幼馴染み

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「名無しさんちゃん?おーい。肉焼けたよ。」



「えっあっ、はいっ。ありがとうございます。」



ソンミンさんは楽しそうに笑いながら、あたしのお皿にお肉を取ってくれた。



「大丈夫?大分ぼーっとしてるけど。」


「ご、ごめんなさい。」



ソンミンさんは、にこっと笑った。



「謝らなくていいよ。ぼんやりしてる名無しさんちゃんもかわいい。」



血液が逆流する。
ああ、やっぱりあたしこの人のことが好き。



ソンミンさんともっと話しをしたい。

もっと知りたい。



好きなんだよ、あたし。

きっとソンミンさんのことが好きだ。



ドンへじゃない。

断じてない。



あたしはただの快楽に溺れてただけだ。



ドンへがあたしのことをどう思っているのかなんて知らない。

けど、あたしは何の感情もない。




そうでしょう?



なのにどうしてドンへが胸をよぎるの?



心を乱していくの?
胸が苦しくてしょうがないのはなんで?




だめだ。

考えても答えなんて出ない。



「名無しさんちゃん?」



いや、もう考えるのはやめよう。

今はこの時間を
楽しもう。



「あ、あたしたまねぎ食べたいです。」



そう言ってにっこり笑った。
ソンミンさんも笑ってくれた。



じゅーじゅーと軽やかな音を立てて、肉やら野菜やら焼けていく。




「楽しいね。」



そう言ってソンミンさんは笑う。



「はい。」



あたしも笑う。



本当に?なんてもう胸には問わない。



真実なんて、この人と一緒にいればよくわかるじゃない。
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