Book〈黒バス〉
□故意に恋して
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それからはしつこく、猛アタックして
今に至る。
何を言われても練習してるところには毎日顔を出した。
「…こりないわね、あんた。」
「俺は遥歌っちが好きなんス!まだ振られてないし!まあ、振られても諦めないっスけど!!」
はあ、とため息をつくと遥歌はタオルで頭をぐしゃぐしゃと拭く。
…そんなボーイッシュで大胆なとこも好きっスよ!!
俺は視線でラブコール
「何よ、じろじろ見ないで!」
…その思いはむなしく散る。
「それと、その遥歌っちって先輩に対してどうなの?」
「尊敬した人につけるんスよ、俺♪」
「馬鹿にされてるようにしか聞こえない。」
相変わらずぐさぐさと容赦のない言葉の剣が俺を貫くが、前ほど痛くはない。
「これも愛のお蔭っスかねえ…痛ッ!」
その時、ごんっとボールが当たった。
「…あんたスタメンなんでしょ?だったら突っ立ってないで相手しなさいよ。」
ツ…ツンデレー!!!!!
「是非やらせて下さいっス〜!」
俺はぴょんぴょんと跳ねて遥歌っちに駆け寄った。
「…いい?手は抜かないこと。そんなことしてみなさい。もう二度と口きかないんだから。」
「は、はいっス!」
遥歌っちはゆっくりとボールをつき始め
俺に向かって走ってくる。
「…っ!?」
俺は容赦なくその腕からボールを奪い
そのままレイアップでシュートする。
「…どうっスか?」
「……」
「あ、あれ?」
「もう一回!もう一回よ!!」
「え?」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ遥歌は怒っていたが可愛かった。
「男子といえど後輩に、負けたままでなんか
終われないわ!」
はじめて…はじめて彼女が自分から俺に
ぶつかりに来ている。
俺は嬉しくてたまらなかった。
と、同時に中学時代の事を思い出していた。
『もう一回!あと一回でいいっスから〜!』
『今日はもう終いだっつってんだろ!!
何時だと思ってんだよ!』
俺の憧れたあの人に同じ頼みを何度したことか。
「いいっスよ。」
彼女にボールを返すと
闘志をあらわにしたその顔には笑顔があった。
「一回でも抜かれたらあたしのこと諦めてくれる?」
「いいっスよ、負けないっスから。」
「笑止!」
勿論俺は一度だって抜かれたりはしなかった。