Short Story
□束縛
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「えっ」
ちょ、なにやってんのー!
『ん?どうしたんスか、奈緒っち』
「い、いや別に……!」
そう言いながら私の首筋にキスを落とす彼。
反射で声が出そうになる。
『あ、そういえば最近小学校んときのメンバーで飲んでないっスね』
「そ、そうだね―……」
黄瀬は何も気付かず話を続ける。いや、気付いてほしいわけじゃないけどこの状態では普通に話せないって!
『そういえばこないだ小3の時の担任……えーと名前忘れた。……須藤?……多分そんな感じの名前の先生に会ったんスよ』
「須藤じゃなくて近藤!」と返事をしようにもついに彼が服の中に手を入れてきた。必死に抵抗するが、やっぱりあまり振りほどけない。
「いま電話中だから!」
小声でそう言うものの、彼のキスの雨は止んではくれない。
部屋の中に私のなんとか返事する声と彼のリップ音が響き渡る。
『……つーか、話きーてんの?さっきから返事上の空じゃん。「うん」とかしか言ってないしさ』
「ご……ごめんっ、ね。今ちょっと立て込んでてっ」
あまりにもキリがなくて、彼からのキスをなんとかすり抜け、リビングの端に移動する。本当に容赦ないんだから。
『誰かといるんスか?返事しにくそうだったし』
「えっ、いや……まぁ」
どうしよう、そういえば黄瀬君に何も言ってなかった。確か彼とは中学同じだったはず。知り合いな可能性もある。
……どうしよう。
ちらりと彼を見るととても不機嫌そうに雑誌を見ている。うっわ、あれ今朝取り上げたエロ本じゃん。なんでまだ持ってんの!
「うん。……ペットだよ!じゃれてきて、対応してたら大変でさぁ。でもちゃんと黄瀬君の話は聞いてたよ!」
「へえ、俺がペットか」