幼馴染み
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「どうしたの?名無しさん。魂抜かれた顔してる。宇宙人にさらわれた?」
「バカヒョナ。名無しさんのこの顔は元々だろ?」
駅前にあるカフェ、『ユニーバ』にあたしと、ヒョナと、ジンギはいた。
どうしてこんなところにいるのかよくわからないけど、今日の朝、ジンギからメールが入り、今日暇なら皆で会わないかと誘いがあって、どういうわけかあたしはここにいた。
「あ、マスター。ヒョナ、この『宇宙人ドリンク』。」
ヒョナがわけのわからないものを頼んでいるのに、突っ込む気力もなかった。
なぜならあたしの前にも『UFO・ドーナツ』があり、相田の前にも『火星☆スパゲティ』が並んでいた。
ちなみにマスターは、宇宙人の被りものを被ってて、その素顔は、ここに通うようになってもう二年経つのに、一度も見たことがない。
「ハイ。オマタセ〜。」
マスターはいつものように、いかにも体に悪そうな真っ青な液体をヒョナの前に差し出した。
マスターは自称日本人だけど、カタコトの日本語を話すので、あたし達の間では外国人
じゃないかと言ってる。
もしくは、本当に宇宙人にさらわれて頭の中をいじられたか。
ジンギはここに初めてきたくせに、大して動揺しないで、もう馴染んでるからすごい。
「ヒョナチャン。宇宙人ドリンク、緑バージョンモ作ッタカラ、マタ試シテミテネ。」
「はーい。」
そう言いながら、ヒョナは青い液体を口の中に流し込んだ。
「うん。やっぱり美味しいわ、これ!」
ヒョナは満足そうに微笑んだ。
あたしは横目でそれを見ながら、ドーナツを一つ口の中に放り込んだ。
意外と美味しいから、この怪しいお店も、マスターも、全て許してしまおうという気になるんだけど。
「ねえ、ジンギ。今日スジョンは?」
あたしがそう尋ねると、
「スジョンは来ないよ。仕事忙しいみたいだから。」
とジンギは言った。
「スジョン、まだあの仕事やってるの?」
ヒョナが、呆れたように呟いた。
「なんだよあの仕事って。一応仕事には変わりないんだし・・・」
ジンギが照れたように鼻
をかいた。
「スケスケおパンツ売る仕事?」
あたしがそう言うと、ジンギはちょっとムッとした顔をした。
「ランジェリーショップって言えよ。お前、いつかあのショップの店員に殴り殺されるぞ。」
「冗談だって。だってこの前行ったら、スケスケを薦められたからさ。あれって隠し切れてないじゃんって思わない?」
「あら、ヒョナだって、前の部分にピンクの毛が生えたヤツ薦められたわよ。ジンギくん、いくら古い友人だからって、やっていいことと悪いことがあるってスジョンに言ってよね。私は毛より紐が好きなの。」
「紐?紐よりレースでしょ。全レース。」
「わかった。わかったから二人とも、止めてくれ。スジョンに伝えておくから。」
ジンギは顔を真っ赤にしながら、本気で困っていた。
「わかればいいの。それよりも今日はどんな用事?ヒョナと名無しさんを呼び出すなんて。昨日会ったばっかじゃない。」
「うん。実は昨日のことなんだよ。」
「は?何、昨日の事って。」
あたしが聞き返すと、ジンギは少し
咳払いをした。
そして改まって、あたしとヒョナをじっと見た。