綺麗な人。

□金色の音
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音楽に追われる日々。本当は私から追うはずだったのに、いつの間にか立場が逆になって私に襲いかかろうとしている。



クラス分けなんてどうでも良かった。早朝の朝練から始まり、昼練、そして放課後練、居残り練。



授業くらいしか自分には勉強の時間が与えられなかった。休み時間も脳内は全て吹奏楽にされる。



待ち望んでいた高校の吹奏楽生活なのに、理想と現実の差が大きすぎて、すでに精神、体力と主に限界が近付いていた。



「只野さんって、すごいね」



入学式の日、席が隣になった子に私が推薦入学だと伝えるとそんな返事が返ってきた。



何がすごいのよ。こんな私、何も持ってやしない、トランペットを吹くだけの抜け殻人形よ。



入学早々問題を起こしたくないし、ただ笑顔で「そんなことないよ」と返しておいた。



後三年間、この学校に私は通い続けなければならないのか、そう考えるだけで胃の中が重くなってめまいがした。



あの時、なんで私は何も考えずここを受けてしまったのだろう。



後悔先に立たず。



その諺が今の私に相応しかった。




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