綺麗な人。
□金色の音
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綺麗な人だと思った。
いくら黒く日に焼けていたとしても、野性味溢れる顔立ちをしていても、多分私はこの人のことを「綺麗な人」と認識する。
それはこれからもずっと。
なんて思ったのがあの日。予定していた電車には結局乗れずじまいで、ホームで30分ほど待ちぼうけるはめになってしまった。
その時何故自分は彼の名前を聞きたかったのか、未だにわからない。
それでも「青峰大輝」という名前を聴いたとき、ドンと何かが私の胸を打ったのだ。
ほら、やっぱり綺麗な人。
朝方の連なる山脈を太陽が照らす、そんな名前。
相反するようで、本当はそんな人なのかもしれない。
なのに、今はその連なる峰に雲が覆いかぶさっている。
バスケ、もう嫌いになったのかな。
念仏のように私の耳からすり抜けていく講義の声がまた私を夢の世界へと連れ去っていった。