綺麗な人。

□金色の音
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反吐を吐きたくなる程実力社会。



まだ高校生という立場で、こんな目に遭うとは思わなかった。



中学のときもちゃんとパート内オーディションもしていたけれど、ここまでえぐい所じゃなかった。



推薦組と一般組。その差は歴然だった。



たとえ高3であろうと、一般組であれば1stはもちろん、選抜にだって入らせてくれない。



そのかわり高1であっても、推薦組であればトップの1stでソロをもらえる。



合理的ではあると思った。高3だからって甘やかされる世界ではないことは重々知っている。



それでも、高1にぺこぺこと頭を下げて「ごめんね、練習しとくね」なんて言われたら、もうたまらない。



この人達が積み重ねてきた努力を知らない振りをして、堂々と特等席で吹く高1。上下関係を象徴できるものなんて、おざなりの敬語しかない。



やっぱり、私が目指してきたものと違う。ここの部活は。



練習だというのに、個人練習だというのに、ピストンを押す手が震える。間違ってしまったらどうしよう。音程、音価、音量……。周りにいるのは一緒に入った推薦組の子達。味方のはずなのに、もう敵にしか見えない。



「推薦のくせにへたくそ」そんな後ろ指が怖くて、間違えにくい基礎練ばかりを吹くようになった。



次々と渡される今年度のコンクール曲、定期演奏会の曲、特別演奏の曲……。ほとんど手をつけられないまま、5月に突入しようとしていた。





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