Book〈黒バス〉

□故意に恋して
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「遅い!」

「すいませんっス!」

俺は走りながらバッシュの片方に足をねじこむ。

「今日は絶対抜く。」

「望むところっスよ★」

「その余裕がムカツクのよ!」

そう言って走り込んでくる遥歌っちは前とは比べ物にならないくらい上達していた。

...おっと、危なっ!

思わず取られそうになる。
相変わらずプレッシャーだけは
文句なしの迫力。

でも何でっスかねえ...
惜しいとこまで来るのにあと一歩が足りてない。足りてないってよりは

「わざと...?」

そんな風に俺には見えた。


「もう、今日はやめっス!」

今になってあの時の青峰っちの気持ちがわかった気がする。

「駄目なの!あたしには時間がない!」

「え?」

「今年受験よ?あと一ヶ月で引退。
勉強に専念しなきゃいけなくなる。」

そっか...遥歌っちは3年。
引退どころか...

「今年卒業スか!!」

「そ。黄瀬、あんたの恋は実らなそうね。」

それだけは嫌だ!
卒業して会えなくなるような関係では
終わりたくない!

「だから、今はあんたを抜くのに必死になりたい。」

真っ直ぐに見据えるその目に俺はまた心を奪われる。

「わかったっスよ。」

そう言った俺を見る遥歌っちの顔はどこか寂しそうに見えた。


「...なんだよ急に呼び出して。」

笠松は不機嫌そうにそう漏らす。

「ワンオンワンの相手、してほしいの。」

「はあ?んなこと黄瀬に頼めば...」

「お願いっ!」

笠松は頭を下げる遥歌
に驚いたのか渋々承諾した。

「本気でいくぞ?」

「当たり前でしょ。馬鹿にしないで。


黄瀬に挑むのと同じように遥歌は笠松に突っ込む。

「なっ...!?」

笠松は手も足も出ないまま抜き去られた。

遥歌は自分でも驚いたようにボールを見つめる。

「お前...本当に一度も黄瀬のこと抜けないのか?」

「...そうだけど、何?」

「俺は調子さえよけりゃ、一回くらいなら黄瀬のこと抜けるぞ。」

「!?」

遥歌は言葉が出なかった。

「お前に足りないもん、...いや、余計なもんをもう一回考えてみろ。
それがお前が黄瀬を抜けない理由だ。」

「あたしが黄瀬を抜けない理由...」

笠松の言葉に遥歌は
困惑することしか出来なかった。
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