Book〈黒バス〉

□故意に恋して
6ページ/8ページ

わからない。
全然答えが見えない。

わたしはずっと考えていた。
わたしが黄瀬を抜けない理由を。

「今日は早く来たっスよ!」

黄瀬が走ってくる。

「別に待ってなんかないわよ。」

「はいはいっと。」

黄瀬はボールを持つと軽くアップを始める。

今日は抜ける。
昨日キャプテンの笠松を抜いたんだから。

「いくわよ!」

「準備OKっス!」

わたしは思い切り走りこむが

...駄目だ。抜けない。
わたしは動きを止める。

「...どうしたんスか?」

「あんたにはわかるの?」

「え?」

「あたしがあんたを抜けない理由。」

「...まあ。」

はっきりしない様子でつぶやく。

「でもそれは出来れば
遥歌っちに自分で気付いて欲しいっていうか...。」

「あたしもそうしたいわよ。
でもそれじゃあ、引退に間に合いそうにないわ。」

黄瀬がうーんとうなりながら話し出した。

「俺には今まで一度も勝ててない相手がいるんスよ。」

どこか懐かしそうに言う。

「実力差もあったんスけど、俺の敗北の一番の理由は...」

「理由は?」

「その人が俺の憧れだったことっス。」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ