよ?」
「もう可愛いのは卒業したいの!」
う、羨ましい。
そんな事言ってみたい。
あたしだって女の子だから、オンニみたいにふわふわでレースの似合う女の子に生まれたかった!
全てはアッパの遺伝子を恨んでやる。
オンマ似だったら、オンニと同じように、可愛いく産まれただろうに。
「これは、名無しさんだよ。」
…は?
「わかってるけど・・・」
は?は?何?何があたしだって?
「わかってるけど、こういうのが着たいの!」
「ヌナは駄目。これは、名無しさんが一番似合う。」
・・チッチッチッ、チーン。
「はあっ?あたしっ?あたし?!」
何があたしなのか、自分でもよくわからない。
ただ、主語が欲しい。
こんな時ばかりは母国語を恨む。せめて英語だったら。
主語がなければ成り立たない言語だったら!
「このドレスは、名無しさんが一番似合う。」
ドンへは真顔でそう言った。
耳を疑ったのと同時に、キラキラと弾ける閃光が、目の奥まで貫いてきた。
たぶんあたしじゃなかったら、この台詞を言われたのがあたしじゃなかったら、確実に鼻血を噴くような台詞。
この天使のようなお顔をしているこの男に、衝動的にひれ伏して、一生を捧げてしまうような台詞だ。
「ま、着る機会があったらだけどね。」
こ、この男はああ!
なんでどうして一言多いの!
今天国にいたあたしを、容赦なく叩き落したよ?!
地上に突き落とされたあたしは、天上の甘い夢を見ながら、這い上がれずにこのまま朽ちていってしまいそうだ。