Book〈黒バス〉

□光と影
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「あんたたち、ほんっとに馬鹿!」

呼び出されるなり2人して馬鹿呼ばわりされた。

「全く、2人とも真逆のようでいっつも考えてることは一緒なんだから。」

「え…?」

「な、なにがですか?」

全く持って察しの悪い2人に今度はリコがいらだち始めた。

「あーもう!!!何のために2人で行かせたんだって言ってんのよ!
 
黒子君には言ったわよね?ちゃんとお互いの気持ち確認しなさいって!!」

あまりにアバウトなリコの説明に

「え、俺悪いけどそういう趣味は…」

火神は盛大な誤解をした。

「ちょ、ち、違うわよ!黒子くん、もういいから今思ってること言ってやりなさい!」

リコは火神の勘違いした黒子同性愛疑惑に顔を真っ赤にしながら言った。

「…火神くん」

黒子は少しうつむき加減で話し出した。

「僕は…火神くんの邪魔になってませんか?」

火神は唖然とした。

「…へ?」

「火神くんには才能があります。だから最近もどんどん上達して

キセキの世代とも渡り合えるようになって、何もできない僕は邪魔じゃないですか?」

黒子は今までに見たことのないくらいさびしげな顔でそういった。

「最近ぼーっとしてたのもなんだか気が入ってなかったのももしかしたら全部僕の所為なんじゃ…」

「お前馬鹿だろ。」

火神は真顔で言い放った。


「俺が最近変だったのは」
 
俺はやっと顔をあげた黒子の目をみつめた

「お前に嫌な思いさせてんじゃないかってことが気がかりだったからだ。」

「え…」

黒子は驚いたように目を見開いた。

「考えてみたんだよ。俺は光だなんだってもてはやされて嫌な思いはしない。

でもお前は影だって言われていいとこは全部俺や先輩が持ってくんだ。

俺だったら耐えらんねえなって思ったら身が入らなくなって…。」

俺は急に照れくさくなって下を向いて頭をかきむしった。

「だから!俺はお前の事は邪魔だなんて思ってねえしむしろ感謝してる!
 
それより俺はお前が心配なんだよ…なんつーか…辛くねえ?」

「火神くんはわかってませんね。」

「あぁ!?」

「僕はそういうタイプの選手じゃないって火神くんが一番わかってるとおもったんですけど。」

そういうと黒子はいたずらっぽく笑った。

「じゃあ、別に…」

「何にも辛いことありませんよ。むしろ僕も感謝してます。」

俺はとうとうこらえられなくなって声を出して笑ってしまった。

「じゃあ、もとからなんにも気にすることなかったんだな。」

「そうですよ、らしくないです火神くん。」

そういうと黒子も笑った。

「青春ねぇ…」

端で見ていたリコの声は2人にとどいているはずもなかった。



「今日はすみませんでした。」

「あ?」

部活が終わった帰り道、急に黒子が謝ったので俺はびびった。

「さっきひどいこと言ったの謝ってなかったので。」

「いや、あれは俺も悪かったし…」

俺は少し間をおいてから小さくいった。

「悪かった…。」

「素直な火神君て気持ち悪いですね。」

「おまっ…」

夕焼けを背にしながら歩く俺らの前には長い影が伸びていた。

「火神君、」

「なんだよ。」

「影って、光が強くなるほど濃くなるんですよね。」

黒子はそう言って俺の影を指差す。

ですよねと言われても俺は初耳だった。

「そうなのか?」

「…。」

「ん?どうした?」

「火神くんに言った僕が間違ってました。」

「え、おい!どういうことだよ!!」

「火神くんはバスケうんぬん以前にもっと常識を身につけるべきです。」

「…う、うんぬん?」

「もういいです。」

「あ、おい!結局なんなんだよ、光と影がどうこうって!」

黒子は俺の方に振り返ると言った。

「火神くんが強くなればなるほど僕も頑張って強くなれる。」

黒子の顔は夕焼けが当たってきれいなオレンジ色をしていた。

「強くなるときは一緒ってことですよ、火神君。」

そう言うと柔らかく微笑みまた歩き出した。

光と影がなんたらっていう理科みたいな話はよくわからなかったが

最後に言われた言葉には納得できた。

2人なら1人よりも、誠凛全員なら2人よりも

ずっとずっと強くなれる。

「そーだな!」

俺は黒子の背中を追いかけて走った。

見かけは小さくても俺にはないものを持ってる



頼もしいその背中を。


END
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