哄笑クラウン
□Lady.R
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「そこ!違います」
「全く・・・こんなことも出来ないのですか?本当におバカさんですね」
「何度言ったら分かるんです!そこは違うと言っているでしょう!」
「・・・ハァ。貴女、バカを通り越して最早ヴァカですよ」
・・・この変態野郎!!
「いい加減にしろやぁぁぁぁ!!
ふざけんなよ!?なぁ!なぁ!?」
顔を真っ赤にして叫ぶ彼女の前には、物凄く長いラテン語の本。
「ラテン語だぁ?何処に必要があんだよ!あぁ!?」
一ヶ月。
一ヶ月で主要な国の言語をマスターさせられた彼女は、ほんの少しの休憩ももらえず、挙句の果てにはラテン語ときた。
知恵熱で倒れてもおかしくはない。
「おや、最強になりたいといったのはお嬢様、貴女でしょう?」
「ぐっ・・・」
痛いところを突かれ、何も言い返せない。
「さぁ、今日中に第百十二章まで読めば、貴女の好きなイチゴタルトをお作りしますから♪」
「イチゴタルトっ!?おっしゃぁぁぁぁ!!」
キラリと目を輝かせる彼女に、ほくそ笑む変態執事。
・・・精神年齢まで下がってしまったのか、都合良く餌付けされていることにさえ気付かない。
しかし・・・
その餌の効力は確かな物で、辞書と本の間を行き来しながら、彼女はありえないスピードでページを捲る。
「待ってろ私のタルト!!」
「・・・クスッ」
「終わったぁぁあ!!!
さぁ寄越せ今すぐ寄越せ私のタルトぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・少々お待ちくださいね」
第百十二章。
因みに、あの本は”百十二章”で成り立っている。
・・・全く、スイーツの力とは恐ろしいものだ。
「お待たせしました、ロイヤルイチゴタルトです」
「ロイヤル!!」
キャッキャッとはしゃぐ彼女の前に大きめに切り分けたタルトを置いてやれば、「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。
・・・モグモグと口を動かす彼女を例えるならそう・・・どんぐりを目一杯口に含んだリス、だろうか。
常人ならその可愛らしさに思わず抱きしめたくなるところだが、如何せんこの変態。
常任の枠に収まりきらずはみ出した彼は、何処からかフォークを持ち出し、タルトに突き刺した。
「んあぁぁーーーーむ!
・・・ほう、流石ワタシ!
甘さといい焼き加減といい・・・最高です☆」
「・・・」
「どうかしましたか?」
俯いてピクピクと肩を揺らす彼女にニコニコしながら問う。
「・・・ぇ・・・な・・・」
「・・・?」
「お前ぇぇぇ!私のタルト全部食ったな!?
返せ!今すぐ返せぇぇぇぇぇ!!!」
「無理です☆
・・・あぁ、なんなら吐き出しましょうか?」
「いらんわボケェェェェ!!」
そう、この男。
あろうことかかなり残っていたタルトをたったの一口で食べてしまったのだ。
「グスッ」(泣)
「ハァ・・・たかがタルトくらいでそんなに泣かずとも」
ポケットから出したハンカチで涙を拭ってやれば、グズグズと鼻を鳴らしながら執事を睨む。
「クラウンのバカ」
「っ・・・!
もう一度お願いします」
「?クラウンのバカ」
「グヘァッ!」
「う、わ!」
ブッ!と鼻血を噴出した彼からすぐさま距離を取り、身の安全を確保する。
しかし、今の彼にとってはそんなこと、どうでもよい。
何だこの小動物は!
涙目+上目遣い・・・だと!?
ジーザス!!
ワタシが言うのもアレですし神なぞクソだと思っていますが・・・こればかりはっ///
アノ酔狂な爺さんに感謝などしたくはありませんが仕方がありません。
今回だけ、ですがね(TT)b
・・・惜しいことをしてしまいました。
彼女に恋愛OKなどと・・・
ハッ(゜□゜)!!
誰かの物になる前にワタシのモノにしてしまえば良いのです!!
あぁ何故こんなことにさえ気が付かなかったのでしょう?
彼女の魂は既に私のモノ!
身も、心も私で染めてしまえばy「おい、いい加減に戻って来い」
!!
鈍器で殴られたような衝撃で我に返った彼の目に映ったのは、タルトの乗っていた皿を持つ彼女。
・・・どうやら本当に殴られたらしい。
「さっさと持って来い。下僕が」
「・・・ハイ」
さっきの可愛らしさは何処へ・・・と首を傾げる彼は知らない。
食べ物の恨みは・・・特にこのララにおいては、とんでもないものだということを・・・
「まだか犬野郎。早くしろや。え?」
「アナタ、キャラおかしくなってますよ」
「・・・だから?」
「・・・」
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