Short Story
□舞姫達
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「それはどういう嫌がらせだ、奈緒」
案の定彼からの辛辣なお言葉を戴き、ほんに自分はお互い得のない事を、正しく失言というものをしたと軽い自己嫌悪になる。
なんでこう、後先何も考えず行動するのかな、私は。カチンときたからか、読みふける参考書から目を上げずにそう言葉を投げた彼に少し頭を下げた。
「……ごめんなさい、これは私が一方的に悪かったです。すみません」
日頃の自分への戒めも含め、丁寧にそう謝れば、軽く面食らったように彼の視線が私を捕らえた。
「いや……逆にそんな仰々しく謝られても困るのだよ」
参考書をもたれていたベッドの上に伏せて置くと、彼は「どうしたんだ」とばかり私の横に腰を下ろしてくる。
いや、そんな心配されることなの?これは。
今更、ちびちびと説明出来るはずもなく、どう弁明しようか目を泳がせるしかない私。
「いや、なんでもないんだよ?真ちゃん」
「なんでもないって……俺を太田豊太郎にわざわざ例えるのは何か思うことがあっての事だろう。なんだ、言いたいことはないのか」
えーいやほんと、ほんとに何もないんですってば!変な事を言っちゃったかな。またこれも違う意味での「失言」だったのかな。あーもうなんで!
「なっ、何もないよ!真ちゃんにはいつも助けてもらっているし」
「意地を張らなくていいのだよ。俺はただ奈緒の本心を聞きたい」
じっと私を見つめて離さないその目。あれ、今日の真ちゃん、おかしい?
「ほんとに何も深い意味はないから!」
すると、むぅと不貞腐れたように黙り込む彼。あら、これはもしかして……?
「なぁに、真ちゃん、私に構ってもらいたいのー?」
にやりと彼を見やれば、急に慌てたように「違うのだよ!」と赤くなる。
もー、かわいい人だなぁ。
「しょうがないなぁ、構ってあげよっか」
シャーペンを置いて、真ちゃんの頬を指で軽く押してみる。でも、いつも通りの反応を期待して待っていれば、何故か何も動作をしてくれない。
あれ、やっぱり真ちゃん今日変だよ。
「…………どしたの?」
そっと頬から指を外しながら尋ねると、何故か神妙な表情で彼は口を開いた。