Short Story
□束縛
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「奈緒、こっち」
手招きされて、リビング中央のソファーの上に座る。
そっちじゃない、と言われて腕を引かれた先は彼の足の上。
「どしたの、急に」
彼は余り甘える人ではない。なのに今日は何故かベッタリと私にくっついている。
「……別になんでもねーよ」
小さな私を大きな体で包み込む。でもぎゅっと抱きついてくる強さが少し痛いくらい強い。
「ちょ、大輝痛いって」
抵抗しようと胸を押すが、全くびくともしない。まぁ、当たり前か。
「大人しくしてろよ」
そんな私にムカついたのか、余計力を入れてくる。
……だから痛いってば。
「本気で痛いって。大輝離して」
「やだ」
お前は子供か!この我が儘プリンスが、と頭を小突きたくなる。でもそんな余裕すらない。
そこで私の携帯が震えた。
「電話」
そう言って無理に厚い胸板を押し退ける。目の前のテーブルに置かれてあるブルルルと震える携帯を握れば、観念したように彼は私を解放してくれた。
……あ、黄瀬君からだ。
昨日偶然会って、飲みにいこうなんて言ってたっけな。
そんなことを思い出しながら通話ボタンを押す。
私と黄瀬涼太は小学生からの幼馴染みである。中高離れていたというのに、何かと私達は縁があった。
今日も昨日の縁の続きだろう。……いいや、ここで話しちゃえ。
なかなか力を緩めてくれなかった彼に対しての当て付けで、その場で黄瀬と話をする。横から少し睨まれようと別に気にしない。
そうして彼を放置して話すこと10分。
『……やっぱり奈緒っちと話してるときりがないっスねー』
「えー、そう?でも黄瀬君話広げるの上手いから」
さすが現役大学生No.1のモデルね。そう続けようとした時、ぐんと肩を押し倒された。