綺麗な人。

□金色の音
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風が私の髪を掬い、桜と共に舞わせる。



四月。私は桐皇学園の新入生として門をくぐっていた。



吹奏楽推薦。そんなもので高校を決めたくないと誓っていたはずなのに、私は今ここにいる。



去年の実績は県大会銀賞。地区大会は抜けられても、支部大会には全く手が届かない。そんな位置にあるところだった。



しかしバスケ部をはじめ、運動部の推薦入学に力を入れ始めたらしい最近は、ついに文化部のトップに立つこの部活にも手を広げた。



総勢30名。



新規に加入するコーチが全国区の名だたる先生なだけあって、その小さな枠を何百人が取り合った。



お前も取り敢えず応募しとけ。そう顧問に言われ、受かるはずがないと書類を送ったのが去年の9月。



まさかの一次選考が通過し、二次選考は実演。



試験日は本命の学校と被ってないし、落ちても別にいいや。



そう、逆にリラックスして演奏した結果が合格だった。



断ろうと顧問に相談したが、「30人の中に選ばれておいて、今さら入学拒否などとしてみろ。お前は勿論、こっちも面目丸潰しになるんだぞ」と返された。



中1から憧れだった制服、校舎、カリキュラム。それをかなぐり捨てられて入った。それがこの学校だ。




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