Book〈黒バス〉

□故意に恋して
2ページ/8ページ

それから何日か、俺はかなり引きずった。

「お前、そんなこといちいち気にしてどーすんだよ。」

「…」

笠松先輩はほとんどとりあってくれなかった。

「てめーは女子にめったにそんなこと言われねーだろーが、男子は女子に疎まれることもあんだよ。」

俺は納得のいかないまま部室を後にした。


「!?」

かなり遅い時間なのに体育館からボールをつく音が聞こえた。

「あ…」

そこには1人で残って練習する遥歌の姿があった。
1人で懸命にシュートを打つ姿は俺の心を虜にした。

人一倍、いや何十倍ものの努力、

…かっこいいなマジで。

長いポニーテールが揺れるのに見とれていると
ボールが飛んできた。

やばっ…!

「またあんたなの?」

俺が隠れたのもむなしく彼女はあっさり俺を見つけ、悪態をついた。

「いやっ…そのっ…」

「茶化しにきたなら帰ってよ。」

「え…」

遥歌はボールを拾うとすたすたと戻っていく。

「ちょ、そんなつもりないんス!こないだのこと謝りたくて…」

彼女は俺に向き直るときつく睨みつける。

「そうやっていい人ぶるのやめてくれない?
それともあたしに興味でもあるの?」

彼女はにこりともせずにそんな冗談を言う。

「…だとしても、あたしは他の子とは違うわよ。」

言いながら遥歌はまっすぐにシュートを打つ。

「甘い言葉や笑顔の1つ2つでおちるような軽い女じゃない。」

綺麗な放物線を描いたそれは吸い込まれるようにゴールをくぐった。

…この人は、自分を強く持っている。
それ故周りを遠ざけすぎている。

「…燃えるっス。」

「は?」

「ストイックで強くて、俺の事もバッサリ切るし。落ちないとかいうし。」

「…?」

「なおさら燃えるっス。」

彼女は疎ましそうな目で俺を見る。

笠松先輩、それでも俺は気にせずにはいられないっス。

はじめて会うタイプの少女。
俺には全くなつかないし、ほかの女の子みたいに可愛げはない。

でも頑張る彼女に


俺は恋をしてしまった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ